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「USB4」でカオス状態が解消される!?「USB」の気になるアレコレを徹底解説!

USBの仕様策定を行う業界団体のUSB Promoter Groupが次世代のUSB規格となる「USB4」を発表した。いっぽうで、「USB 3.2」の仕様により従来のUSBの規格名が変更されるなど、なんだかわかりづらくなっている。そこで、最新情報に基づいて、USBの基礎を整理しておこう。

今や、周辺機器の接続やスマホの充電などに欠かせないUSBだが、規格が多数あって混乱しがちだ

今や、周辺機器の接続やスマホの充電などに欠かせないUSBだが、規格が多数あって混乱しがちだ

USBの基本をおさらい

「USB(Universal Serial Bus/ユニバーサル・シリアル・バス)」は、パソコンを代表とする機器に、周辺機器を接続するための規格のひとつだ。データ転送を行うほか、充電にも利用される。充電に関してはより話が複雑になるので、まずはUSBの規格名と、対応するデータ転送速度について整理しておこう。

USBのバージョンごとの最大転送速度(理論値)を下表にまとめたので、参照していただきたい。表中、「USB 1.0」と「USB 1.1」の製品は、すでに市場にはほとんど出回っていない。また「USB 3.2 Gen 2×2」対応製品は2019年後半以降に登場予定であり、「USB4」対応製品はさらに先となる。

本稿執筆時点、市場に製品として存在するUSBの規格は、「USB 2.0」「USB 3.2 Gen 1」「USB 3.2 Gen 2」の3つだ

USBの規格をとてもわかりづらくしたのが、2度にわたる名称の変更にある。たとえば「USB 3.0」は、「USB 3.0」→「USB 3.1 Gen 1」→「USB 3.2 Gen 1」と名前が変わった。名前が変わっただけなので同じものと考えてさしつかえないのだが、現行製品のパッケージ等には「USB 3.1 Gen 1(USB 3.0)」といった表記があって混乱しがちだ。

今後は、「USB 3.2 Gen 1」「USB 3.2 Gen 2」「USB 3.2 Gen 2×2」に統一されるはずだが、しばらくは混在するので製品を選ぶときには注意したい。ちなみに「Gen」は、Generation(=世代)の略だ。「Gen 2×2」は、「Gen 2」(データ通信の経路が送受信で1組み)を2つ組み合わせて(経路を2組み使って)いることを意味する。これを「デュアルレーン動作」と呼ぶ。

もうひとつ理解しておきたいのは、「USB 3.2」では規格と転送速度を識別するためにブランド名が与えられた点だ。上表にあるとおり、「SuperSpeed USB」「SuperSpeed USB 10Gbps」「SuperSpeed USB 20Gbps」の3つがあり、今後USBのロゴマークにはこの名前が採用される。

USB端子の形状について知る

USBでもうひとつややこしいのが、複数あるUSB端子の形状だろう。こちらも、きちんと整理しておきたい。

USB端子の形状には、大きな分類として「Type-A」と「Type-B」があり、小型の機器用にType-Bのバリエーションとして追加された「Mini USB」と「Micro USB」、そして最新の「Type-C」がある。なお、iPhoneで使われている「Lightning」はアップル独自の規格であり、USB機器とも通信ができる仕様ではあるがUSB規格ではない。

●「Type-A」と「Type-B」

USBでは、接続されるパソコンなどの親機側を「ホスト」、接続する周辺機器などの子機側を「デバイス」と呼ぶ。基本的に、ホスト側に使われる端子が「Type-A」で、デバイス側が「Type-B」となっていて、それぞれに対応するUSB規格の違いから2種類ずつある。

なぜ、ホスト側とデバイス側を異なる形状にしたのか。それは、機器のトラブルを回避するためだ。というのも、USBはホスト側からデバイス側へと電力を供給する仕組みがある。このとき、誤ってホスト同士を接続すると両方が電力を供給しようとしてしまい、機器やケーブルが過負荷によって何らかの問題を引き起こす可能性がある。両端の端子の形状を変えることで、これを防止したわけだ。

USB 2.0 Type-A
おなじみの平形で、端子の中にある絶縁体部が白色になっている。表裏(上下)があり、差し込む方向が決められている

USB 2.0 Type-B用途は少ないが、プリンター等で使用される。こちらも、端子の中にある絶縁体部が白色だ

USB 2.0 Type-B
用途は少ないが、プリンター等で使用される。こちらも、端子の中にある絶縁体部が白色だ

USB 3.0/3.1 Type-A
USB 2.0 Type-Aとサイズは同じだが、絶縁体部が青色なので区別できる。こちらも、差し込む方向が決められている。「USB 3.2 Gen 2」まで対応
※USB 3.0/3.1は旧名称だが、混乱を避けるために現行製品の名称に準じている(以下同)

●「Mini USB」

2000年に標準化され、デジタルビデオカメラやデジタルカメラ等で使われてきた。はじめにMini-A(耐使用回数約1000回)が登場し、その後改良版のMini-B(耐使用回数約5000回)へ移行。現在はMini-Bが主流だ。

Mini USB 2.0 Mini-B途中に段のある特殊な形状で、USB 2.0規格に対応する

Mini USB 2.0 Mini-B
途中に段のある特殊な形状で、USB 2.0規格に対応する

●「Micro USB」

Mini USBの耐久性問題を克服するために、形状を変えて2007年に登場したのがMicro USBだ。耐使用回数は約1万回。USB 2.0規格に対応し、スマホやタブレット等の端子に使われている。こちらもはじめにMicro-Aが登場し、改良版のMicro-Bへと移行。現在はMicro-Bが主流だ。

また、USB 3.0/3.1規格に対応するMicro-Bもある。より大容量のデータ転送を必要とする外付けハードディスク等で利用される。

Micro USB 2.0 Micro-BAndroid端末をはじめ、小型USB機器の充電端子として長らく使われている

Micro USB 2.0 Micro-B
Android端末をはじめ、小型USB機器の充電端子として長らく使われている

Micro USB 3.0/3.1 Micro-B台形と長方形を組み合わせた独特の形状をしている

Micro USB 3.0/3.1 Micro-B
台形と長方形を組み合わせた独特の形状をしている

●「Type-C」

「Type-C」は、「USB 3.1」で制定された新しい端子の規格だ。従来のType-A、Type-B、Mini USB、Micro USBといった形状の違いによる混乱を払拭することを目的のひとつとして登場した。ホストとデバイスを区別する必要がなく、ケーブルの両端に同じType-Cを使って機器同士を接続できるようにしたのも大きな特徴だ。

また、大容量データの転送、より大きな電力供給にも対応。加えて、ディスプレイへの出力やアナログオーディオの入出力などにも対応し、将来も見据えた拡張性の高い設計となっている。

データ転送に関しては、「USB 3.2 Gen 2(10Gbps)」のデータ通信経路を4組み使うことで、最大40Gbpsまでのデータ転送が可能だ。そのため、「USB 3.2 Gen 2×2(20Gbps)」と「USB4(40Gbps)」機器に採用されるのは「Type-C」のみとなる。

ただし、「Type-C」のすべてが「USB 3.2 Gen 2×2」と「USB4」のみに対応するものではないことを理解しておきたい。「Type-C」はあくまでも端子の形状を指すものであり、「USB 2.0」「USB 3.2 Gen 1」「USB 3.2 Gen 2」対応の「Type-C」もある。

USB Type-C
端子は楕円形で、表裏(上下)の区別なく接続できる。1本のケーブルで、さまざまな機器をつなぎ替えられるようになることが期待されている

USBは後方互換性を保持

USBの規格はバージョンアップごとに機能を向上してきたが、つねに後方互換性を保持している。つまり、異なるバージョンの機器同士でも接続を可能とし、データ通信ができるということだ。

たとえば、パソコンが「USB 3.2 Gen 2」対応の場合、外付けハードディスクが「USB 2.0」でも接続して利用できる。もちろん、ホストとデバイスの規格が逆でも問題ない。このとき、接続に利用するUSBケーブルも互換性があるので、「USB 2.0」と「USB 3.2 Gen 2」いずれのケーブルも端子の形状さえ合っていれば利用できる。

ただし、注意点がある。データ転送速度は、下位バージョンに依存するという点だ。上の例で言えば、データ転送はできるのだが、転送速度は「USB 2.0」の最大480Mbpsが上限となる。たとえホストとデバイスが「USB 3.2 Gen 2」対応でも、ケーブルやUSBハブ、変換アダプターのひとつでも「USB 2.0」が混在すると、最大480Mbpsでしかデータ転送できないことを理解しておこう。

新しくUSB機器やケーブルを購入するときは、端子の形状もさることながら、対応するUSBの規格にも注目したい。

案外見逃しがちなのが、USBハブだ。「USB 2.0」対応のUSBハブを利用すると、そこがボトルネックになってしまう。高速なデータ転送を実現するには、USBハブにも留意したい(写真は「J5 create USB3.0対応 4ポートUSBハブ」)

「USB4」について知る

最後に、新たに発表された「USB4」の概略を紹介する。今回の発表は概略のみで、詳細な仕様は2019年半ばに公開される予定だ。

今回の発表内容によると、「USB4」は「Thunderbolt 3」の仕様をベースとすることにより、最大40Gbpsのデータ転送速度を実現することになる。また、同時に2台の4Kディスプレイまたは1台の5Kディスプレイへの出力も可能になるはずなので、接続ポートの汎用性が高くなる。

「Thunderbolt 3」は、インテルとアップルが共同開発したデータ伝送技術のこと。元々USBとの互換性があり、「Thunderbolt 3」対応機器ではUSB機器を接続して利用できる。また「Thunderbolt 3」の端子には「USB Type-C」が採用されている。「Thunderbolt 3」を搭載する代表的な例には、アップルの現行「Macbook Pro」などがある。

■変更履歴:初出時に、「iPad Pro」を「Thunderbolt 3」搭載と記載していましたが、正しくは「USB 3.1 Gen 2」(発表時)でした。お詫びして訂正します。該当個所は修正済みです。 [2019年4月9日 16:30]

「Macbook Pro」は、4つのType-Cポートを装備。USB変換アダプターを利用することで、USB機器を接続して利用できる

【まとめ】将来的には現在のカオス状態が解消される!?

USBは元々、機器ごとにポートやケーブルを使い分けなくても済むようにと開発されたものだ。登場した当時はとても便利に感じたものだが、時代の推移とともにバージョンと端子の形状が増え、とてもわかりづらい方向へと向かってしまった。今や、USBケーブル1本を購入するにも諸々の対応確認が必要だ。

しかし、「USB4」が普及すれば、そうしたカオス状態から抜け出せるかもしれない。実現はまだ先になるだろうが、大いに期待したいところだ。

それまではカオス状態が続くので、今回解説した基本をおさらいしておき、USB機器をしっかり(無駄なく最大性能が引き出せるよう)使いこなそう。

小野均

小野均

パソコンからモバイルまで、ハード&ソフトのわかりやすい操作解説を心がける。趣味は山登りにクルマという、アウトドア志向のIT系フリーライター。

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