木村鷹太郎という稀代の歴史捏造家がいます。1870年生まれ、1931年死亡ですから随分と昔の人ですが、著名な学者でありながら歴史の偽造をやり、その目的が金儲け以外であったという珍しい人なので取り上げてみます。

 

木村は帝国大学哲学選科課程を終了後、陸軍士官学校の英語教授を務め、「プラトン全集」を翻訳するなど、40歳くらいまではまともな学者だったのですか、そのあと「新史学」と称して異常な歴史の捏造を始めます。

 

 邪馬台国はエジプトにあり魏使を乗せた船はケルト地方から出港した。

 

 助六とシシリーは同語源でシシリアンは江戸の町奴だった。

 

 ソクラテスは日蓮で、プラトンは日昭だった。

 

 ホメロスの「オデュッセイア」は「平家物語」「太平記」を元に書かれたものである。

 

 日本神話のホムチワケは桃太郎で、桃太郎はムハンマドであり、桃太郎物語が「ハムレット」になった。

 

 アメリカは継体天皇によって建国された。

 

 日本神話のイザナギはギリシャ神話のゼウスである。

 

 日本神話のスサノオはギリシャ神話のペルセウスであり、古代アケメネス朝の首都のスサはスサノオのことである。

 

 日本神話とギリシャ、ローマ神話を比較して、少しでも似たところがあれば同一の物語で日本神話が先でそれがかたちを変えたものであると断じ、思想家や宗教家は少しでも似たところがあれば同一人であるとし、日本人が先でその業績がギリシャ、ローマ人のものと伝えられたのだとして、それを根拠として過去にギリシャやローマに日本人が住んでいた、その古代文明は日本人によって作られ、国は天皇によって作られたとするのが木村の基本的な論法です。

 

 年代が無茶苦茶なことにも、世界文明を作った日本がどうしてこんなに遅れた国になったのかといったことにも、木村は答えません。回答不能な矛盾は無視するのです。

 

 この論法で大量の書籍を刊行するのですが、内容が理解不能なので商業出版からは相手にされず、日本民族研究叢書 日本民族協會という自分が作った組織からのもので、儲かるような性質のものではない上に、これをやり出してから木村は学者としての信用を失い世間からも相手にされなくなります。大損であり、金儲けのための歴史偽造ではありません。

 

 当時の高名な史学者が、「最近の木村君の言動は金銭目当てでなくば狂ったものと断じざるを得ない」と言ったという話がありますが、世間の多くの人達がそのような理解をしていました。

 

 学究として、当時の日本の文化とヨーロッパの文化の落差に愕然とし、大きなコンプレックスを抱え込み、それを解消するために、ギリシャ、ローマ文明も、アメリカ建国も日本人がやったのだと論じることにしたのです。

 

金儲けの為ではなくて、コンプレックスの解消のために歴史の捏造をやったわけですが、今の日本にもそういう人が大勢います。ネットで韓国の歴史を偽造している輩などはその典型であるといえます。

 

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