ロメロにとって最大のピンチは6回だった。1死一、三塁から野間、会沢を三ゴロに打ち取って脱出。イニング先頭の菊池涼(左前打)から終了まで、何と全24球ストレートを続けた。
「真っすぐは乱れてはいたんだけど、置きにいかれるのが一番困る。腕を振れるボールだから、真っすぐ中心でいくのはいいんだけど…」
異例の配球? について、中村バッテリーコーチはこう話した。闘争心を伴った150キロ超球でグイグイ押す。打者をねじ伏せ、ゼロを重ねた。文句はない。ただし、注文はある。
「いい意味で捕手を信頼してくれればね。研究もされてくるだろうから」。この言葉には、荒ぶるカリビアンの操縦がいかに難しいかがにじみ出ている。
第1球からもストレート20連発だった。その中にはロメロがサインを間違えた1球(記録は捕逸)も含まれる。押す。攻める。投球の軸がストレートなのは間違いない。ただ、いつか痛い目を見る。彼が投げたいのはいつだってストレートなのだから…。
「カッカすると、なかなか言うことを聞いてくれなくなる。そのまま(ストレートの)サインを出すこともありますし、わざと違うサインを出すこともあります」
ロメロが望んでいることはわかった上で、苦心のリードで乗り切った加藤のコメントだ。今はシーズン序盤。何とか押し切れているが、他球団のスコアラーは全球を見ている。ピンチで首を振れば何を投げるか。すぐにサインが決まったときはどうか。統計を取れば恐らく傾向はハッキリと出る。そうでなくても投球の70%以上がストレート。それが中村コーチの言う「研究」であり、対抗するには「捕手を信頼」するしかない。
敗戦に直結しなかったのは救いだが、窮地を脱したストレート24連発にはこんな裏事情がある。なぜ投げる球を決めるのは、投手ではなく捕手なのか。このバッテリーを見ていると、その理由がよくわかる。