旧石器時代の捏造事件が過去にありました。藤村新一氏という、水道メーターの営業をやっていた素人の発掘家がプロになりたくて、埋めて掘ってを繰り返して、最後には東北埋蔵文化財研究所の副理事長になってプロの発掘家になりましたが、その直後に発覚したという事件です。これも金目当ての歴史偽造といえます。

 

藤村氏の偽造は単純幼稚なもので、長いこと露見しなかったことが不思議なくらいですが、露見しなかった背景には、あることへの日本人の期待感が存在していたからだと思えるのです。

 

藤村氏は幾つも偽造者としては致命的なミスをやっています。

 

藤村氏には断層の壁面に歩きながら石器を刺していく癖がありました。そのために石器が等距離で発見されるのです。捏造を疑われる行為でしたが、等距離の法則などと周囲が言い出して、旧石器時代の日本人は優秀だったから、等距離で石器を置いたといった理解になっていきます。

 

藤村氏がひとつひとつ埋めるのが面倒だったのか、幾つかの石器をまとめて埋めたことがありました。旧石器人ではあり得ないことなので露見するきっかけになって当然なのですが、旧石器時代の日本人は優秀だったから、石器をまとめて保管していく知恵があったのだといった話になってしまいました。

 

ひとつの石をふたつに割って作った石器を、藤村氏が距離が離れた別の県に埋めてしまったことがありました。研究の過程で離れた別の県で発掘した石器の破断面がぴったりと一致することがわかりました。これこそ埋めた証拠なのですが、旧石器時代の日本人は優秀だから広い範囲に石器を流通させていたという結論になってしまいました。

 

自分の手の指紋や脂が石器につかないよう、手袋をして埋めるのが偽造者としての常識ですが、藤村氏がそれを怠けて素手で埋めてしまって、石器から脂成分が検出されることがありましたが、その時も奇跡的に残っていた、10万年前の脂が見つかったのは大発見だ、日本の発掘技術は凄いのだと周囲がしてしまいました。

 

旧石器時代で、70万年前で住んでいたのがホモサピエンスでなくても、日本に住んでいれば日本人であり、日本人はそのころからずば抜けて優秀な民族であったとしたい感情が周囲にあって、杜撰な偽造をやっている藤村氏のミスが逆に日本人の優秀さの証明に使われてしまったのです。今も変わらない、日本人の体質を見せつけられているような気がします。

 

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