優等生から不登校になった私に起きたこと

部活と受験対策びっしりの進学校に入って

――つらかった時期に支えになったことはありましたか?

家庭環境が悪かったとお話しましたが、ひとつだけ父がしてくれたことで、とてもうれしかったことがありました。

不登校でひとり暮らしをしていたとき、父から突然メールが届いたんです。そこには、「自分はとある資格を取得するために勉強をがんばることにした」という決心がつづられていました。

私の不登校とは関係のない内容でしたが、それを読んで不思議と気持ちが楽になりました。

私は親の精神状態が自分のせいで悪くなっていくのがつらかったんです。でも、父は父で自分の人生を生きようとしているということがわかったんですね。だからすごく救われたんです。

それから、大学4年のときに不登校・中退者のための個別指導塾「キズキ共育塾」で講師のアルバイトをしました。不登校の子どもたちが、もう一度学び直しをしたいとその塾にやってくるんです。

自分でも、人の役に立てる

私は不登校経験者だし、昔から勉強だけはできたから、その子たちの力になってあげることができたと思います。私を慕ってくれる子もいました。

そしてそういう場があったことで、私自身も救われたんです。「自分の経験が誰かの役に立つんだ」と実感し、少しずつ強くなれたように思います。

――これから先、やってみたいことはありますか?

「これをしたい」という明確なことはないんですが、私自身が「子どもは学校に行くべきだ」という固定観念にとらわれて苦しくなってしまったので、そうした固定観念を脱して自由に生きていきたいな、と。

じつは大学卒業後、就職した会社で上司のひどいパワハラにあって、再びひきこもってしまったんです。

私としては、不登校から大学進学、そして就職と、「復帰コース」を走っていたはずなのに、またドロップアウトしてしまったことにひどく絶望しました。

しかし、その会社を退職したあとに、今働いているベンチャー企業に就職したのですが、そこには「こんな大人っていたんだ」とびっくりするくらい、社会の常識や枠組みにとらわれていない人が多かったんです。

そういう世界があり、そういう大人がたくさんいることを知っていたら、不登校にならなかったかもしれないな、と思うほどでした。

「私もこの人たちといっしょに何かしたい」と思い、毎日をすごしています。

なんども絶望して、「社会のレール」の外に飛び出したら、そこにやっとおもしろい世界を見つけた。私の場合はそうでした。

親や学校が子どもに教えている世界ってほんのわずかで、その外にはおもしろいものがたくさんあるかもしれない。だから「人生は捨てたもんじゃない」って思います。

私は今、ようやく人生が始まったような気がしています。 

――ありがとうございました。

(聞き手・茂手木涼岳/編集・吉田真緒/撮影・矢部朱希子)

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  • NO NAME19c9c6cb8d8b
    私も同じように、学校に行けなくなったり、再び入学したとこを卒業して、今度は頑張ろうって思い入った会社を辞めてしまったので、
    似たような部分があるのかななんて思いました。
    でも、読みながら、学校に行けないのは甘えとか、環境のせいにしてるのではとか
    人から思われそうだと思ったりしました。
    この記事の人は、今は安定した環境を見つけたといっていたので、いいなぁと思いました。自分もいつか
    安心できる居場所を見つけれたらいいなぁと思いました。
    up202
    down11
    2018/12/16 17:58
  • NO NAME80a2d2f12a40
     30年前になりますが、父親の死がきっかけで中学で孤立するようになりました。勉強は嫌いではなかったし、塾にも通っていたから成績は悪くはなかったのですが、学校の同級生と話が合わない。なので塾だけ通っていたのですが、次第に陰口を叩かれるようになり、塾にも行かなくなりました。

     知り合いが高松高等予備校の現在の理事長に相談したところ、受け入れてもらえました。当時から理事長は、お前のような子供の受け皿を作るのが夢だ、とおっしゃっていました。10年くらい前でしょうか、フリースクールの村上学園高等学校ができました。

     自分はいま歯科医師をしています。理事長に拾ってもらえなかったら引きこもりのままだと思います。不登校に理由なんてないと思います。中学の同級生と社会人になってから交流したことがありましたが、彼らとは死ぬまで平行線だな、中学時代の自分は本当に話が合わなくて孤立したのだなと感じました。
    up136
    down2
    2018/12/17 07:08
  • SO000311af48dc
    もっと自由な進学ルートがあっていいと思う。学びたいのなら通信やインターネットや自宅学習でも十分に補える。苦しい子供がいるのなら、その子を無理やり既存のレールに乗せるのではなく、別の進み方を一緒に考えてあげるのが教育の在り方なんじゃないのかな。
    up123
    down8
    2018/12/16 19:53
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