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【社説】

イスラエル それでも二国家共存を

 イスラエル総選挙でネタニヤフ首相の続投が決まりそうだ。トランプ米大統領と蜜月関係を深め、強硬姿勢が強まらないか心配だ。パレスチナの権利にも配慮し、和平を進める別の道はないのか。

 元軍参謀総長がリーダーの中道政党連合「青と白」が一時優勢を伝えられたが、ネタニヤフ氏は、トランプ氏によるゴラン高原の主権承認などを外交成果と強調し、巻き返した。

 ネタニヤフ氏は選挙戦終盤、右派の票取り込みのため、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸入植地を併合する方針を表明した。二国家共存を目指すパレスチナにとっては受け入れがたい内容だ。

 問題の根は昨年、七十年を迎えたイスラエルの建国にまでさかのぼる。ユダヤ人とパレスチナ人の双方に国づくりを認めた過去の英国の二枚舌対応のせいで、当初から対立の構図があった。

 それでも、一九九三年のオスロ合意でパレスチナの暫定自治を認め、米国など国際社会の仲介で、二国家共存を模索してきた。

 ネタニヤフ氏の首相在任は通算十三年に上る。近年は強硬姿勢が一層強まる。

 ヨルダン川西岸へのユダヤ人入植を加速させ、パレスチナ人を分断し往来を制限している。

 ユダヤ人だけに民族自決権を認め、アラビア語を公用語から外すユダヤ人国家法も制定した。差別の助長につながりかねない。

 背景にはイスラエル社会の右傾化も指摘される。中道とされる「青と白」もパレスチナ国家容認は明言していない。総選挙では、和平を進めてきた労働党の得票率が4・5%にとどまる一方で、極右は票を伸ばした。

 イスラエルの強硬路線は中東全体へと広がっている。

 イランを最大の脅威とし、昨年五月にはシリアに展開するイラン軍の施設に大規模空爆した。しかし、イランの脅威はオバマ前米大統領時代に欧米中ロがまとめた核開発合意に沿って、平和的に取り除いていくのが最善の策だ。

 トランプ政権は近く新たな中東和平案を公表するが、パレスチナ人の権利を回復させ中東を安定させるには、二国家共存の道しかないはずだ。パレスチナ難民の帰還は国連決議でも認められている。

 絶望ばかりではない。今回の選挙でも米国のユダヤ人社会などでも、若い世代から和平を望む声は上がっている。これらの芽が将来育つことを望みたい。

 

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