まるで昨年の知事選を再現したような選挙だった。

 衆院3区の補欠選挙は「オール沖縄」勢力が推すフリージャーナリストの屋良朝博氏(56)が初当選を果たした。

 「オール沖縄」勢力は、急逝した翁長雄志前知事から玉城デニー知事へのバトンタッチに成功し、玉城氏が知事に転じたことで実施された補選にも勝利し、県内における政治基盤を固めたことになる。

 屋良氏は新聞記者として長く基地問題に取り組んできた。しかし政治経験はなく、一般的にはほとんど無名。知名度不足や組織体制の不備は明らかだった。

 相手候補の島尻安伊子氏(54)は沖縄北方担当相まで経験し、国政与党が全面的にバックアップ。菅義偉官房長官が来県し支援を訴えたほか、3区14市町村のうち13市町村長が支持するなど強大な組織力を誇った。

 一騎打ちの戦いで、屋良氏が勝利を収めた要因は何か。

 昨年の知事選を含めこれまでの選挙と決定的に違ったのは、島尻氏が米軍普天間飛行場の辺野古移設について「容認」の姿勢を鮮明に打ち出したことだ。

 有権者は「新基地ノー」「辺野古埋め立てノー」の意思を明確にしたのである。

 選挙期間中、本紙などが実施した調査で、安倍政権の基地問題への姿勢を「評価しない」と答えた人が68%にも上った。

 選挙結果は、2月の県民投票で辺野古埋め立てへの「反対」が投票者の7割超に達したにもかかわらず、政府が工事を続行したことへの抗議の意思表示でもある。

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 昨年の知事選がそうであったように、今回の選挙も「新しい政治の始まり」を予感させるものがあった。

 新基地建設を巡る屋良氏の主張は、海兵隊の運用見直しによる「辺野古不要の普天間返還プラン」だ。

 単に反対を訴えるのではなく、辺野古とは異なる選択肢という新たなアプローチで無党派層を含む有権者の幅広い支持を得た。

 振興策についても、政府とのパイプを強調する島尻氏に対し、屋良氏は県を通さず市町村に直接交付する補助金創設など国の関与の強まりを問題視した。

 一方、島尻氏の敗因は無党派層に支持が広がらなかったことにある。子どもの貧困対策に直接タッチしてきた実績を打ち出したが浸透せず、辺野古を巡る過去の言動のマイナスイメージも付いて回った。

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 補選の結果、沖縄選挙区は衆院4議席、参院2議席のうち5議席が、新基地に反対する議員で占められることになる。

 安倍政権は、一連の選挙で示された「沖縄の民意」に真摯(しんし)に向き合うべきである。

 日米両政府は19日、ワシントンで開かれた安全保障協議委員会(2プラス2)で「辺野古が唯一の解決策」だと再確認したという。沖縄社会に楔(くさび)を打ち込むための「恫喝(どうかつ)」というほかない。

 辺野古問題は、県との話し合いの中からしか解決の道を見いだすことはできない。