人口2億6千万。世界第4の規模を抱えるインドネシアは、国際的な重要航路の海域を広大に占める大国である。
世界で最も多くのイスラム教徒が住む一方、1万数千もの島々にまたがる民族や文化、言語は実に豊かな多様さを誇る。
この国を治めるための要諦(ようてい)は寛容さにほかならない。ジョコ大統領は国民の統合と安定を念頭に、2期目の政権運営を堅実に担ってもらいたい。
5年にいちどの大統領選挙が17日あり、ジョコ氏の再選が確実になった。軍人でもエリートでもなく、貧しい家庭で育った「庶民派」の指導者である。
1998年の民主化後、大統領を直接選挙で選ぶのは4回目となる。暴力的な混乱はなく、民主的なプロセスの選挙が定着したことは喜ばしい。
しかし心配な点もある。人口の9割近くを占めるイスラム教徒の間で近年、少数派への排外的な態度が目立つようになり、政治にも影を落としている。
2017年、ジョコ氏の盟友であるキリスト教徒のジャカルタ州知事は政界を追われた。演説での発言が「イスラムへの冒涜(ぼうとく)」と強硬派から批判され、大規模な糾弾運動に発展した。
今回の選挙でも、ジョコ氏の世俗的な姿勢に攻撃が続いた。軍幹部だった対立候補プラボウォ氏の陣営は、「イスラム教徒でない」「道徳が乱れる」などと非難を繰り返した。
これに抗するため、ジョコ氏は副大統領候補にアミン氏を指名した。同国最大の穏健派イスラム組織の前総裁である。
選挙を戦ううえで、多数派に配慮する必要はあろう。ただ、今後の国政で少数派への目配りが弱まれば、宗教や民族間のあつれきが高まる。
もともとこの国は1945年の建国以来、「多様性の中の統一」を国是としてきた。初当選後、ジョコ氏はこの理念を浸透させるためのチームを政府内につくり、学校教育に採り入れる検討などを続けてきた。
2期目も寛容の精神を貫き、社会の分断を防ぐよう細心の注意を払ってほしい。
東南アジアの別の主要国タイは、軍政の混乱から抜け出せていない。それだけにインドネシアの重要性は増している。民主主義が発展すれば、地域全体の安定に寄与するだろう。
インドネシアは日本の重要な貿易相手でもある。1500を超す日系企業が進出し、在留邦人は約2万人にのぼる。
過去10年、5%前後の経済成長を続けてきた。もはや「援助する側」「される側」の発想は時代遅れだろう。アジアの発展にともに尽力するパートナーとしての関係を築きたい。
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