勢いで何とか書いてみました。
ですので誤字脱字あるかもです。
トブの大森林を進む大きな影が一つあった。
「殿・・血の匂いがするでござる」
モモンとナーベはその言葉を聞いてハムスケからゆっくりと降りた。
「奴だな」
モモンは背中の大剣を抜いた。いつでも戦闘を始められるように二本の大剣の柄を強く握る。
「ハムスケ、正確な位置は分かるか?」
「勿論でござる。血の匂いはあちらにあるでござる」
そう言って指さされた方向をモモンは凝視する。
(正確な位置を把握しておく必要がある。戦闘前だが使う必要があるだろう)
そう思い、モモンは意識を研ぎ澄ませた。
それは『十戒』の1つ。
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思考や感情を無にして自然と一体化する、風の流れや土の揺れによりホニョペニョコを発見した。
(・・・これか!)
モモンは自分の武技に引っかかった相手を知覚する。
「距離は約300メートル・・・気配が一つ・・ホニョペニョコだ」
その言葉を聞いてナーベとハムスケが頷く。
「ナーベ、ハムスケ、最悪の場合は・・・」
「この魔封じの水晶を使う・・そうですね?」
ナーベが手に持っているのは魔封じの水晶。その中には第9位階魔法の<
「あぁ。私ごとやってくれ」
「・・・・殿・・それは!」
「・・・・分かりました」
「ナーベ殿!」
「黙りなさい。ハムスケ」
「お前たちには迷惑をかけるな・・・」
「殿・・・」
かつての戦いを思い出す。
あの時は混乱の中逃げ出すので精一杯であった。
正直勝てるかどうかは分からない。
だがここで逃げ出す訳にはいかない。
『ホニョペニョコ』の恐怖で外出禁止令により
エ・ランテルの市民たちは恐怖に怯えている。
中には遊び盛りの子供たちの顔もあった。
(彼らの笑顔の為に・・・彼らの街の平和・・)
モモンは大剣を強く握った。
「行こうか。奴を倒すぞ」
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モモンはホニョペニョコに向かい走り出すと武技を発動していく。
(多少の無茶を承知でもやるしかない!)
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身体中に力が溢れる。途端に走る速度も3倍になる。
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両手に持った大剣を力強く握り直す。それを交差させる様に背負う。
(いた!ホニョペニョコ!)
ホニョペニョコはこちらにはまだ気づいていない様子だ。顔をこちらに向けていなかった。
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周囲の時間と自分自身を切り離す。ホニョペニョコは微塵も動いていなかった。
これだけ武技を使用してしまうと流石に負担がキツい。だから最初の一撃で決める。
モモンはホニョペニョコに向かって跳躍し、二本の大剣を振り下ろす。
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その瞬間、爆風が周囲一帯を飲み込んだ。
ナーべとハムスケは爆風から目を守る為に片腕を構えた。やがて爆発が鎮まる。
「やったでござるか?」
「まだ分からないわ」
ナーベとハムスケの目線の先に広がるのは緑溢れる生命力種れる森林とは真逆のものであった。
森林の象徴たる木は炎の嵐に食い荒らされて全て灰と化し、
土は爆発の衝撃により半分に切断した果実を連想させるほど抉れていた。ナーベとハムスケは丁度緑が途切れる場所に立っており
周囲の森林は変わらず緑を保っている。だがそれに反して大地が死んでいた。黒く変色した地面のあらゆる部分はガラス化していた。
爆心地であるモモンとホニョペニョコの場所は未だ煙が立ち上がっていた。
(姿が見えない・・・警戒するべきね)
ナーベは左手に持った魔封じの水晶を握る手を強めた。
(いつでも使用できるように構えておかないと・・・・)
やがて煙が晴れる。
そこにいたのは・・・・
モモンだけであった。
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「勝ったのか?」
モモンは武技を込めた一撃をホニョペニョコに向かって振り下ろした。そして確実に攻撃は当たっていた。
だがモモンは素直に勝利したとは思えなかった。
(ホニョペニョコには時間を巻き戻す力を持っている・・・こんな簡単に終わるとは思えない)
モモンはそう思い、武技を発動させる。モモン自身が自然と一体化し周囲を探る。
(・・・いた!?この感じ、やはり傷を回復させたのか!・・・不味い!この方向は!?)
「ナーベ!ハムスケ!奴がそっちに行った!!」
モモンは先程と同じく武技を複数使用した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」
大声を叫びながらホニョペニョコがナーベとハムスケに向かって跳躍した。その姿は傷を負っていた。だがナーベとは傷が塞がっていくのが見える。
ホニョペニョコは大きな口を開きナーベを飲み込もうと・・・
「ナーベ殿!危ないでござる!」ハムスケがナーベを突き飛ばすために体当たりしようと・・・
「私は大丈夫」だが衝動的に体当たりしようとしたハムスケとは対照的にナーベは冷静に行動を起こした。ハムスケをモモンのいる黒い大地に突き飛ばしたのだ。
「ナーベ殿!?」
「<
ナーベの姿が消える。ハムスケは消えたナーベの姿を探すもすぐに自身の視界の端に映ったのだ。空中に放り出されたような位置に出現したナーベはホニョペニョコの背中に向かって右手を向ける。そこから放たれた電撃がホニョペニョコに直撃する。
「ナーベ殿!」
「私の心配は後にして!今は集中しなさい!」ナーベは地面にフワッと舞い降りる。<
ナーベとハムスケは黒くなった地面から爆発音が聞く。その方向は先程ナーベたちがいた場所だ。
「ホニョペニョコぉぉぉぉぉ!!!」
「じゃまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
ナーベとハムスケは目にも映らぬ二人の姿がそこにあることは何とか把握できた。
「ハムスケ」
「何でござる」
「次にホニョペニョコが私たちの前に来たら、コレを使うわ」そう言ってナーベは魔封じの水晶を見せる。
「分かったでござる・・・痛いのは我慢するでござる」
ハムスケがそう言ったのは魔封じの水晶を使った場合、『誰かが』巻き添えになる可能性があるからだ。ホニョペニョコと互角かそれ以上に戦える戦士のモモンや<
「悪いわね。ハムスケ・・・もしもの時は」
「構わないでござる。この命、殿に一度は助けられたあの時から殿の為に使う覚悟は出来てるでござる」
「・・・ハムスケ、あなたは強いのね」
「ナーベ殿?」
ハムスケがどういう意味か尋ねようとした時であった。
空から一つの影が落ちて来る。
地面に落下した影を認識した瞬間、二人は再び構える。
「ホニョペニョコ!」
ホニョペニョコは片目が潰れ、鋭利だった牙や爪はボロボロになっていた。大きく開いていた口は先程とは異なり閉じれれており大量の血を流していた。
「なぁぁぜぇぇぇぇかてぇぇなぁぁぁぁぃぃぃぃぃ!!!!?」
ホニョペニョコが大きく叫ぶ。
その頭上からモモンが大剣を振り上げていた。
「お前の負けだ!ホニョペニョコ!」
その鎧は既にボロボロであり、二人の戦いが如何に熾烈であったかを物語っていた。
モモンは大剣を振り下ろし、最後の一撃のつもりで武技を複数込めて放つ。
「うぉぉぉぉっっ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なぁぁぁんんちゃっっってぇぇぇ!!!!!!!」
そう言うとホニョペニョコはニヤリと笑った。
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ホニョペニョコの傷が塞がっていった。
(アレは・・・回復手段を二回使用できたのか!?)
モモンはそのことを想定していなかった。
最初から武技に頼り過ぎていた。そのため身体は素手のボロボロである。
筋肉や神経といったものが悲鳴を上げていた。
-----------武技に頼り過ぎるな--------------
(師匠。すみません・・・・俺は・・・)
ホニョペニョコは頭上にいるモモンに向かって手をかざす。
モモンはホニョペニョコが何故そうしたのか理由は思い出せなかった。だがすぐに自身の身体で思い出すことになる。
モモンは内臓が爆発したかと思うようなダメージを受けて口と鼻から鮮血が吐き出した。
(第10位階魔法の<
空中で重傷を負ったモモンはホニョペニョコにそのまま首元を掴まれる。
「がっ・・・」
「しぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ホニョペニョコがモモンの頭部に向けて拳を振り上げた。
「ナーベ!!」
モモンの叫びにナーベは右手に持った水晶を使用する。
「<
巨大な炎の塊がホニョペニョコを纏うように包み込み身体を焼く。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!!」
ホニョペニョコがモモンを離しのたうち回る。ガラス化した地面に全身を擦り付けて消火しようとする。その様子は悪夢の様なものだ。
「モモンさん!今です」
「あぁ」ホニョペニョコの手元から離れたモモン。だが地面から起き上がろうとするも再び倒れてしまう。
「あぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
ようや<
「きぃさぁまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!よぉくぅもおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
再生により爪も元の鋭利さに戻った爪がナーベに向かって振り向けられ・・・
だがその攻撃はハムスケの尻尾により防がれた。
「武技<
「じゃまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そう言ってハムスケの尻尾に向かって手を振り上げる。ハムスケの尻尾が半分ほどに切断される。
「痛いでござる!!」
ハムスケに追撃をしようとすると思われたが、予想に反してホニョペニョコの動きは止まっていた。
「ちぃぃぃぃぃぃ!!!」
(ちぃ・・血か!?)
ホニョペニョコがハムスケに向かって大きくを口を開く。鋭利に生え揃った口から長い舌が伸びる。
だがホニョペニョコは横から放たれた魔法を受けて視線を向け標的を構えた。
「<
「うぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ホニョペニョコがナーベに向かって手を振り上げる。
それを見ていた・・・何とか立ち上がったモモンは動かなくなった身体を『武技』を使って強引に動かした。
(間に合え!間に合え!!間にあえ!!!!)
--------ナーベは好きか?-----
--------はい-----------------
--------ナーベを頼む---------
(俺はもう二度と大事なものを失いたくない!誰かを『守りたい』・・・・だから俺はどうなってもいい!だから!)
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!!!!」
だがモモンがいくら早く動こうとホニョペニョコのナーベに対する攻撃の方が早い。
(俺は・・・どうなってもいい!!だから『ナーベを守りたい』)
------------『全ての血』を守るか?-----------------
それはモモンの『誰かを守りたい』という強い想いが具現化した様であった。
ホニョペニョコの攻撃はナーベの前に現れた・・・・『次元』の盾により防がれた。
「!!?これは!!?」
驚きで動きを止めたホニョペニョコの腕を斬る。ナーベを掴んだ手が強引に離される。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!」
ホニョペニョコの腕から鮮血が噴き出す!!
「それはぁぁぁぁぁぁ『じぃぃぃげぇぇぇんんんだぁぁんんんそそそそうううううう』っっっ!!!?」
ホニョペニョコが姿を消した。
「透明化だと!?」
モモンはナーベの盾になるように立つ。
モモンはマントから弓と矢を取り出した。
(『グレート・ボウ・スペシャル』使わせていただきます)
モモンは弓を持ち、右手に矢を二本持つ。
<
・・・・
・・・・
違う・・これじゃない
・・・・
・・・・
感じろ・・・・流れを・・・
・・・・
そこだ!!
ホニョペニョコのいる位置が把握できた。そしてどの位置に移動するかも予見できた。
<
モモンは矢を放つ。
そしてその二本の矢はホニョペニョコの胸を貫いた。
「がぁぁぁぁぁっっ!!!?」
矢を中心に光の縄がホニョペニョコの全身を縛り拘束する。
動きそのものを封印しているようだ。
モモンは弓矢を収納すると、二本の大剣を再び持って構えた。
使用できるかは分からない。否、必ず使用してみせる。そうすることでしか倒せない。
再び複数の武技を同時発動させる。限界は既に超えていた。だがそれでも使うしかない!!
「力を貸してくれ・・・師匠!」
「<
モモンは動けなくなったホニョペニョコに向かって大剣を振り上げた。
「うぉぉおぉぉぉっっ!!!」
「くっぅぅぅぅぅぅ!!!」
ホニョペニョコの光の縄が消えていく。
モモンは大剣を振り下ろそうとした時だった。
ホニョペニョコが光の縄を解き、モモンに向かって手をかざした。
だが『何か』に警戒してしまった様な姿を見せた。
そしてそれがホニョペニョコの最後の行動だった。
「<
『
モモンの放ったその一撃が『次元』ごとホニョペニョコを切断した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっっ!!!!これは『じぃぃぃげぇぇんんんだぁぁんんせぇぇぇつぅぅぅ』!!!!!」
ホニョペニョコの身体がひび割れて崩壊していく。
「そぉんんなぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!まぁぁぁぁだぁぁぁぁぁいぃぃぃきぃぃぃてぇぇいぃぃたぁぁなぁぁぁんんてぇぇぇぇぇ」
ホニョペニョコが空に向かって手を伸ばす。
「『らぁぁぁすぅぅぅとぉぉぉさぁまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』」
そしてホニョペニョコは完全に崩壊し、消滅した。
(ラスト様?・・・誰のことだ?)
辺りに静かな時間が流れた。
「モモンさん、これを」
「ありがとう」
モモンはナーベによって手渡されたポーションを一気飲みした。身体が少しばかり楽になる。
「痛いでござるぅぅ」
「ハムスケ!」
ナーベはハムスケの切断された尻尾にポーションを振りかけた。あっという間に尻尾が元通りになる。
「終わったな・・・・」
「えぇ」
「終わったでござるなぁ」
モモンは視界がボンヤリとしたのを感じる。そして景色がグルグルと回ると意識が消失した。
こうしてホニョペニョコとの決戦は幕を閉じた。
・・・・・・
・・・・・・
とある崖に二人のダークエルフがいた。
「何かやった?お姉ちゃん?」
「ちょっと手助けしてやっただけだよ」
「それでどうなったの?」
「モモンの勝利・・・行こう。アインズ様に報告しないと」
そう言うと二人はその場を後にした。
『十戒』について
心刀滅却
心の刀を滅却する武技。
自身と自然を一体化することで周囲の状況などを把握できる。
五感を研ぎ澄ませることが出来る。
『闘気』とは異なるので敵対者に気付かれる心配はまずない。
鏡花水月
自分とは異なる誰かの『真似』をする武技。
ただし本人とは異なり実力は幾らか落ちる。ただし負担はかなりのもの。
さらに真似で『武技』を使用した場合、負担は相当なもの。
モモンは自分では弓を使用できないためこの武技を使うことでしか使用できない。
次元断層
どんな攻撃を防ぐ次元の盾。
モモンの『誰かを守りたい』という気持ちに反応して発動できた。
次元断切
どんな防御も切断する次元の矛。
モモンはこれを『鏡花水月』でミータッチの『次元断切』を真似て『強引』に使用した。そのため戦闘後すぐに倒れてしまった。