日経BPが2019年3月20日に開催した「SPORTS Tech&Biz Conference 2019」では「e-Sportsライブストリーミングによるマネタイズ手法」と題した講演が行われた。eスポーツで使用される,ライブストリーミングエンゲージメント及び分析プラットフォーム「Maestro」を用いた,SNS時代のマネタイズについて活用事例が語られた。
「e-Sportsライブストリーミングによるマネタイズ手法」登壇者
⬆︎MaestroのFounder & Chief Executive OfficerであるAri Evans氏
「Maestro」は,既に「オーバーウォッチ」や「リーグ・オブ・レジェンド」などのeスポーツ中継で使用されているAri Evans氏のmaestro社が開発するライブストリーミングエンゲージメント及び分析プラットフォームです。
こちらは試合をライブストリーミングするシステムではなく,投票などの参加型コンテンツを出す他,中継を視聴している人のユーザー属性を分析したり,その人の好みに応じた広告を表示するといった機能を持っております。
「Maestro」のキーワードは「インターネット・ファースト」であるとEvans氏は語り、そのコンセプトとなるのが,インタラクティブ性とパーソナライズと答えました。
インタラクティブ性とパーソナライズとは?
インタラクティブ性は,デジタルネイティブの若い世代に訴求するのに必要なもの
Evans氏はインタラクティブ性は,デジタルネイティブの若い世代に訴求するのに必要なものとのこと。彼らは継続的かつ反復的にネット中継を見てくれる優良な顧客であり,メディアがインタラクティブであることを自然と考えており、ここで単なる中継ではない「Maestro」のインタラクティブ性が活きてくるとのことだ。
また,パーソナライズを進めれば,ユーザー属性に合わせた広告を出せるようになり,費用対効果を高めて行くことができるとのこと。
「これまでもネット中継の視聴率や広告効果をニールセンのデジタル広告視聴率などで測ることはあるが,それはあくまでもテレビの時代をベースとしたものであり,現在のeスポーツで使うには正確さに欠けるところがある」とEvans氏は指摘する。
「Maestro」の分析であればそれぞれニーズに合わせた広告を出すことができるうえ,従来型の広告のように広告ブロッカーで弾かれることもないため,今までに無い高い効果が期待できるとのこと。
「Maestro」は,ライブ配信のオーバーレイパネルにインタラクティブコンテンツを表示でき,試合開始前にどちらのチームが勝利するかを予想して投票したり,決着が付いた際、結果をSNSでツイートできるリンクを表示するといった活用がなされている。
こうしたコンテンツへの反応から得られたデータをもとに,視聴者の属性を分析し,個々人に合わせた(パーソナライズされた)広告を表示する。例えば,その人がひいきにしているチームのグッズを購入するリンクを表示できるので,視聴者は中継の画面から離れることなく,グッズやゲーム内アイテムを購入できるという仕組みだ。
「Maestro」はeスポーツ以外の中継でも利用されており,そのパーソナライズの領域は「広告表示」に留まらないそうだ。例えば,スポーツなどのTV中継では「みんなが見たいシーン」が流れていたが,「Maestro」を利用したストリーミングだと,視聴者のお気に入りの選手をピックアップした映像をオーバーレイで表示できるという。
「オーバーウォッチ」の中継における,「Maestro」の活用事例。応援しているチームのジャージを買うためのリンクが右側に表示されている
「Maestro」のインタラクティブコンテンツ。投票(上写真)と,試合結果をつぶやけるSNSリンク(下写真)
また,インタラクティブコンテンツを「視聴者が特定条件を満たすと報酬が得られる」とゲーミフィケーション的に活用することも可能であり,とある会社は「Maestro」を使い「動画を60分見ると見積もりが安くなる」という方法を試してみたところ、見事効果を出したという。もちろん,視聴者の反応は全てデータ化,その後インタラクティブコンテンツ毎の反応や,なんと日付毎の視聴継続率などもチェックでき,より効果的な施策を探っていくことも可能とのこと。
最後にEvans氏は「将来は新しい時代に合わせた戦略とツールが必要になります。体験にプレミアムな価値を与える施策でダイレクトに顧客へアクセスするのに加え,SNSでのプロモーションも行えば,両者のいい所取りができるのではないでしょうか」と語り,講演を締めくくりました。