ガラケーを使うのは恥なのか
私の母親は昔からずっとガラケーを使い続けていた。
もし仮に母がスマホに買い替えたら、家族でLINEが出来たりして便利かもなぁ…と思いつつも、今更スマホを使いこなすことが出来るとは到底思えなかったので、こちらからは特にスマホを勧めようとも思っていなかったのだけれど。
しかしそんな母が、突然スマホに買い替えたという報告を受けて非常に驚いた。
具体的な経緯を聞くと、自分は今までガラケーを使っていたのだけれど、電車に乗っていると周りの人間は皆スマホを使っているのを見て、自分だけがガラケーを使っているのが恥ずかしいと感じるようになり、隠れてガラケーを使うようになり、結果スマホに乗り換えたくなったらしい。
そして案の定、スマホに乗り換えたはいいものの使いこなせなくて色々なトラブルに遭遇し、そのおかげで拗ねてしまったので助けてくれ…という、母と同居している妹からのSOSラインで初めて経緯を知ったという有様。
…もうね、バカかと、アホかと。
ツッコミどころが多すぎて何から言及したらいいのか悩むところだが、まずは70過ぎた母親が「ガラケーを使うのが恥ずかしい」という感情が芽生えたこと自体が完全に想定外だった。
母はずっと田舎暮らしで、それまでは何の疑問もなくガラケーを使っていたのだけれど、諸般の事情で今年から上京して妹と同居することになり、そこで初めて都会の人たちの暮らしぶりを目の当たりにしたからという事らしい。
確かに昨今ガラケーを使う人は減っているかも知れないけれど、今でもガラケーを使い続けている人はある程度いるので、本来であれば恥じる必要などないはずである。しかし例えば電車内では通話が禁じられているので、必然的にスマホをいじっている人を見かける比率が多くなり、そのため誰もがスマホを使っていると勘違いしてしまったのではないかと想像する。
まぁ百歩譲って、そこまでの考えに至るのは理解できなくもない。
しかしだからといって、いきなりスマホに乗り換えて使いこなせると思ってしまう、その根拠のない自信はどこから出てきたのだろう。そもそも今まで使ってきたガラケーだって、私がわざわざ入力方法をレクチャーしてやっと使えるようになったのに!
…というか、スマホに乗り換えたいなら事前に一言相談して欲しかった。私が以前使っていたiPhone6が余っているので、それにMVNOのSIMを刺してガラケーと2台持ちするのがベストだったはず。スマホが使いこなせないからと言って、今更ガラケーに戻したいとか言われても遅いよ!
百歩譲ってiPhoneを使うならまだしも、機械に疎い人がいきなりAndroidを使い始めるとか、無謀にも程がある。
※今の御時世、iPhoneとAndroidは大きな違いはないよというツッコミが入る前に言及しておくと、初心者であればあるほど、ほんの小さな段差でも躓きがちである。普段からスマホを使いこなしている人にはそれが分からんのですよ。
そんなインシデントがあり、母と同居している妹もほとほと疲れ果てたというエマージェンシーを受けて、仕方なくヘルプすべく母の元に出向いた。
まずは文字が小さくて見えないというので、設定で文字を最大に設定した。これでまずは表示に関しては解決。
後は文字入力が出来るようになれば万事解決。もし仮にフリック入力が難しくても、別の方法もあるのでそっちで慣れれば…と思っていたのだけれど、いざ試してみると実質的には困難であることが初めて分かった。
フリック入力とは別にトグル入力というものがあり、これを使えば従来のガラケーに近い操作で入力ではないか?と期待していたのだけれど、いざ使ってみたらこれが本当に使いづらい。スマホを使い慣れている私ですら厳しい。
具体的に何が無理かというと、ガラケー同様キーを連打すれば文字が切り替わっていくのだけれど、ある程度速い速度で連打する必要がある。少しでも遅れてしまうと、次の文字にフォーカスが移ってしまう。ゆっくりボタンを打つ老人には無理。連打の速度を変更する設定も見つからない。
また、タッチパネルの入力が無理なら、最悪マイクを使った音声入力もあるではないか…と思ったのだけれど、これも認識があまり良くなく、とても使い勝手が悪い。
結局、無理してでもフリック入力に慣れてもらうしか無いという結論に達した。
そして更に、LINEを使おうとして様々なトラブル発生。まずLINEをインストールした時点で、電話帳に登録されていた人全員に通知が行ってしまい、交流したくない人にまでLINEを使っていることが知られてしまったとの事で、非常に怒っていたのだけれど…。これに関してはその時私はその場にいなかったし、後の祭りとしか言いようがない。LINEを立ち上げる前に、そのような惨劇を防ぐような設定は出来なかったのか?とか今更言われても、知らんがなとしか言いようがない。そもそもLINEにそんな親切な設定があるとも思えないし。
まぁ過ぎたことは仕方ないとして、次にハマったのが「メッセージを送信するのに、どこを操作したら良いのか分からない」という壁があった。普段使い慣れている人から見れば、メッセージを入力するための枠があるのでそこをタップすればいいと理解しているが、年を取って目が悪い人にとっては、この枠を認識すること自体が困難であることに今回初めて気がついた。今時流行り?のフラットデザイン()とやらの影響か、メッセージボックスの境界線が非常に薄い。このデザインを作った人は普段からスマホを使い慣れていて、そんな疑問など頭の片隅にすら浮かばなかったのであろう。
トグル入力にしろLINEの実装にしろ、今回の経験で自分が使い慣れているものでも、人によっては必ずしもそうではないことを知ることが出来て、そういう意味では勉強にはなった。たまにはこういう視点を持つのも大事…かも。
※12/23 追記