韓国軍の「異常指針」が明らかになった。韓国海軍艦艇から「3カイリ(約5・5キロ)以内」に近付いた軍用機には、火器管制用レーダーを照射して警告する-という内容で、韓国国防省が今年1月、防衛省に通告してきたという。海上自衛隊哨戒機への危険なレーダー照射事件(昨年12月)をごまかす悪意が感じられるうえ、国際法上の根拠もないため、防衛省・自衛隊は断固撤回を求めている。北朝鮮の「瀬取り」を監視する国際社会の足並みを乱しかねない行為でもあり、安倍晋三首相の22日からの欧米歴訪でも、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の不可解な動向は重要議題となりそうだ。

 「報道内容は正しい。その通りだ。許しがたいことに、韓国が一方的に通告してきた。でも、こちら(=防衛省・自衛隊)は絶対に認めない。当たり前のことだ」

 防衛省幹部は22日朝、夕刊フジの取材にこう言い切った。自衛隊を標的にしたかのような、韓国海軍による新たな指針について報じた、読売新聞同日朝刊の内容を認めた。

 注目の記事は「韓国軍新指針 安保協力に影」という見出しだった。韓国海軍がレーダー照射事件を受けて新たにまとめた運用指針が、「3カイリ以内への接近で火器管制用レーダー照射」などと国際基準から逸脱しており、日米韓が「北朝鮮の非核化」に向けて連携を図るうえで「暗い影を落としている」と報じていた。

 韓国の同盟国・米国を除く、すべての国が対象だとされるが、レーダー照射事件から間もないタイミングで、いわゆる「徴用工」の異常判決などで日韓関係が悪化するなか、自衛隊機を狙い撃ちにした可能性は高い。

 前出の防衛省幹部は「韓国海軍艦艇から1月以後、何度か、警戒・監視中の海自機に『どこの国の哨戒機か? これ以上は近付くな!』と“警告”というよりも問い合わせはあった。幸い、トラブルにはなっていない。現実的に『3カイリ以内はダメだ』とは、国際標準にも合わず、おかしいとは韓国側も本心では分かっているはずだ」と語る。

 防衛省は今月10日、韓国防衛当局との非公式の協議で、新指針の「撤回」を求めたが、韓国側はのまなかった。

 そもそも、国際法上は軍用機の飛行を制限する明文規定はない。

 それでも、海自哨戒機は昨年12月の事件発生時、民間機と同じく、国際民間航空条約で海面から150メートル以上の高度を保つよう定めた規定を順守し、150メートルを上回る高度で飛行していた。

 韓国が通告した新指針通り、「3カイリ(約5・5キロ)以内」に近付けばレーダー照射を受けるとなれば、海自隊員は極度の緊張状態を強いられる。国際社会も黙ってはいない。

 同盟国・米国も、「従北・反日・離米」という韓国の文大統領を警戒している。

 ドナルド・トランプ米大統領は11日(日本時間12日未明)、ホワイトハウスで文氏と米韓首脳会談を行ったが、サシで話した時間は「たった2分程度」で、文氏が北朝鮮への制裁解除や、南北共同事業再開を熱望したのに対し、否定的見解を示したのだ。

 韓国には、国際社会の厳しい目が注がれている。

 本来なら、韓国も北朝鮮船に対して、海上で石油などを違法に密輸する「瀬取り」を監視するべき立場でありながら、韓国船籍が制裁逃れを許していたケースが出ているためだ。

 米国は3月、沿岸警備隊の大型警備艦を朝鮮半島沖に派遣した。これは、「韓国の監視」という意味もありそうだ。

 韓国の「異常な指針」をどう見るか。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「昨年末のレーダー照射で、日本側から有力な証拠を突き付けられ、『世界の物笑いの種』にされたことに対する、彼らなりの反発だろう。事実自体を認める気がないと思わざるを得ない。そもそも、『火器管制用レーダーを頻繁に照射する』という宣言にもなると思うが、それ自体、軍事常識からしても『正気の沙汰』ではない。放置すれば現場の自衛隊に与える影響は免れられないうえ、問題をうやむやにされかねない。日本側は、韓国側に対し『有効性はない』と明言し、堂々と3カイリを飛行するなど毅然と立ち向かうべきだ」と語った。