マツダが「革命エンジン」に込めた強い意地

逆風が吹いても、内燃機関を磨き続ける

ただ、世界各国で内燃機関の車への風当たりは強まるばかりだ。2017年7月、フランスと英国が相次いで、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する方針を発表。独フォルクスワーゲンによるディーゼルエンジンの排ガス不正発覚から2年が経ち、各地で汚染物質や二酸化炭素(CO2)の排出規制の強化が決まっている。

そんな中、なぜマツダは内燃機関にこだわり続けるのか。「ビジネスとは異なる、マツダの”大義”があるからだ」。藤原専務はそう語る。

マツダが考える独自の環境保護思想

「Well To Wheel」の考え方について説明したマツダの藤原清志専務(記者撮影)

8月8日に行われた技術に関する新長期ビジョン発表の場では、「CO2削減のためにはEVが最善の解答なのか」という独自の問題意識を提示した。マツダは「油田から車輪へ(Well to Wheel)」という考え方を以前から強調している。エネルギー源が作られ、自動車の動力として使われるまでの、すべての過程におけるCO2排出量の削減方法を考えるべきという立場だ。

従来、自動車メーカーは、クルマそのものがCO2をどれだけ排出するか、という「燃料タンクから車輪(Tank to Wheel)」の議論に徹していた。この考え方では、排ガスのないEVに軍配が上がる。しかし、車のエネルギーを調達する際に発生するCO2がどれほどあるのか、という「油田からタンク(Well to Tank)」を含めた議論をするべきであるというのが、マツダの思想だ。

たとえば、再生可能エネルギーによる発電が今後進む先進国ではEVが理想的といえる。だが化石燃料による発電の多い新興国では、Well to Wheelの議論に沿えば、CO2排出量でEVとエンジン車に大差はなくなる。

2010年にマツダが発表したスカイアクティブGは、それまでのガソリンエンジンより燃料消費率を15%改善させた。業界では「ハイブリッドが席巻する中でなぜ今なのか」との声が相次いだものの、2012年に新エンジンを搭載したSUV「CX-5」が発売されるやいなや、燃費のよさと走りのよさが認められ、大きなヒットにつながった。

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  • NO NAMEc53b630ef9bf
    フランスに続いてイギリスも、2040年までの全EV化を宣言したようだが、どうだか。EUにはHV技術もなく、日本車にシェアを奪われまいとして、EV化を唱えているだけかも知れないし。結構、ヨーロッパ人はしたたかですから、話半分に聞いておいたほうがいいかも。

    マツダの姿勢は 間違っていないと思う。
    up470
    down47
    2017/8/11 06:30
  • NO NAME8f979109cf19
    軽油でもガソリンでも走行できるマルチフューエル車にさらに近づいた、まさに夢の技術。二酸化炭素の排出量も少なく、窒素酸化物も少ないので触媒に使用する貴金属も減らせるだろうから、コストも下がるだろう。
    地道に燃焼のコントロールに取り組んできたマツダの技術には敬服します。

    内燃機関の販売禁止という話は、UKでも実現するには現在の発電量の1.5倍の発電能力が必要との試算もあり、EVが万能な二酸化炭素削減施策とも言い切れない。
    そもそも製造に必要なエネルギーを二酸化炭素に換算すると、内燃機関よりも悪い事は、専門家の世界では常識だし。

    早く市販してもらいたいな。
    up409
    down27
    2017/8/11 15:00
  • NO NAME0b2a58cb7021
    EVは充電時間とバッテリー劣化と航続距離が問題だろう。充電スタンドの設置の必要もあるしそう簡単に移行ができるかな?
    事故や水没ではHVやPHEVやEVは救助するのも感電の恐れがあるから対応が違ってくる。
    このエンジンの技術も含めロータリーには水素とガソリンを切り替えて走るという事もできる、レンジエクステンダーとしてラゲッジの床下におさまるコンパクトさもメリット、回転数が一定なら燃費も良くなる。意外とマツダはいろんな選択肢があって面白いと思う。
    up393
    down17
    2017/8/11 11:36
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