日本の歴史のなかにおいて最も悪質で被害が甚大であった歴史の捏造はなんだったのでしょうか。私は「古事記」と「日本書紀」の編纂であったと思っています。これに比べたら、木村鷹太郎も竹内巨麿も可愛いものです。

 

秦の始皇帝の焚書坑儒はよく知られていますが、実際には壁に塗り込んだりして主たる文献は焚書で全滅することを免れていて、始皇帝以前の経書も史書も後世に伝わっています。1000冊焼いても1001冊目を焼き洩らせば、残った書籍が筆写されて後世に伝わるのです。

 

ところが「記紀」以前の文献は日本には残されていません。「古事記」は、稗田阿礼が帝紀、先代旧辞を誦習したものを太安万侶が筆記したとされていますから、「古事記」以前に天皇家には帝紀、旧辞という歴史書があったことが分かります。その他、諸豪族にも家に伝わる歴史書がありました。

 

「記紀」が選されると、帝紀と旧辞は消滅し、諸家の記録は政府が編纂したものと異なる歴史を伝えることは許されないとして、朝廷に差し出すように命ぜられて処分されています。


 どこをどう探しても、日本には「記紀」以前の歴史書は残っていません。帝紀も旧辞も諸家の記録も、見事なまでに焚書されているのです。

 

「記紀」は天皇家にとって一方的に都合の良い内容になっています。「記紀」を読む限り、天皇家が日本を支配するのは神が定めた必然になってしまいますし、「記紀」以外に資料がないのですから、誰もが「記紀」の記述を日本の姿であると受け止めてしまいます。


 日本の神を信じる限り「記紀」記述と、天皇家による支配の原理を信じなければならないということになって、謀叛を起こして敗れた天皇個人を廃位の上で流罪にすることはできても、天皇家を潰すことも天皇制を廃止することもできないという国に日本はなってしまいました。

 

21世紀になっても、神武天皇のDNAは男系皇族でなければ継承できない、などと言っている時代錯誤の人間が日本に存在するのも、記述の異なる歴史書を全部焼いてしまって登場した「記紀」の呪縛であるといえます。これほど酷い歴史捏造はありません。

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