【ブリュッセル秋山信一】安倍晋三首相は25日午後(日本時間26日未明)、ベルギーの首都ブリュッセルの欧州連合(EU)本部で、トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)やユンケル欧州委員長と約1時間会談した。自由貿易体制を推進するため世界貿易機関(WTO)改革を共に主導していくことで一致した。
首相は会談後の共同記者会見で、WTOについて「時代の変化に追いついていない」と指摘。「(紛争当事国間の)議論を避ける形での結論が出たり、結論に時間がかかり過ぎたりするとの議論があるのは事実だ」と語った。韓国による水産物の輸入規制の撤回を日本が求めた紛争案件で、最終審にあたる上級委員会が安全性に関する科学的な判断を避けながら日本の訴えを退けたことを間接的に批判した。
一方、ユンケル氏は、中国などを念頭に、国内企業への補助金や強制的な技術移転を規制する仕組み作りが必要だと強調。「公正な競争を担保するため、日本と力を合わせてWTOを根本的に改革したい」と述べた。
会談では、6月に大阪市で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議に向けて、デジタル経済の国際ルール作りや海洋プラスチックごみ対策などで連携していくことで一致した。
また、25日のロシアと北朝鮮の首脳会談を含めた北朝鮮情勢も議論し、国連安全保障理事会決議に基づき、制裁を維持しながら非核化を求めていく方針を確認。海洋やサイバー分野の安全保障協力を強化することも申し合わせた。
英国のEU離脱については、首相が「合意なき離脱」を回避し、日系企業や世界経済への悪影響が最小限となるよう円滑に離脱プロセスが進むことへの期待感を示した。