物別れに終わったハノイでの米朝首脳会談から約1カ月半。これから北朝鮮にどう向きあうか。米国と韓国の両大統領が、ワシントンで会談した。
ハノイ会談以降、トランプ氏と文在寅(ムンジェイン)氏との間には考え方の開きが目立っている。今回の会談でも溝は埋まらなかったようだが、率直な意見交換と調整を図ったことは評価したい。
対北交渉の行方がどうあれ、米韓同盟はアジアの安定を支える柱の一つである。朝鮮半島の非核化と安定という共通の目標を見失わず、日本を含む連携の強化をめざすことが肝要だ。
米韓の溝は、対北交渉の進め方にある。
米側は、完全な非核化と制裁解除などを一括合意する「大きな取引」を主張している。これに対し韓国側は、北朝鮮に行動を促すには、制裁の段階的な緩和が必要だと訴えている。
強硬策か、融和策か、ここは二者択一の思考に陥るべきではあるまい。米韓双方とも、現実を見すえた柔軟な交渉姿勢をとるのが賢明だろう。
まず米側は、ハノイ会談での準備不足を率直に認めるべきだ。米朝間の積年の対立を一括打開するのは現実的ではない。綿密な工程表をつくる実務協議が必要であり、段階的な行動プランも視野に入れるべきだ。
韓国側も、北朝鮮への経済支援などは現状では不適切であることを認識した方がいい。北朝鮮の出方が見通せないいま、部分的でも制裁緩和に走るようでは国際的な結束を保てまい。
文氏は近く南北首脳会談の開催を呼びかけるという。もしそれが実現すれば、北朝鮮の不満を聞くだけではなく、厳しさを増す国際社会のいらだちを正確に伝え、説得にあたってもらいたい。
トランプ氏に譲歩の兆しが見えないなか、北朝鮮は次の一手を考えあぐねている。10日から平壌で始まった朝鮮労働党などの重要会議では、その苦悩ぶりが如実に表れた。
金正恩(キムジョンウン)・党委員長は、米国を激しく非難することを避ける一方、非核化に関する言及も控えた。代わりに強調したのは「自力更生」のアピールで、制裁が長引くことに国民の覚悟を求めたとみられる。
国会にあたる最高人民会議では、大幅な世代交代で幹部を入れ替えた。深刻な食料不足などの問題ものしかかるなか、刷新ムードを狙ったのだろう。
近くロシアを訪問するとの見方もあるが、対米関係の改善ほど国内に誇示できる政治的成果はない。経済、政治の両面で事態を打開できるのは、非核化に向けた、より具体的な行動だけだという現実を直視すべきだ。
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