提督の憂鬱 作:sognathus
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釣りをしている提督の姿を浜風達が見つけました。
浜風「釣り、ですか?」
時津風「釣れてるー?」
提督「いや、さっぱっりだ」
浜風「ふふ、そうですか」
時津風「えー、釣れてないんですかー?」
提督「ふむ、釣りの醍醐味というのを教えてやろうか?」
浜風「それには及びません。釣りをする事自体に意味があるんですよね?」
提督「そうだ。浜風はよく分っているな」ポン
浜風「ありがとうございます……♪」
時津風「えー? 何それー? というか浜風ズルーい! 大佐ぁ、わたしも! 時津風も!」
提督「ん? 釣りの良さが分からない奴は褒める気にならんな」
時津風「えぇ!?」ガーン
浜風「大佐、今日は何を釣りたいですか?」
ポイントを先制した事によって気を良くした浜風が自然な動作で提督の隣に座った。
更に何気に寄りかかり、駆逐艦としては潮も超えているのではないかと思える豊かな胸も何気に押し付けていた。
時津風「あっ、浜風胸……」
浜風「あら、どうかしましたか? 時津風?」タユン
時津風「う、うぅ~」
提督「浜風、時津風をそう弄るな。後、当てるな」
浜風「っ、すいません」バッ
提督(無意識にやってたのか?)
浜風「私、この体あまり好きではなかったのですが、初めて有効に使えると思ったらいつの間にか……」カァ
時津風「いいなぁ。時津風そういう事したくてもできないしー」
提督「別に親しくなる方法なら他にいくらでもあるだろう。無理にやらなくてもいい」
浜風「そう、ですか?」
時津風「なになにー?」
提督「時津風、それはお前が今からやってみたいという事をやってみればいい」
時津風「時津風が? んー……?」
提督「難しく考えるな。自分が仲の良い友達といつも接しているようにすればいいんだ」
時津風「あっ」
提督「分ったか?」
時津風「うん! こうでしょうっ? たーいーさ!」
時津風はそう言うと提督の後ろに回って軽く抱き付いた。
それは女子同士のコミュニケーションとしては一般的なものと思われたが、一つだけ誤算があった。
それは、軽く抱き着いたつもりだったのはあくまで時津風の感覚だったという事だ。
ドンッ
提督「そう、この……」
ドボーンッ
時津風「あ」
浜風「大佐!?」
~数分後
提督「……とまぁ、力加減は取り敢えず置いておくとしてコミュニケーションに関してはそこまで難しく考えなくてもいいんだ。解ったか?」ビッショリ
浜風「は、はい……」
時津風「ごめんなさい……」シュン
提督「まぁワザとじゃないんだ。気にするな」ゴソ
浜風(あ、タバコ)
提督「……」
提督の手に握られた煙草は当然の如く水浸しで吸えない代物となっていた。
ついいつもの感覚で吸おうと出してしまった事が、かえって提督を海に落としてしまった時津風に罪の意識を感じさせることになってしまった。
これは、提督にとっての誤算だった。
時津風「っ、ふぇ……」ジワッ
提督「いや、大丈夫だ。吸えない事は判っていたのについ出してしまっただけだ。怒ってない」
時津風「ひっく、で……ぐす……」
提督「ほら、来い」ヒョイ
提督はそう言うと時津風を抱き上げて自ら膝の上に乗せて頭を撫でた。
時津風「う……ぐす。ごめんなさ……ひっく」
提督「大丈夫だ。だからこれで少し落ち着いてくれ」ナデナデ
時津風「……ん」コク
浜風「……」
浜風「大佐?」
提督「うん?」
浜風「濡れたままでは寒いでしょう。私が温めます」
提督「温める? いやそこまでは……」
浜風は提督が言い終わらない内に後から彼を優しく抱き締めた。
ギュッ
提督「……風邪をひくぞ」
浜風「大丈夫です。艦娘はそれほどヤワではありません。だと思います」
提督「やめろと言ってもそうしたくないんだろうな」
浜風「はい。これは半分浜風がしたい事でもありますから」
提督「まぁ、天気も良いしな。だが程々にしろよ?」
浜風「……はい」キュッ
提督「……」
浜風「あ」
提督「どうした?」
浜風「いえ……ふふ。時津風がいつの間にか寝てるものですから」
提督「ああ」
時津風「すぅ……ん……」
提督が自分の膝元を見ると、浜風の言う通り時津風はいつのまにか彼の腕の中でうずくまるようにして寝息を立てていた。
提督「これは、起きた時に魚の一匹は二匹を見せてやりたいな」
浜風「いい考えだと思います。応援します」
提督「お前は大丈夫か? 寒くないか?」
浜風「私は大丈夫です。ただ、もう少しだけ寄りかからせてもらってもよろしいでしょうか?」
提督「ん……」
浜風「胸、気になりますか?」
提督「スキンシップと思えばそれほどでもない。お前がよければ別にもう何も言うつもりはないが」
浜風「ならどうか、このままもう少しお願いします」
提督「ああ」
浜風「……釣れるといいですね」
提督「今日は何となくいける気がする。お前のおかげでな」
浜風「ふふふ、嬉しいです。では、釣りをする時はいつでも呼んでくださいね」
提督「まぁ気が向いたらな」
浜風「はい。気軽にどうぞ」
浜風のおかげなのかは不明ですが、その日は珍しく2匹も釣れたそうです。
目覚めた時津風は目の前に大きな魚がいて大喜びしたのだとか。