@chablis777  
シャブリ

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(なつ)私は じいちゃんに間違ってるとは言えません。言いたくありません。
だから じいちゃんの気持ちに少しでも寄り添えるようなことをしたいんです。
(倉田)奥原が 今日から演劇部に入部した。
勝農演劇部 女優 第1号だ!
(泰樹)お前が出るなら 見に行ってやる。
えっ?
するからには 頑張れ。 1番になれ。
じ… じいちゃん?
(雪次郎)2 2 3 4。(一同)5 6 7 8。
(雪次郎)3 2 3 4。(一同)5 6 7 8。
なつは 十勝農業高校演劇部に参加することになりました。
演劇部といっても 勝農では完全に体育会系でその練習は 予想外にハードなものでした。
(雪次郎)54。(一同)54。
台本を作る倉田先生だけがじっと止まっているかのようでした。
高木!あっ はい。
う~ん… 「空回り」。「空回り 河原で 空手 かわら割り。空回り 河原で 空手 かわら割り空回り 河原で 空手 かわら割り」。
(一同)おお~!
「引き抜きにくい釘 抜きにくい釘抜きにくい釘 引き抜きにくい釘」。
よっしゃ~!(一同)おお~!(雪次郎)じゃあ なっちゃん。
「新春早々」。
「新春早々 新人少女のシャンソン歌手による新春シャンソンショー。新春早々 新人少女のシャンソン歌手による新春シャンソンショー。新春早々 新人少女のシャンソン歌手による新春シャンソンショー」。
(一同)イエ~イ!
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
♪~
よいしょ。 ああ…。
ああ… あ~ 痛い 痛い 痛い…。
(悠吉)どうした? なっちゃん。急に年取ったみたいだもな。
若いから やってけてんのさ。
(菊介)演劇の練習そんなに きついんかい?
それが 全く 訳が分からん。
走ったり 腕立て伏せをしたり人を持ち上げながら声を出して腹筋したり。
演劇って 何なんだろう。
(富士子)そんなに つらいならここの仕事 しばらくいいよ。
あんたの分ぐらい なんとかなるから。
そうだ。 任せろ なっちゃん。
(菊介)今まで 何もしてこなかったもななっちゃんは。自分のことは 何も。
なんも なんも。ずっと好きなことしてたべさ 私は。
牛の世話も好きだし そのために学校も通わせてもらってんだから。
今のお前の仕事は演劇で 主役をやることだ。
じいちゃん… 主役って何?
えっ? 楽しみにしとるぞ。
無理だって そんなの。私 演劇やったことないんだから。
だから 人一倍 頑張るんだよ。
やるからには1番を目指さんと つまらん。
ハハハ…。
なつが 演劇を始めたのは農協に勤める剛男さんと泰樹さんのもめ事が原因でした。
はい たまったよ。
牧場の牛乳を これまでどおり独自に売るべきかそれとも 農協が まとめて売るべきかそれが問題でした。
(剛男)農協による共同販売は決して 皆さんの不利益になることではありません。
これは 生産者が メーカーにのみ込まれないためにすることなんです。
だったら どうして ここに柴田さんは いないんだべか?
(一同)そうだ!あんた 自分の家は反対しておいて何言ってるんだ!(一同)そうだ!
まあ 皆さん柴田さんのことは置いといてここは もう一度 我々だけで現状の問題点を話し合いませんか?
組合長 今はねメーカーは どんなことをしても牛乳を買いたい時代だよ。それなのに 我々は 農協に一任して柴田さんだけが 自由に もうけていいという法はないだろうが!
泰樹さんと農協の問題はますます こじれてゆくようでした。
なつは おじいちゃんのために演劇という表現を通してその答えを見つけようとしているのです。
(照男)なつ。うん?
じいちゃんに あんまり期待持たせんなよ。
えっ 主役のこと?牧場のことだ。
じいちゃんは お前にこの牧場を継いでもらいたいんだわ。
えっ?それは お前も分かってるべ?
分かんないよ そんな。
ここには 照男兄ちゃんがいるし私が継ぐなんてことは…。じいちゃんは お前に期待してんだ。
それでいいのか? お前は。
ずっと この家にいていいのか?
どういう意味?
そんなことも今から考えとけって言ってんだ。
そんなこと言われても…。
なつは 時々 今でも本当の兄に 手紙を書いていました。
送り先は 子どもの頃いた孤児院です。
そこには もう兄がいないことを知っていながらだけど そこしか連絡先がなかったのです。
「お兄ちゃん久しぶりに 手紙を書きます。私は 農業高校の3年生で来年の春 卒業です。卒業しても しばらくこの家で働くと思います。私は 大事にしてもらった柴田家の家族にまだ 何も恩返しができていません。だから ここにいると思います。この牧場で じいちゃんの夢だったバター作りをしているかもしれません」。
「お兄ちゃんと千遥に今でも毎日 会いたいです。会いたくて 会いたくてたまりません」。
う~ん う~ん…。
♪~
(良子)なっちゃん今日も演劇の練習かい?
うん そう。
張り切ってるね。 楽しそうだね。
練習はきついよ。よっちゃんも やんない?
えっ? いいよ 私なんて。
お誘いもないし…。誘われたいの?
誰も そんなこと言ってないっしょ!
一緒にやる?
いいよ。 ついでみたいに言わないでや。
ついでじゃねえよ。裏方は たくさんいた方がいいんだから。
裏方?
よっちゃん よかったら本当に手伝ってよ。おう。
そうね まあ 考えてもいいけど。うん?
どんなお芝居すんの?
それが まだ 台本も出来てないのさ。
そうなんだ。うん。
よいしょ。
何よ あんたら?
何だ 君たち 1年生だろ。
門倉さんがお呼びです。
門倉…? 門倉って あの?
え… どの?
それはバンカラな校風を誇る勝農において番長と呼ばれている3年生でした。
(門倉)お前らは もう行っていい。失礼します。
あなたは 農業科の門倉 努さんよね?
あの~ 何でしょうか?
演劇部に 入ったそうじゃねえか。
あっ はい!おめえに聞いてんじゃねえ!
あっ 私は まだ…。お前にも聞いてねえ。
もう一人は? どうなんだよ。
それが あんたに関係あるんですか?
おい…!なっちゃん…。
女を入れていいと思ってんのか?
はい? ダメなの?おめえに聞いてんだ 演劇部!
ああ あの… 僕じゃなくて 倉田先生が…。
いいのかって聞いてんだよ!ダメなのかって聞いてんのさ!
あ?女が 演劇をやってはダメなんですか?
農業高校が ナメられんだろうが。
誰に ナメられるんですか?
そりゃ… 世間様にだ!
世間様って あんたは何様ですか?(雪次郎)なっちゃん!
(良子)この人は 熊と サケを取り合って勝ったって伝説がある人だよ。
だからって 敬語使う必要ないしょ。
同級生なんだから。
おめえら この学校 何しに入った?
演劇なんて人前で抱き合ったりすんだろ!
やらしい… そんなこと想像してんだ。う~わっ。
あっ… おめえらFFJの精神はあんのか!?
あるわよ!FFJの意味を言ってみれ!
フューチャー・ファーマースオブ・ジャパン!
我々は 日本学校農業クラブの一員です!
斉唱! そ~れ!
♪~
ちなみに これは 校歌ではありません。
全国の農業高校生が 全員所属する農業クラブの歌です。
♪~
あ~い!あ~い!
あ~い!
あ~い!よし!
失礼します。 遅れてすいません。
先生 私のほかにも手伝いたいという人を連れてきました。
えっ?
どうぞ。
♪~
居村良子と 門倉 努か。
大道具でも 何でもやってくれるそうです。
門倉君は こう見えて 真面目な生徒です。
知ってるよ。
そうか 門倉 よろしく頼む。
押忍!うん。 居村 よろしく頼む。
(雪次郎)先生。(倉田)うん?
稽古しないんですか?ああ 今日はいい。
やっと 台本が上がったところだ。
おお~ 出来たんですか?うん。やりましたね 先生。
これを みんなで清書すれば完成だ。
「白蛇伝説」…。
早く読みたいです。 読ませて下さい!
♪~
なっちゃん 慣れねえと全く読めねえだろう。
黒板の字は読めるのに…。
あれは 読めるように書いてるからな。
それは 魂で書いてるからだ。
分かりました。 なら 魂で読みます!
(倉田)よし。
なつよ さあ 次はお前が 魂を見せる番だ。


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