「ごめんなさい」
ナルシッサはその両手で──水仕事に縁のない少女のような手だ──顔を覆った。
「ごめんなさいドロメダ、わたし、皆に生きていて欲しかったわ」
金色の髪を振り乱して、震える指が、濡れた頬が、今にも潰えてしまいそうなその声を絞り出していた。
「生きていて欲しかったの! ごめんなさい、ごめんなさい、私にこんなこと言う資格なんかないのに……でもどうしても……ごめんなさい、姉様、ごめんなさい……」
彼女は少女のように泣いていた。
手で覆われたその目から何筋も、透明な涙が流れていく。厚く塗られたファンデーションが水に溶け、木の枝の形に跡を形作っていく。口元に刻まれた皺は唇を噛み締めることで深さを増した。
それでも、その涙は子どもの流す無垢なそれだった。
ブラックの姓を捨てて以来会うことのなかったその人物から梟便が届いたのは、娘夫婦の葬儀が終わり、ゴドリックの谷にある新居に身を寄せたすぐ後のことだった。アンドロメダは遺された小さな孫息子とたったふたりそこに住むことになっていたが、元騎士団のメンバー達が忙しい合間を縫って入れ替わり立ち替わり訪ねるその一軒家から話し声の絶えることはあまりなかった。
しかし英雄となった元騎士団メンバー達は多忙を極めている。そうしてぽっかりと静まり返ったある日、見事な毛並みの梟が窓から飛んでその手紙を運んで来たのだった。
空の向こうから優美な翼を直線にして、真っすぐこちらへ向かう梟を見て、アンドロメダはその主が誰であるのか理解した。その一週間後、短く了承の旨を記した返信を持ちその梟は再び空へ飛んでいった。
ぱちん。
唐突に、玄関近くで姿現しの音が聞こえた。アンドロメダは眠ったばかりの孫を窺い見る。幸い起きなかったようだ。アンドロメダは扉を開けて彼女を迎え入れる。
「ようこそ……ミセス・マルフォイ」
「その、ごきげんよう」
ぎこちない笑みらしきものを口の端に浮かべて、ナルシッサ・マルフォイは優美な挨拶をした。
「座っていて、今お茶を淹れるから」
「ミセス・トンクス、私、紅茶の葉を……持って来たのよ。よくうちで、飲んでいた銘柄の」
「ブラック家御用達のあの? まだ、やっていたのね」
「ええ、香りも変わらないわ。無理にとは、言わないけれど」
「いえ、喜んで頂くわ」
まだテディは眠っているようだ。窓際の木肌のテーブルに置いたカップに茶を注ぐと、小さな家に似つかわしくない上等な香りが広がる。ナルシッサは小さな窓から外の風景を眺めているようだった。この小さな新居には元々老いた魔女がひとりで住んでいたらしく、バーベナやローズマリー、バラなどの花々が雑多に植わっている。アンドロメダは来年はそこに水仙の球根を埋めようか迷っていた。
向かい側の痩せて尖った顎が、骨ばった綺麗な手に乗って横を向いている。アンドロメダは強張った舌を強引に動かし、随分と呼ぶことのなかった彼女の名前を呼んだ。
「ハリーから、手紙が来た?」
「ええ、クリーチャーが危篤だって」
「本家に仕えていた屋敷しもべね、もう随分と会ってないわ」
「ミセス……アンドロメダは、見舞いに行った?」
「いいえ。ナルシッサ、あなたも?」
「行く理由も、権利も、余裕もないわ」
「あなたは……それを口実に、私と話をしに来たのね」
ナルシッサは水色の目を彷徨わせ、小さく肯定を口にした。
二人はぎこちないながらも沢山の話をした。
離れていた空白を埋めようとするかのように、それぞれに過ごした年月の話をした。一番敏感な場所だけはお互い慎重に避けて通った。そこに触れてしまったらどうなるか二人には見当も付かなかったからだ。
話の中でアンドロメダが驚いたのは、夫であったテッドのことを妹が知りたがったことと、十七で死んだ従兄弟の墓が存在することだった。
「伯母様は、彼の死を認めていないんだとばかり」
「最終的には父様が押し切ったのよ。空っぽでも、無いよりましだって。今は私が管理してるわ」
「空っぽ? 遺体が無いの?」
「見付からなかったのよ」
ナルシッサはそう言ってショートブレッドを一口齧った。アンドロメダは冷めかけの紅茶を飲み込む。
「シシー……その、シリウスは、知ってたの?」
「その頃にはもう家を捨てていたもの、知らないと思うわ。知っていてもきっと、来なかったでしょう」
「そう、だったのね」
二人の沈黙を破ったのは赤子の泣き声だった。テディが起きたのだ。
「ドロメダ、その子……」
「孫よ。ちょっと待ってて」
アンドロメダは赤子をあやす。抱きかかえミルクを与えるとテディは再び眠りについた。今日はピンク色に落ち着いたらしい柔らかな髪を撫でつむじにキスを落とす。
「お茶、冷めてしまったわよね。今淹れ直……」
そうして振り向くと、ナルシッサは「ごめんなさい」と繰り返し泣いていたのだった。
バーベナの花が風にそよいでいる。そこはブラック家の別荘地だ。今はもうそうではないだろう。私は姉妹と従兄弟達と子供だけでそこにいる。一面に敷き詰められた花々の真ん中に座り込んだ少女は泣き声を上げている。何が気に入らなかったのか、とめどなく流れる涙が止む気配はない。はちみつ色の髪が風に巻き上げられて曇り空を彩っている。淡いパープルのワンピースは袖と胸元がぐっしょりと濡れて濃い灰色に変わっている。妹よりも幼い従兄弟達が不安そうにその顔を覗き込む。兄のほうが乱暴に毟ったバーベナを差し出したが、妹は見向きもせず泣き続けている。なだめ透かしても抱きしめてキスをしても妹は泣き止まない。万策尽きた私達は傍らの姉と顔を見合わせている。
「どうしたもんかねぇ」
私と同じ形の眉を下げ困ったように笑う、姉の顔がアンドロメダの脳裏に浮かび上がった。
その姉も、既にこの世にいない。
アンドロメダは泣きじゃくる妹の頬にそっと、手を伸ばした。
「いない?」
「ええ、いません」
聖マンゴ魔法疾患傷害病院の受付は無感動にそう告げた。
「〝 〟という名前の癒者は──正確には在籍していましたが、十年以上前にこの病院を辞めています」
「辞めた理由は?」
ハリーの声が情けなく震える。尋常でない様子に受付が困惑しているのは分かっていたが、それどころではなかった。
「その……死亡したからだそうで」
「どうして死んだか分かりますか?」
受付は一瞬の逡巡の後、ハリーの額をちらりと見てそう言った。
「記録には、〝死喰い人の残党に殺された〟と」
ハリーは走っている。
金色のスニッチを追いかけるように、ハリーはひとつの目的に向かってただ急いでいた。自分の呼吸音が煩い。焦った受付の声を背に一足飛びで階段を駆け上がる。その物理的な距離が、息を切らす自身の体が、口々に話しかける肖像画達が、何もかもが煩わしい。早く、早く辿り着かなければ。
二階、生物性傷害長期療養病棟。その扉を躊躇いなく開く。ハリーの目指す場所はその病室に存在するひとつの窓だ。一見何の変哲もない窓。木枠越しに、魔法で映し出された空が安穏と広がっている。ハリーは息を整え杖を取り出す。癒者に教えられた通り、リズムを付けて窓を叩く。が、開かない。
その窓枠は沈黙している。
もう一度、ハリーは試す。
「……うそだ」
震えた声が漏れる。窓は窓のまま姿を変えない。前来たときまでは黒いヴェールに変化した筈なのに。レギュラス・ブラックの病室へと続く入り口だった筈なのに。
その入り口は死んでいた。
ハリーは最後にもう一度だけ試す。カラリと音を立てその手から杖が落ちる。手が震えているのだ。ハリーは震えながら握り拳を作って窓を繰り返し叩く。
「レギュラス! そこにいるんだろう、レギュラス!」
「クリーチャー! 開けてくれ、レギュラス! レギュラス・アークタルス・ブラック!」
「ポッター様?」
後ろから両手を掴まれた。男性の声だ。担当の癒者だろう。
「この中に入れないんだ!」
叫びながらハリーは振り向く。
「〝この中〟?」
ハリーの動きを封じていたのは見知らぬ癒者だった。
「え」
「ハリー・ポッター様でいらっしゃいますよね? お会いできて光栄です。突然慌てて病棟に入って来られたので驚きましたよ。どうされましたか?」
ハリーの杖を拾い上げ差し出しながらにこやかに話し、彼は英雄ハリー・ポッターに初めて会った人々と同じ典型的な応対をしていた。
「どうしたも、こうしたも……」
ハリーは今一度窓を見た。
何の変哲もない窓だ。枠の中にガラスが嵌って、そこに簡素な空が映し出されている。
「窓がどうかされましたか?」
「つい最近まで、ここは空間拡張で別の部屋の入り口になってた筈なんだ」
「病室の入り口に?」
聞いたこともない、と癒者は言った。ハリーの推測がじわじわと確信に変わっていく。
「その中には寝たきりの人間がひとりと、世話をする屋敷しもべ妖精が一匹。僕も頻繁に出入りしてた」
「それは……」
「たぶん、何か勘違いをしていたんだと思うんです。お騒がせしてすいません」
ハリーは英雄らしく笑顔を作って癒者の言葉を遮った。
目を細めて窓に魔法で映し出された空を眺める。さっきまでロンドンらしく灰色をしていたそれはいつの間に、雲一つない群青に様相を変えていた。
陽光がガラスを通り抜け、ゆらゆらと格子柄の影を落としている。
ハリーは木枠のささくれにそっと指を這わせた。
「……クリーチャー」
老いた屋敷しもべの名前を呼ぶ。返事はない。
──当然だ、彼はこの先の病室にいるのだから。
いくら屋敷しもべがハリーを主人と認識していなくとも、魔法で拘束された主従関係は絶対だ。どれだけ衰弱していても生きている限りはハリーのもとに現れただろう。しかし彼はあまりに衰弱していた。元々の老衰に加え、十七年越しに再会したレギュラスへの献身的な振舞いはその死期を早めるに十分過ぎた。
ハリーがいくら待っても彼が現れることはなかった。
あの湖を訪れたハリーはレギュラス・ブラックの本当の死体を探していた。ハリーが引き上げる亡骸をレギュラスは一体ずつ丹念に確認していった。生白い亡者の成れの果てが中心の孤島を覆っていく。やがてぬめついたそれらはうず高く積み上がったが、終ぞレギュラスの死体が見つかることはなかった。
「信じられない」
レギュラスはぐるりと首を回してそう言った。
「僕も信じられなかった。でもここにあなたの遺体が無いならきっと、そうとしか考えられない」
「それなら……僕の体はどこに?」
そこに行かなければ、と小さく続ける。灰色の目が見開いて、真っ黒い水面を虚ろに見つめ揺れていた。
「聖マンゴ魔法疾患傷害病院に」
ここに彼は、いるのだ。
猶も訝しげに窓を調べようとする癒者を何とか言い包め、ハリーは聖マンゴを後にした。
ここに空間拡張で別の部屋を作るなんてありえない、とハリーを聖マンゴの出口まで送り届けた癒者は言った。確かに少し考えればわかることだ。医療施設である聖マンゴに、ホグワーツみたいな大がかりな仕掛けがある筈ない。
「僕の兄じゃあ、あるまいし」
そう癒者はぽつりと呟いた。
「兄がいるんですか?」
「死んでしまいましたけどね」
「え?」
「ではポッター様、お世話になりました」
そのときにはハリーはもう出口に足を踏み出していた。咄嗟に振り向こうとすると淡い色の瞳が細まり──たしかに見覚えのある目だった──背中をぐいと押されて外へ踏み出す。
そして次の瞬間には、ハリーはロンドンの街中に立ち尽くしていた。
晴れた真昼の雲のような白色に埋め尽くされたベッドにレギュラスは腰掛けている。
白で埋め尽くされているのはベッドだけではなかった。壁、窓、扉、机に、写真やインク瓶に至るまで、この部屋の全ての物は混じりけの無い白に染まっていた。薄っすらと透けたレギュラスの体以外の全てが白色だ。
ここはレギュラスの自室だった。グリモールド・プレイス十二番地、最上階、二つある部屋の、より小さなほう。
凡そ白色に似つかわしくない場所だと、レギュラスは何度目かも分からないことを考え息を吐いた。
勿論ここは現実のグリモールド・プレイスではない。レギュラス自身ですら現実でない。
「十七年か」
長かったな、という呟きは周りの白色に粒子状に散らばり形を失っていった。
「どうぞ──クリーチャー」
控えめにドアをノックしてレギュラスに迎え入れられたのは、懐かしい友人だ。
十七年の間に随分と老いたようだ。しわがれた手が宙を彷徨う。見上げたレンズのように大きな目を更に大きく、掠れた声でクリーチャーは「レギュラス様」と呟いた。
「久しぶり」
自身の半分にも満たない身長の彼をそっと抱き上げる。その目からぽたぽたと透明な水滴が垂れた。レギュラスの視界もじわりと滲む。
「……辛い思いをさせて、ごめんよ」
「坊ちゃま、レギュラス様、そんなことを仰らないでください──クリーチャーは幸せでございました。最後まで、他でもないレギュラス様のお役に立てて、屋敷しもべにとってこれ以上の幸せはございません」
「それでも大事な友人に、辛い思いをさせたことは変わらない」
クリーチャーはとうとう声を上げて泣き出した。レギュラスは彼が床に突っ伏そうとするのを制して、真っ白なベッドの端に腰掛けさせる。床に膝を付き抱き寄せると彼は更にしゃくり上げ始めた。レギュラスは背中を優しく叩く。
「クリーチャー、クリーチャー、ここで君をずっと待っていたんだ。本当にごめんよ、ありがとう、クリーチャー」
クリーチャーは徐々に落ち着きを取り戻していった。レギュラスが床に座っていることに気が付いて飛び上がる体を制止して隣に腰掛けると、彼は所在なげに宙に浮いた足を揺らしずびずびと鼻を鳴らす。
「坊ちゃまは、ここでずっと、待っておられたのですか?」
「ああ。実は君だけを待っていた訳じゃ、ないけど」
「その人はまだ来ないのですか?」
「君が来たことだし、もうすぐ来る筈だよ──ほら」
唐突に、ドンドンと外側から扉を叩く音が響いた。
「レギュラス! そこにいるんだろう、レギュラス! クリーチャー!」
「無駄ですよ。僕は君の入室を許可していない」
「ハリー・ポッター?」
「ああ。洞窟まで僕を迎えに行って貰ってたんだ。彼には色々とお世話になったけど……だからと言って入室までは許可してないんだけどな」
クリーチャーの問いにレギュラスはそう答えた。クリーチャーが困惑の表情を浮かべる。
「ああ、ハリー・ポッターじゃなくて、僕が待ってたのは──」
出し抜けに白い扉が開き、部屋の中にレギュラスが入ってきた。少し遅れて、同じ人物がもう一人。
「こんにちは」
レギュラスはベッドから立ち上がり手を広げて彼らを出迎える。しかし次の瞬間には彼らは跡形もなく消えた。レギュラスは三人が溶けこむのを暫く目を閉じて知覚していた。あまり気持ちのいいものではなかった。目を開けると、クリーチャーは半端に口を開き放しになっているのがわかってレギュラスは少し微笑む。
「僕が待っていたのは彼らだったんだ。ちょっと、魂が割れてしまってて」
「……レギュラス様の、魂が?」
「さっきまでの僕と、洞窟にいた一人と、一番自由に動けていたもう一人。たぶん、分霊箱の作り方は知っていたし、遠回しにだけど二人殺したし、それでいつの間にか割れてしまったんだと思うんだけど……実のところ、自分でもよく解ってなくて」
「お体は大丈夫なのですか!?」
悲鳴のような声を上げて、クリーチャーはレギュラスの体をぺたぺたと触って確かめた。今更、体の心配をされてもとレギュラスは苦笑する。むしろレギュラスの状態はより改善されている。自身の右手を目の前に翳して観察した。さっきまで薄っすらと透けて向こう側が見えていたレギュラスの体はすっかり、まるで本当にそこに存在するかのように現実味を増している。
「平気だ。ありがとう、クリーチャー」
レギュラスはクリーチャーの頭を撫でた。
「とにかく、これでもう待つ人は誰もいないんだ。君さえ良ければ、そろそろ出発したい」
「……しかし、クリーチャーはここからの出て行き方を存じ上げません。ここでは姿現しもできませんし、そこの扉から出て行けば戻ってしまいます」
クリーチャーは小さくそう言って先程自分が入ってきた扉を指差した。クリーチャーの言う通りだ。扉から出て行くが最後、ハリー・ポッターが自分達の死体を見付け、〝立派な〟葬儀を執り行うことになるだろう。
「確かに、戻るのは困るなぁ」
自分達のその死体がどれだけ綺麗であってもそれは嫌だと思った。外に死体を晒すのはレギュラスにとって我慢ならないことだ。自身の与り知らない平和な魔法界に、無責任な視線を受け止める以外の手段を持たない死体など、誰が差し出すものか。
「でも大丈夫、簡単だ」
そう声を掛け、クリーチャーの指差した扉と反対方向へと歩き出す。
レギュラスは白い窓を開けた。
柔らかな風が室内に吹き込む。白いカーテンがゆらゆらと揺れていた。
レギュラスは窓際に目を向ける。そこには花瓶がある。バーベナの花々が活けられている。その花も真っ白だった。水は入っていないようだ。安っぽいガラス製のそれにはすっかり靄がかった汚れが付き、底付近には大きなひびが見て取れた。水が入っていないのはそのひびから流れ出してしまったせいだろう。
レギュラスはおもむろに花瓶を手に取り、中身を窓の外へ放った。
群青を背景にして赤、紫、白、鮮やかな花々が軌跡を描いて飛んでいく。艶やかな残像が灰色の目に焼き付いた。
ひび割れた花瓶は窓際に戻した。もう一度窓の外を窺い見ると、花々はどこかへ消えて、代わりに青い空がどこまでも広がっている。
レギュラスは自分が笑顔を浮かべていたことに気が付いた。白い窓枠に片足を掛ける。
「クリーチャー」
手を差し出した。
クリーチャーはぶるぶると震える手を伸ばした。見開かれた両目から雫が零れ落ちる。
縺れる足で一歩、二歩と進んで──堪らず崩れ落ちるその前に、レギュラスはその手を掴んだ。
「一緒に行こう、クリーチャー」
窓から吹き込む風に黒い髪が掻き混ぜられている。クリーチャーが窓枠の上に乗ったのを確かめて、レギュラスは箒で飛び立つように地を蹴った。
体が風に煽られる。
繋いだ手を離さないように強く握った。
風圧に負けまいと目をこじ開ける。
水色の空だ。
空だ。
浮遊感、浮遊感。