@chablis777  
シャブリ

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(なつ)「ポポロ。だけど 自分のことだけを考えるわけにはいきません。そもそも 私たちは 

その考え方が…」。
(倉田)あ~ ダメだ!
お前のセリフには魂が見えてこないんだ!
もっと ちゃんと 気持ちを作れ!
はい…。(天陽)魂なんて どこに見えるんですか?
魂なんて作れませんよ。
♪~
なつたちの演劇の稽古はますます 白熱してゆきました。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
何が言いたいんだ?気持ちを作れとか魂を見せろと言われても分からないと言ってるんです


天陽君…。なっちゃんのままでいてはダメなんですか?
ほかの魂を作らなくちゃダメなんですか?
(門倉)おい 分かったようなこと言ってんじゃねえよ!
彼は よく分かってる。
はっ?
彼の言うとおりだ。
まあ 俺の言いたいこともほぼ 彼と同じようなことだ。
登場人物の気持ちや魂なんてどこにもないんだ。
えっ?これは ただの台本だ。
俺の魂は入っているが役の気持ちや魂なんてものは存在しない。
それは これを読んだお前ら 一人一人の中にしか存在しないんだ。
役の気持ちや魂を感じるのはお前らの気持ちやお前らの魂だっていうことだ。
つまり これを演じるためには自分の気持ちや 自分の魂を使って演じるしかないんだ。
奥原は 自分の気持ちや魂を何も動かしていない。
ただ ここに書かれている人物像をまねしようとしているだけだ。
それじゃあ 何にも伝わらない。
奥原なつらしく 自分の気持ちや自分の魂を見せるしかないんだよ。
それが 演劇を作るってことだ。
よし。
じゃあ 俺は しばらく 口を出さんからまあ みんなで考えて作ってみてくれ。いいな。
(雪次郎)なっちゃん 今ので分かった?
何となく… 分かったような気もするけど。
ごめん。 俺が 何か余計なこと言って。
いや… 天陽は いいこと言ってくれたよ。
ごめんね。私を かばってくれようとしたんでしょ?
つい イライラしちゃって…。先生に?
なっちゃんの芝居に。えっ?
(天陽)倉田先生 怒っちゃったかな?
(雪次郎)いや あの先生なら喜んでるわ きっと。
つまり 気持ちや魂を見せろってのはもっと 根性を見せろってことだろ!
分かってんのか おめえら! おい!(一同)はい…。
(良子)早速 分かったようなこと言ってるよ。
芝居って こんな難しかったのか。
表現って 難しい…。
(剛男)山田さんメーカーが提示する脂肪検査の内容に農協としては口を出せないのが現状

でして…。
(正治)分かってます。
団結して 農協が まとめて牛乳を メーカーに売るようになればそんなことも なくなるんで

すよね?そのことに お宅の泰樹さんが反対されてるんだとか…。だから ほかの人も団結

しないんですね。
(タミ)あなた そんな言い方は泰樹さんに失礼よ。
誰のおかげで 私たちここまで生き延びたと思ってるんですか。
分かってるよ。いえ 父のことは 必ず なんとかします。
それより 今は少しでも 乳量を増やすことです。
質より量に頼れってことですか?
まあ… そういうことです。
乳量を増やすには クローバーなどの良質なマメ科の餌を与えて下さい。
ただし やり過ぎには注意して下さい。
ただいま。お帰り。
あっ 天陽君。いらっしゃい。
なつは どう? 頑張ってる?
頑張ってますよ。なっちゃん 何でも頑張るから。
「それを望まないことは あなたが 一番よく分かってくれているはずです。ポポロ」。
(鳴き声)「だけど自分のことだけを考えるわけにはいきません。そもそも 私たちはその考え

方が間違っていたんです」。
(泰樹)なつ…?あっ… はい?
なしたんだ? 何 悩んでる?
あっ いや 何も… 何でもない。いや いや…。
牛に相談してたべ?いや…。何が間違ってる?
あっ 違う 違う! そうじゃないの。
これは あの…。
もう やだ じいちゃん…。
何が間違ってたんだ…。
この本 読んで どう思った?
私には難しかった。何となくしか理解できてないと思う。
俺だって そうだ。
きっと 世界中の俳優がそうなんじゃねえかな。
(夕見子)あんた 俳優なの?ただの高校生でしょ?
先生は 自分らしくなんて言うけど自分らしく演じることが一番難しいんじゃねえかな。
たかが高校演劇でしょ?
僕ら俳優は 役の心を見せるためだけに集中しなくちゃダメなんだ。
(夕見子)農業高校生が何を主張してんの?
(富士子)何だか 難しそうな話してるのね。
(明美)よく分かんない。
それじゃあ う~ん…自分らしく その役になりきるにはどうしたらいいのさ?
それは…。
想像力しかねえと思うんだ。
想像力?うん。
このセリフの裏では何を考えているとかこの人物がどういう思いで生きてきたとか自分自身

の経験や記憶と重ねてそれを 想像するしかねえんだよ。
演じることも 想像力なのか…。
う~ん でも 難しい…。
要するにさ 台本は与えられた環境にすぎなくてその中で生きるのは自分自身だってことだ

よ。
そのとおり!なして 夕見子ちゃんに分かるの!?
その本に書いてあったから。ああ…。
やっぱり合ってる!そう? いかった うれしいな!
(夕見子)うるさいよ あんたたち。
雪次郎く~ん!あっ えっ…。
野菜 持ってって。えっ ありがとうございます。
少しだけど。うわ~ うわっ こんなに…。
それでは さようなら。気を付けて。ありがとう。
はい。また明日。また明日。
それじゃあ。
バイバイ。はいは~い バイバイ。
だけど そんな深いとこまで考えてやってるとは思わんかったわ。
倉田先生はね農民こそ 演劇は必要だって言ってた。
だから 農業高校で 演劇に力入れてるの?
うん… だけど 私は 何か農業高校らしいこともしたいんだわ。
農業高校らしいこと?うん。
例えば…演劇を見に来た人に搾りたての牛乳を飲んでもらうとか!
何で?
十勝の酪農を もっとアピールしたいのさ。
演劇だけじゃなくて。
だって 母さんや みんなにこんなに親切にしてもらってやらしてもらってんだから何かの役

には立ちたいわ。
「だけど 自分のことだけを考えるわけにはいきません。そもそも 私たちはその考え方が間

違っていたんです」。
(高木)「何が間違っていたのだ ペチカよ」。
「川下の村を 敵と見なすことです。すぐに争うことです」。
「しかし それは向こうとて同じことじゃ」。
ダメだ!
えっ?(門倉)高木! お前 それでも村長か?貫禄が足りねえんだよ。もっと 根性を見せ

ろや!
おい なした?
高木君 もう一回やりましょう。はい…。
「そもそもその考え方が間違っていたんです」。
「何が間違っていたのだ ペチカよ」。
「川下の村を 敵と見なすことです。すぐに争うことです」。
「しかし それは向こうとて同じことじゃ」。
「だから…」。自分がやりたかっただけね。
「私にとって 村人は…」。
(妙子)ありがとうございました。
いらっしゃい…あら 富士子さん お久しぶり。
こんにちは。今日は 帯広に用事?
ううん ちょっと 話したいことがあって。
私に?
ごゆっくり。ありがとうございます。
それで 演劇を見に来た人に酪農をアピールしたいの?
うん。 なつがね そう言うのよ。
それで 何か 牛乳を使ったお菓子を配れないかと思って。
牛乳を使ったお菓子?
例えば アイスクリームとか。
演劇を見に来た人に?
私も 何かして なつを応援したいんだわ。
富士子さんは もう 十分になっちゃんを応援してるしょ。
なつにね 言われちゃったの。
何て?
母さんや みんなに 親切にされてるって。
それのどこがいけないの?
普通 母親に 親切にされてるなんて思わないでしょ。
う~ん… みんなのこと言ったんでしょ。
そういう壁をね本当は 今でも感じるんだわ。
でも いいの。
それが 私たち親子だから。
何年 一緒にいたって本当の母親には なれっこないもの。
だから 私はあの子を応援するだけでいいの。
精いっぱい あの子を応援する人でいたいのよ。
「私にとって 村人は家族です。血は つながっていなくても…みんなが 私にとって大事な

家族なんです。その家族が もし争いごとに巻き込まれて命を落とすようなことになったら私

は その悲しみに耐えられない…。だから 私が 家族を守るんです!」。
♪~
なつは 初めて 自分の感情を使って芝居をしました。
なつよ 下手でも伝わるものはあったぞ。


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