提督の憂鬱 作:sognathus
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これより艦隊の指揮を……執る前に艦娘達からお話があるようです。
第1話 「誓約」
提督「そうか、そんなに眠っていたのか」
数日振りに目覚めた提督はいつもと変わらない様子だった。
だがよく見ると微妙に眉間の皺が減っているようにも見える。
鈍った体力を取り戻すのに少し苦労したが、それも体がまともに動くようになるにつれて自身の予想より早く回復した。
不測の事態だったとはいえ、今回の療養は提督の身体に大きな恩恵をもたらしたのは確かのようだった。
金剛「そうヨ? 大佐ったらあれだけ無理はしないデってお願いしたのにっ」プクッ
雪風「でもこうやって元気になってくれて良かったです!」
提督「雪風、金剛……すまないな。ありがとう。他の皆もだ。心配かけてすまなかった。そして恩に切る」
加賀「いいのです。あなた……大佐さえ元気になってくれればそれだけで私は満足ですから」
利根「右に同じくじゃ! 大佐よ、待っておったぞ!」
雷「大佐、おかえりなさーい!」
「おかえりなさーい!」
提督「ああ、ただいま。この礼は何れさせてもらう。期待しててくれ」
龍田「あらぁ、お礼なんてぇ♪ じゃぁ、ここにいる娘全員に練度関係なしに指輪くれたりしてくれるのかしらぁ?」
シーン
提督「……む」
ジーッ
提督の鎮守府に所属する艦娘達全員が彼を見つめていた。
提督(まさか? 冗談だろう?)
提督「まさかとは思うが、全員俺としたい……と?」
山城「ダメなんですか?」
比叡「それはあんまりです!」
大井「私、大佐となら……北上さんと同じくらい愛してあげても……いい、のよ?」
男に興味がない代表格の三人がこんな事を言う時点で最早答えは明らかだった。
長門「大佐よ。まぁ既婚者としてはちょっと妬けてしまうが、器の大きい所を見せてくれると私も惚れ直すと思うぞ」
明らかに意図的なタイミングで長門が割り込んできた。
妬けるとか言っておきながらその顔は、この事態を楽しんでいるかのように面白そうに笑っていた。
提督「長門……。俺は前に恋人ならとは言ったが、まさか全員とケッコンとは、な……」
榛名「大佐ごめんなさい。榛名はしたいです。ゼッタイ」
秋雲「諦めてしちゃってよー。あ、勿論わたしもだかんねっ」
提督「……分った。流石に練度の件は無視するわけにはいかないが、条件を満たした者とは……その、しよう」
足柄「何をしてくれるのかしら?」
提督「足柄、お前……」
足柄「な・に・をしてくれるのっ?」ズイ
いつになく真剣な表情で足柄が提督に迫る。
彼女があやふやな答えではなく、提督自身の口から明確な答を言うことを欲しているのは明らかだった。
提督「ケッコン――」
足柄「それはあくまで手段でしょ? 違うの。私は提督に......その......」モジモジ
提督「……足柄、一度皆の所に戻ってくれ」
足柄「……分った」
テテッ
提督「んんっ」
「……」
艦娘達が提督を見つめていた。
期待している言葉が出るのだろうか、あの提督が果たしてそんな言葉を発してくれるのだろうか。
期待と不安が入り混じった空気がその場の雰囲気に立ち込める。
提督「皆」
「はいっ」
提督「ケッコンの暁には……いや、関係なく意思ある者は愛する事を誓う」
ワァァァァァァァ!!
提督(次に生まれ変わるとしたら女がいいな……)
湧き上がる完成の中、何故か提督はそんな事を思った。
~同刻、大本営海軍本部技術研究室
技術将校(以降、将校)「ん? これは……」
中将「どしたの」ヌッ
将校「わっ。ちゅ、中将殿どうしてこんな所に?」
中将「トイレからの帰りだよ」
将校「トイレなら司令室にあるではありませんか。何故わざわざ此処まで……」
中将「悪い事してないか確かめるのも管理職の仕事だからね」
将校「べ、別に私は……」
中将「分ってるって。それで、どうしたの?」ズイ
将校(う……なんだこの威圧感は? 中将からこんな気配がするなんて……くっ、逆らえない)
将校「こ、これを……」スッ
中将の威圧(本人にその気なし)に負けた技術将校は折れ線グラフが印字された紙を中将に見せた。
中将「ん? このグラフは……」
将校「詳細につきましては最高機密の技術ですので特別な許可がない限りお教えできませんが、これは有る方法にて艦娘達の感情レベルをグラフ化したものです」
中将「へぇ……。これ、凄く盛り上がってるみたいだね」
将校「そうなんです。ここの鎮守府は以前から落ち着いていたのですが、急にこんな数値が……。まぁ流石にこの変動は急激すぎるのでバグだと思いますが」
中将「ふーん、因みにこれを管理して艦娘の反乱の意志とかをチェックしたりしてたの?」
将校「……おおよそその通りです。優れた存在とはいえ、所詮は兵器ですから。そのくらいの管理は絶対に必要です」
中将「……そうだね。人間、これくらい臆病でないと生き残れないよね」ボソ
将校「は? 中将殿今何と……」
中将「いや、よく出来たシステムだなと思ってね」
将校「あ、ありがとうございます!」
中将「うん。君の艦娘が兵器と言う認識は間違っていないと思うよ。これからもそのつもりでしっかり管理してね」
将校「はっ、お任せ下さい!」
中将「うんうん。お願いね。それじゃ」
将校「はい。おつか……って、その、それっ。グラフを!」
中将「ああ、ごめんごめん。はい」ポン
将校「ああ。ありが……タバコ?」
中将「ダメ?」
将校「……」
中将「頼むよ」
将校「……中将殿この事は……」
中将「俺が守らないとでも?」
将校「いえ、信じております。どうぞ」
中将「うん。ありがとう。今度また何か奢るよ」
将校「い、いえそんな」アセアセ
中将「気にしない気にしない。若い子の面倒を見るのもオジサンの仕事だから。じゃ、頑張ってねー」
将校「あ、はい。すみません。ありがとうございます……」
~廊下
中将「……」
中将(何か艦娘に仕込んでるみたいだな。今度調べてみるか)
次は夏のイベントのお話です。
いやぁいろいろありましたホントorz