@chablis777  
シャブリ

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(雪次郎)なっちゃん。
(門倉)ありがとう。おう。
(倉田)みんな 聞いてくれ。
これは あくまでも 架空の伝説だ。十勝 音問別辺りでまことしやかに語られている話を基に俺が考えた。
テーマは… まあ みんな読んで分かってると思うが個人の問題と 集団の問題だ。
よし 明日から稽古を始める。
(一同)はい!
♪~
いよいよ 女優 なつの出番がやってきました。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(なつ)よっちゃん 行こう。(良子)うん。
あっ… バイバ~イ。
あっ 奥原。はい。
分かってると思うが女は お前しかいないんだ。
女の役は みんな お前がやるんだぞ。
良子ちゃんもいます。
女優志望は お前しかいないんだ。
私は 志望なんかしてません。それでも お前しかいないんだ。
なっちゃんが やるしかないわ。
私は 裏方だから。
(倉田)居村にも期待してるぞ。
何をですか?
いろいろ。
けど こんな出番があるなんて…。
フッフ~ おじいさんも喜ぶだろう。
先生… 先生は 私のじいちゃんの過去まで調べて書いたんですか?
過去? さあ 知らんな。何かあるのか?いいえ 知らなければいいんです。
さようなら。(倉田)はい。さようなら。
あ… あと お前 絵描けるんだって?えっ?
雪次郎に聞いたよ。
絵なんて描けません。えっ?
私が描けるのは 落書き程度で…。
でも 絵好きだべ? なっちゃん。好きなのと描けるのは違うべさ。
うん そうか…。
いや 舞台美術はいつも 美術部に頼むんだが今回は それではちょっと違うような気がしていてな。
あっ 雪次郎の店にいい絵が飾ってあったな。
えっ?いや ほら あの~ 何だ…ベニヤ板に描いたような。
あっ! 天陽の絵だ!
(倉田)てんよう?(雪次郎)山田天陽。なっちゃんの友達です。小中一緒だった。 ね!
うん。うちの父ちゃんが その絵 気に入って特別に譲ってもらった絵なんです。ほ~う。
いや あんな書き割りが作れるといいんだけどな。うん。
実はね 演劇部の倉田先生がね天陽君に 舞台美術をやってほしいって言ってんのさ。
(天陽)舞台美術?そう。
なしても 天陽君に背景の絵を描いてほしいんだって。
何で…? なしてもってわけないべさ。
(タミ)いいじゃないの やってみれば。
おばさんは 賛成してくれますか?
私は 演劇のことは よく分かんないけど光栄なことじゃないの。 うん。
私もね 天陽君の絵が 舞台にあったらそりゃ すてきだろうなって思ったよ。
まあ 天陽君は あんまりやりたくないだろうなとも思ったけど。
そんなことないさ。
それが なっちゃんや雪次郎のためになるならうん やってもいいよ。
えっ? 本当に?うん。 まあ だけどあんまり 時間は取れないけど。分かってる。
どんな舞台なの?あっ これが 芝居の台本。
読んでみて。ふ~ん。
実はね 私が演劇をやろうって思ったのはじいちゃんのことが きっかけなの。
泰樹さん?うん。
じいちゃんが その芝居見てもし 感動してくれれば何かが変わるような気がする…。
「白蛇伝説」なのに?そう。
なのに。 ハハハ…。
(正治)なっちゃん今 搾ったばかりのうちの牛乳ちょっと飲んでみてよ。えっ?
なっちゃんとこの牛乳とどこが違うのか 見てもらいたんだ。
分かりました。
はい。
どうぞ。頂きます。
うん おいしい。ハッ…。
う~ん うちのとそんなに変わらんと思うけど。
そうだよね?うん。いや なっちゃんところから干し草も分けてもらってるんだしそんなに違わないように努力してきたつもりなんだけど…。
何か 問題あるんですか?
うん… 乳業メーカーがねうちの牛乳は 乳脂肪が低いって言うのさ。
えっ?うちの牛乳はどのメーカーに持っていっても格付けが低くて 安く引き取られるのさ。
おかしいよ 全く。
♪~
・ただいま。(富士子)帰ってきた。
(明美)お帰んなさい。お帰り。
はあ~。
遅くなっちゃった。こんなに遅いのも 珍しいからちょっと心配してたのよ。あ… ごめんなさい。
もう そのままでいいから食べなさい。
疲れたしょ。うん。なつの取って。
(照男)お代わり。はい。
(夕見子)何杯食べんの?なつ姉ちゃんの分 食べないで。
(照男)じゃあ 半分で…。(富士子)いっぱい あるから。台本が出来たのかい?えっ?
台本が出来たら遅くなるって言ってたしょ。
まあ そういうことなんだけど…。
ん?なつ姉ちゃん どんな役? 主役?
どうかな~。ん? 出番が少ないのか?
いや 出番は多いみたい…。
(明美)それって 主役じゃない!?主役は男だから。
頂きます。
(夕見子)紅一点だから女の主役になるのは決まってるでしょ。
夕見姉ちゃんも やりたいの?えっ? 何でよ。
ヤキモチ焼いてるから。はあ? 何言ってんの。
雪月の雪次郎なつ姉ちゃんに取られちゃうかもよ。
バ~カ。 子どもがそういうこと言うんじゃないよ。
バ~カ。 子どもにばっかり働かせるんじゃないよ!
まあ いいから! その話はおしまい。
(剛男)まあ 何でもいいから頑張れ。
やっと 高校生らしいことしてるんだからな なつは。
父さん… 今ね天陽君の家に寄ってきたんだわ。
そんで遅くなったの。
そうなのか。うん。
そんでね じいちゃん。(泰樹)うん?
天陽君のおじさんが悩んでたわ。何をだ?
牛のこと。(剛男)牛?
牛乳を メーカーに安く引き取られてしまうらしいの。
乳脂肪が低いって言われるって。
それは しかたないべや。まだ 酪農始めたばかりなんだべさ?
だけど うちの干し草も分けてあげたし。
だからといってすぐに いい乳が出るわけじゃねえ。
そだけど…。努力すれば そのうち よくなる。
だけど もし 脂肪検査が間違ってたら?
なつ そういうことは軽々しく言うことじゃないだろ。
あっ… ごめんなさい。
うん… 牛飼いは難しい。
他人のせいにするのは簡単じゃ。
分かった。 私が見ておくよ。
農協の責任でもあるしな。
父さん…。
うん お願い。
今は 一軒一軒小さな農家を助けていくしかないからな。
みんなが団結するまで。
ごっつぉうさん。
あ… じいちゃん…。
変なこと言って ごめんなさい!
♪~
 回想 (富士子)じいちゃんは農協を頼りたくないのさ。昔から 何でも 自分の力でやってきてそれを支えに生きてきた人だからね。
♪~
ふ~ん。どう?
なかなか面白いじゃない。
そう? 面白い?うん。
そんで大丈夫かなあ。
何が?
じいちゃん。そんな芝居見て 傷つかんかな?
まるで じいちゃんのことみたいしょ?
そうかなあ…。
似てるような気もするけど 大丈夫しょ。
きっと喜んでくれるわよ。
なつが やるんだから。
そうかな… 本当にそう思う?
うん。
いかった。 ありがとう 母さん。
ね。 面白いしょ。
でも 大変な役だね あんた。
このページ読んだ?うん… たっくさん しゃべってるね。
「俳優の使命は 自分の技術を使って戯曲を演劇的リアリティーに転化させることである」。
へえ~。 それから…。
あっ… ちょっと何 勝手に読んでんのさ!
随分 その気になってんだ。
違うって!
それは 雪次郎君が勝手に貸してくれたのさ。
何も隠すことないしょ。何も隠してないってば!
う~ん…。
私が 演劇をやるのはあくまで じいちゃんのためなんだから。
何さ それ つまんない。えっ?
あんたのそういうところ 本当つまんない。
やるなら 自分のためにやんなよ。
やりたいんでしょ?
それとも 本当は やりたくないのかい?
いや…。
今は やってみたいかも。
だったら それを認めて自分のためにやんなよ。
じいちゃんのためとか言ってごまかしてないでさ。
それなら 私も応援する。
してやる。
夕見?ん。
頑張れよ。
うん ありがとう。
フフフ…。
♪~
その晩 遅くまでなつは 絵を描いていました。
初めて 自分のために演劇と向き合ったのです。
♪~
あっ!
なつよ さあ 新しい日の始まりだ。


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