提督の憂鬱 作:sognathus
<< 前の話 次の話 >>
目的は勿論提督のお見舞い。
予定通り加賀が出迎えに来ていました。
彼女「こんにちは。そちらは相変わずつつがないかしら?」
加賀「ようこそお待ちしておりました。ええ特に、大佐以外は問題なく」
武蔵「それが一番の問題だろ?」
彼女「武蔵」
武蔵「う……」タジ
彼女「ごめんなさいね。悪気はないの」
加賀「いえ、構いません。心配して頂けるのはこちらも嬉しいですから」
武蔵「あ……その、悪かった。そうだな。一番心配してるのはお前たちだよな」
加賀「別に心配はしていません」
武蔵「え?」
加賀「大佐の容体も大分良くなってきたので目を覚まされるのも時間の問題だと思います。だから、心配はしていません」
武蔵「む……それでもお前たちの主人だろう?少しは……」
加賀「ええ、気にしてはいますよ。寝てる間ずっと寂しかったですから」
武蔵「ん……」
彼女「でしょうね。全く、アイツったらこんな上司思いな子達に寂しい思いをさせちゃって」
加賀「あ、いえそれは……」
武蔵「何を謙遜しているんんだ。起きたら抱き着くくらいしても許してくれると思うぞ? ああ、寧ろそれは競争か」ニヤ
加賀「……///」フイ
彼女「むさし~?」
武蔵「ふふ、ニヤつきながら怒られても全然怖くないぞ?」
彼女「そこは突っ込まないの。それじゃ加賀、案内してもらえるかしら?」
加賀「失礼しました。どうぞこちらへ」
~提督私室
彼女「……よく寝てるわね」
武蔵「本当だったか……。いや、疑ってたわけじゃないが、でも実際に見るとなんだか胸にくるものがあるな」
提督「……」
加賀「そんなに不安な顔されなくても大丈夫ですよ。本当にもう全快一歩手前の状態なんです。顔色も倒れられた時と比較にならない程良くなっていますし」
彼女「そうね。穏やかな顔だと思うわ」
武蔵「そうだな。普段は殆どしかめっ面……」
加賀「?」
彼女「武蔵? どうしたの?」
武蔵「いや、普段ガードが堅くてイロイロつるめなかった大佐が今は無防備の状態がちょっと、な」
彼女「は?」
加賀「……」
武蔵「ちょーっとイタズラくらいして――」
バン!
武蔵「貴様! それでも私のオリジナルか! 恥をしれ!」
無蔵(彼女側の武蔵)「なっ!?」
武蔵「殊勝にも大佐の見舞いに来た事に感心して敢えて静観していれば調子に乗り折ってからに!」
無蔵「貴様覗き見していたのか!? ならそっちこそ恥をしるがいい! 仮にも大和型たる戦艦がそのような不埒な真似をよくもまぁ……」
武蔵「なんだと! 自分の痴態を棚にあげるか!」
無蔵「お前の醜態の方が看過できないからな。当然だ!
武蔵「なにを!」
無蔵「やるか!?」
彼女「……あなた達」
加賀「ちょっと」
彼女「静かにしなさい」 加賀「静かにして下さい」
武蔵・無蔵「 」
彼女「せっかく具合が良くなっているのにあなた達が騒いだ所為でまた悪くなったらどうするのよ?」
加賀「その通りです。これはちょっとお二人には反省してもらわなければいけませんね」
武蔵「なっ、私もか!? 悪いのは明らかにこいつだろう!」
無蔵「いや、そもそも最初に騒ぎ出したのはこいつだ!」
武蔵「ああ!?」
無蔵「事実だろう? ああ!?」
彼女「ふぅ……」
無蔵「は!」ビクッ
加賀「……」スッ
加賀が無言で矢をつがえる所作を見せた。
武蔵「ちょ、加賀!? そ、それ実戦用の爆薬積んで……!?」
彼女「ごめんね加賀。お願いできる?」
加賀「本部の少将の片の頼みとあらば無碍に断るわけにはいけませんね」
無蔵「ちょ、おい!?」
彼女「じゃぁね。後でまた入渠区で会いましょ」ニコ
武蔵・無蔵「……!」ゾゾッ
加賀「それではお二方、覚悟はいいですか?」ゴウンゴウン
三本の矢を纏めてつがえた加賀が弦を引き絞り、2人の武蔵に狙いを定める。
矢を放つ前だというのにその矢先からは彼女の気合が伝わっのか、既に艦載機のエンジン音が響いていた。
武蔵「ま、待て!」
無蔵「話を――」
加賀「第一航空戦隊の怒り、思い知りなさい」
ズババババババ!
武蔵・無蔵「ぎゃー!!」
はい、一番煩かったのは結局誰だったでしょうか。
正解は言ったら怖いので言いません。
病院や床に臥せる人がいる所では静かにしましょう。