「日本を代表するアクション女優は?」と問えば、今なお「志穂美悦子!」という声が挙がるかもしれない。それほど70~80年代の印象は鮮烈だ。当時、志穂美のほかにも、森永奈緒美、早川絵美らが映画、テレビとアクション作品で活躍していたが、時代の流れとともに人気作品のジャンルも遷り変り、90年代以降は“アクションスター”という存在自体が過去のものになりつつあった。しかし実は今、格闘技経験などを持つ“本格的”な若手アクション女優の活躍が目立ち始めている。さらに、綾瀬はるか、長澤まさみといった日本を代表する女優までもアクションに挑戦。なぜ、ここにきて“アクション女優”が復活し始めたのだろうか?
◆時代の流れとともに主流から外れていったアクション作品
テレビドラマ全盛の70~80年代、志穂美の存在感は圧倒的だった。恵まれた体形から繰り出す抜群の切れの格闘アクションは圧巻。大男をなぎ倒していく姿には、貫禄のあるかっこよさとともに強い女性ならではセクシーさも漂わせていた。そんな志穂美のドラマ『影の軍団』シリーズ(フジテレビ系)や映画『女必殺拳』シリーズでの吹き替えなしのアクションは、男性女性を問わず観るものを魅了。まさにスターと呼ぶに相応しい存在であり、ジャパンアクションクラブ(現ジャパンアクションエンタープライズ)在籍時は千葉真一の妹的な存在として一世を風靡した。そんな志穂美と同じくジャパンアクションクラブに在籍していた森永は、『宇宙刑事シャイダー』(テレビ朝日系)をはじめ特撮ものでのハードなアクションが人気を博していた。
しかし、90年代以降になると、世の中の求める作品の傾向に変化が現れ、静かな日常をたんたんと描く物語や、半径5メートルと言われる身の回りに起こること、若者たちの鬱屈や屈折した心情をリアルに描写する作品が好まれるようになっていく。アクション作品は、時代の変化とともにエンタテインメントシーンのメインストリームから外れるようになっていった。
一方、海外を見ると、ハリウッドアクション映画は時代を超えて世界的に人気を得ており、アクション女優と言えば今も昔も花型のスターだ。ブラッド・ピットの妻であるアンジェリーナ・ジョリーは、『トゥーム・レイダー』シリーズで一躍大スターになったし、『バイオハザード』シリーズのミラ・ジョボヴィッチ、『キル・ビル』のユマ・サーマンもそう。『キル・ビル』では「ヤッチマイナ!」のアジア系女優ルーシー・リューも名を馳せた。古くは『エイリアン』のシガニー・ウィバーや『ターミネーター2』のサラ・コナー役リンダ・ハミルトンもそう。“引き締まった肉体美でガンアクションやファイトシーンをこなすカッコいい女”はスターであり、アクション大作はスターへの登竜門的な作品。その流れは、現在においても続いている。
そんなハリウッドと日本の違いについて、ドラマ制作会社スタッフは「日本の場合、家族を守るおしとやかな女性で芯は強いといった吉永小百合的な女優、もしくは胸元をはだけて吉原の花魁を熱演! 的な女優さんを“名女優”とする傾向が強い。アクション的な要素はあまり求められていなかったんです。でも海外では、女性でもアクションシーンをカッコよくこなせば、男性以上に評価されますし、実際に数字もついてくる。女優さんたちも当たり前にジムで体を鍛えたり、格闘技の練習をします。アクションができることは、スター女優の“必要最低条件”ですね」という。
◆日本でも目立ち始めた若い世代の“本格アクション女優”
しかし、男性が観ても女性が観てもカッコいいと思えるような、ハリウッドのアクション女優たちの作品を観て育った若い世代が、アクション女優を目指すのはごく自然なことだ。実際、日本でも本格的なアクションをこなす若手女優たちの活躍が目立ち始めている。
映画『TOKYO TRIBE』で、美しすぎる回し蹴りを見せて観客を魅了した清野菜名はその代表格。手足の細長いモデル系で、ルックスは乃木坂46にいそうな正統派美少女だが、ドラマ『ウロボロス』(TBS系)での吹き替えなしのアクション、押井守監督の実写映画『東京無国籍少女』での文字通り体を張った壮絶な格闘&ガンアクションは話題になった。また、第14代目リハウスガールであり、映画『暗殺教室』にも出演した注目の美少女・山本舞香も、空手で黒帯の有段者。『暗殺教室』でのワイヤーアクションもさることながら、映画『Zアイランド』では見事なハイキックを披露していた。
そのほかにも、太極拳や槍術、長拳を14年間学んできたという山本千尋、『クレディセゾン』CMで頭でブロックを叩き割って話題になった空手黒帯の武田梨奈も、実はアクション映画界では“ベテラン”と言えるほど活躍している。前々作の朝ドラ『まれ』(NHK総合)で主演を務め、ドラマや映画で大活躍中の土屋太鳳もアクションの評価は高い。映画『るろうに剣心』では佐藤健とタメを張る激しいアクションを披露していた。
◆CG全盛の時代に求められ始めた“リアル”
こうしてみると、今まさに脂ののってる女優・綾瀬はるか、長澤まさみなどは、日本女優の“王道”を歩んできているが、どちらかと言えば、穏やかでふんわりとした雰囲気がウリ。アクションとは対極に位置している感がある。
しかし綾瀬は、NHKの大河ファンタジー『精霊の守り人』でジブリ映画のヒロイン的な女用心棒を演じ、初めて本格的なアクションに挑戦。放送前から話題を呼んでいたが、女優としての次のステージに足を踏み入れ、新たな顔を見せた。シーズン1はこの4月で放送終了したが、好評を受けてシーズン2は2017年、シーズン3は2018年放送と、まだまだ続くことが発表されている。一方の長澤は、公開中のパニックアクション映画『アイアムアヒーロー』で本格アクションに初めて臨んだ。同作は、大量の爆薬を使うアクションシーンなどのために韓国で撮影が行なわれ、そんな激しい撮影のなか、長澤は人を襲う謎の生命体ZQN(ゾキュン)との殴る、刺すなどのリアルかつ壮絶な格闘アクションで新境地を切り開いている。
エンタメ作品には欠かせない要素であるアクションは、CGの普及と技術の進化によってより過激に、より高度な表現ができるようになった。しかし最近の作品では、CG全盛の時代に逆行するかのような、“生”の本格アクションをウリにする傾向が強くなってきている一面もある。作られた映像ではない、本物が映る“リアル”を世の中が求め始めているということだろう。綾瀬や長澤のようなキャリアのある“王道”女優も本格アクションに身を置き始めた。そんな時代の流れを迎えている今、一時期のブームから衰退の一途をたどっていたように見えたアクション女優というカテゴリが再び脚光を浴びている。ここから若手スターが生まれる日も遠い話ではなさそうだ。
◆時代の流れとともに主流から外れていったアクション作品
テレビドラマ全盛の70~80年代、志穂美の存在感は圧倒的だった。恵まれた体形から繰り出す抜群の切れの格闘アクションは圧巻。大男をなぎ倒していく姿には、貫禄のあるかっこよさとともに強い女性ならではセクシーさも漂わせていた。そんな志穂美のドラマ『影の軍団』シリーズ(フジテレビ系)や映画『女必殺拳』シリーズでの吹き替えなしのアクションは、男性女性を問わず観るものを魅了。まさにスターと呼ぶに相応しい存在であり、ジャパンアクションクラブ(現ジャパンアクションエンタープライズ)在籍時は千葉真一の妹的な存在として一世を風靡した。そんな志穂美と同じくジャパンアクションクラブに在籍していた森永は、『宇宙刑事シャイダー』(テレビ朝日系)をはじめ特撮ものでのハードなアクションが人気を博していた。
しかし、90年代以降になると、世の中の求める作品の傾向に変化が現れ、静かな日常をたんたんと描く物語や、半径5メートルと言われる身の回りに起こること、若者たちの鬱屈や屈折した心情をリアルに描写する作品が好まれるようになっていく。アクション作品は、時代の変化とともにエンタテインメントシーンのメインストリームから外れるようになっていった。
一方、海外を見ると、ハリウッドアクション映画は時代を超えて世界的に人気を得ており、アクション女優と言えば今も昔も花型のスターだ。ブラッド・ピットの妻であるアンジェリーナ・ジョリーは、『トゥーム・レイダー』シリーズで一躍大スターになったし、『バイオハザード』シリーズのミラ・ジョボヴィッチ、『キル・ビル』のユマ・サーマンもそう。『キル・ビル』では「ヤッチマイナ!」のアジア系女優ルーシー・リューも名を馳せた。古くは『エイリアン』のシガニー・ウィバーや『ターミネーター2』のサラ・コナー役リンダ・ハミルトンもそう。“引き締まった肉体美でガンアクションやファイトシーンをこなすカッコいい女”はスターであり、アクション大作はスターへの登竜門的な作品。その流れは、現在においても続いている。
そんなハリウッドと日本の違いについて、ドラマ制作会社スタッフは「日本の場合、家族を守るおしとやかな女性で芯は強いといった吉永小百合的な女優、もしくは胸元をはだけて吉原の花魁を熱演! 的な女優さんを“名女優”とする傾向が強い。アクション的な要素はあまり求められていなかったんです。でも海外では、女性でもアクションシーンをカッコよくこなせば、男性以上に評価されますし、実際に数字もついてくる。女優さんたちも当たり前にジムで体を鍛えたり、格闘技の練習をします。アクションができることは、スター女優の“必要最低条件”ですね」という。
◆日本でも目立ち始めた若い世代の“本格アクション女優”
しかし、男性が観ても女性が観てもカッコいいと思えるような、ハリウッドのアクション女優たちの作品を観て育った若い世代が、アクション女優を目指すのはごく自然なことだ。実際、日本でも本格的なアクションをこなす若手女優たちの活躍が目立ち始めている。
映画『TOKYO TRIBE』で、美しすぎる回し蹴りを見せて観客を魅了した清野菜名はその代表格。手足の細長いモデル系で、ルックスは乃木坂46にいそうな正統派美少女だが、ドラマ『ウロボロス』(TBS系)での吹き替えなしのアクション、押井守監督の実写映画『東京無国籍少女』での文字通り体を張った壮絶な格闘&ガンアクションは話題になった。また、第14代目リハウスガールであり、映画『暗殺教室』にも出演した注目の美少女・山本舞香も、空手で黒帯の有段者。『暗殺教室』でのワイヤーアクションもさることながら、映画『Zアイランド』では見事なハイキックを披露していた。
そのほかにも、太極拳や槍術、長拳を14年間学んできたという山本千尋、『クレディセゾン』CMで頭でブロックを叩き割って話題になった空手黒帯の武田梨奈も、実はアクション映画界では“ベテラン”と言えるほど活躍している。前々作の朝ドラ『まれ』(NHK総合)で主演を務め、ドラマや映画で大活躍中の土屋太鳳もアクションの評価は高い。映画『るろうに剣心』では佐藤健とタメを張る激しいアクションを披露していた。
◆CG全盛の時代に求められ始めた“リアル”
こうしてみると、今まさに脂ののってる女優・綾瀬はるか、長澤まさみなどは、日本女優の“王道”を歩んできているが、どちらかと言えば、穏やかでふんわりとした雰囲気がウリ。アクションとは対極に位置している感がある。
しかし綾瀬は、NHKの大河ファンタジー『精霊の守り人』でジブリ映画のヒロイン的な女用心棒を演じ、初めて本格的なアクションに挑戦。放送前から話題を呼んでいたが、女優としての次のステージに足を踏み入れ、新たな顔を見せた。シーズン1はこの4月で放送終了したが、好評を受けてシーズン2は2017年、シーズン3は2018年放送と、まだまだ続くことが発表されている。一方の長澤は、公開中のパニックアクション映画『アイアムアヒーロー』で本格アクションに初めて臨んだ。同作は、大量の爆薬を使うアクションシーンなどのために韓国で撮影が行なわれ、そんな激しい撮影のなか、長澤は人を襲う謎の生命体ZQN(ゾキュン)との殴る、刺すなどのリアルかつ壮絶な格闘アクションで新境地を切り開いている。
エンタメ作品には欠かせない要素であるアクションは、CGの普及と技術の進化によってより過激に、より高度な表現ができるようになった。しかし最近の作品では、CG全盛の時代に逆行するかのような、“生”の本格アクションをウリにする傾向が強くなってきている一面もある。作られた映像ではない、本物が映る“リアル”を世の中が求め始めているということだろう。綾瀬や長澤のようなキャリアのある“王道”女優も本格アクションに身を置き始めた。そんな時代の流れを迎えている今、一時期のブームから衰退の一途をたどっていたように見えたアクション女優というカテゴリが再び脚光を浴びている。ここから若手スターが生まれる日も遠い話ではなさそうだ。
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