問題は、果たして、このまま増税に踏み切って、日本の消費は大丈夫なのか、という点だ。
当初の目論見では、「経済好循環」によって、企業業績の好調さが給与増などによる所得増につながり、2019年は消費が底堅い状態になることが期待されていた。駆け込み需要も盛り上がることから、夏にかけては、消費の足取りはしっかりしたものになるとみられていた。
政府が気にしていたのは、むしろ10月の消費増税後の反動減で、これによって日本経済の底が抜けないよう、プレミアム商品券などさまざまな反動減対策を打ち出した。2014年4月の増税後の反動減が大きかったため、その轍は踏まないという強い意志が働いていた。
反動減を小さく抑えれば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックがやってくる。年間4000万人の外国人観光客が日本に押し寄せれば、インバウンド消費の「特需」が起きることは間違いない。つまり、消費増税をするとすれば、2019年10月をおいて他にはないというのが、首相官邸や財務省の読みだったのだ。
ところがである。増税まで半年に迫っても、なかなか駆け込み需要が盛り上がらないどころか、足元の景気が弱いままなのである。そこへ増税などしたら、本当に経済の腰が抜けかねない。
本来ならば駆け込み需要によって、7月の参院選に向けて景気がじわじわ良くなり、株価も上昇するので、政権与党にとっては追い風になる、という読みもあったはずだ。それが、追い風どころか、経済が選挙の足を引っ張りかねない状況担っているのだ。
萩生田氏の発言は、そんな焦りの表れとも言えるし、選挙に向けたパフォーマンスのひとつと見ることもできる。
というのも、消費増税を見送る場合には、国民の信を問う必要がある、という話になっているからだ。参議院選挙前に衆議院を解散して、衆参ダブル選挙を行うのではないか、という見方が永田町には一気に広がっている。
もっとも、実際に、消費増税を延期することは難しいだろう。
システム改築などの準備が民間でも進んでいることもあるが、延期した場合、いつ増税するのか、という問題が出てくる。2020年の東京オリンピック・パラリンピック後に先送りしたとすれば、オリンピック特需が終わり、景気全体が減速する中で増税することになりかねない。そうすれば、経済への影響はさらに甚大になるだろう。
そうなれば、また長期にわたって消費増税ができなくなる可能性が大きくなってくるわけだ。