四年に一度の統一地方選が終わった。無投票で有権者が政治に参加する機会を失った選挙区が目立ったのが残念だ。地域を元気にするには、多様な自治の担い手を生み出していく必要がある。
統一地方選後半戦は、政令市以外の八十六市長、二百九十四市議、東京の特別区の十一区長と二十区議、百二十一町村長、三百七十五町村議の選挙が行われた。
今回は十九回目の統一地方選だった。春にまとめて実施することで、有権者の関心を高め、経費節減を図るのが統一地方選の大きな目的とされた。
翌日開票分を待って、すべての当選者が確定するが、残念ながら全体的に低調な選挙だった。
何よりも、定数を上回る候補が立たず、無投票当選となった選挙が目立った。市長選では全体の31・4%に当たる二十七市長が無投票で決まった。前回二〇一五年の30・3%と比べ微増した。町村長選の無投票は前回の43・4%を上回る45・5%だった。
無投票となる理由は、与野党相乗りや候補のなり手不足などさまざまだ。無投票当選では住民が一票を行使して地方政治に参加する権利を失うだけでなく、論戦なしで自治のリーダーや担い手が決まるため、地域の課題を熟考する機会が奪われることになる。
無投票当選した市長の一人は「市民の思いに寄り添った政策をしていく」と抱負を述べた。だが、有権者に名前を書いてもらう形で信任されてこそ、「市民目線」を忘れぬ緊張感が、より持続するのではないだろうか。
今回の市長選、市議選、区議選では女性候補の割合が過去最高だった。だが、当選者には依然として、中年以上の男性が目立つ。
安倍内閣は「地方創生」を看板政策の一つに掲げる。真に地方自治を住民に身近なものにするには、女性、若者、会社員など、これまで自治の現場で少数派だった多様な人材を、担い手に選んでいくことが肝要であろう。
そうした人たちが手を挙げやすくなるよう、夜間や休日の議会開催や、国の有識者研究会が提案した議員の兼業禁止緩和なども真剣に考えてみる時期だ。企業には議員活動のための休職制度の充実を図ってほしい。
何よりも、企業、家庭、地域社会は自治は特別な人が担うものという意識を変えよう。
それが、多様な人材が自治の担い手たらんとする意欲を後押しすることになるからだ。
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