新生ドラゴンズの野球で主導権を握った。1回、1死から右前打の京田が二盗を決め、大島が内野安打で好機を広げる。ビシエドに2球続けたストレートでは動かなかった大島が、3球目のフォークでスタートを切った。
セ・リーグ断トツのチーム16盗塁も素晴らしいが、実はその中身が「新生」たるゆえんである。うち7個が「一、三塁からの二盗」なのだ。何がどれくらい「新生」なのか。まず一、三塁から走者を動かすかどうかには、野球観が表れる。昨季は4個しかなかったのだ。明確なデータは不明だが、恐らく12球団最少。中日は最も動かないチームから最も動くチームに変わった。
動く。動かない。どちらにもメリットとデメリットはある。動くメリットは、無死や1死なら併殺打のリスクがグッと減り、単打で2点が見込める。デメリットは一塁手がベースから離れるため、ヒットゾーンが狭まる点だ。動かないメリットとデメリットはその逆と考えていい。どちらかが正しいとは言い難いからこそ、野球観が表れる。
「状況を見てだけど、行けるなら行かせる。行かせない意味がないよね」。与田監督は言い切った。守備側は何よりも重盗を警戒するから、二盗のみの成功率は極めて高い。ならば動いて2点をむしり取る。実際、ビシエドは左前に、同じ状況で山田哲が二盗を決めた3回には、バレンティンが中前に2点打を打った。タラレバの話にはなるが、どちらもゴロヒット。併殺と紙一重だった。
「点が入った瞬間、取材に来るなって思ってましたよ。(3球目を選んだのは)ビシエドに3球真っすぐはないと思ったから。チームの考え方、監督の考え方で今年はどんどん行けという雰囲気はあります」
前々からこのテーマで話していた大島は、笑顔で待っていた。リーグトップの8盗塁のうち4個は一、三塁からの二盗だ。ほぼ成功するのだから、走らせる。早くも昨季超え。これぞ与田野球。走り、動き、得点への道を押し広げる。