私の若いころに八切止夫という札付きの歴史捏造家がいました。考証と言えるような内容ではなく、根拠にならなことを根拠にして奇論、珍論を次々と発表していましたが、話題になるので売れるのです。

 

 小説として、仮想の歴史物語として発表していれば問題はないのですが、それでは世間の話題にならないので、歴史の新説として仮想小説程度の内容のものを世の中に出していました。

 

 上杉謙信は女である。

 

 徳川家康は二人いた。

 

 織田信長を殺したのは明智光秀ではない。

 

 天皇家はアラブからやってきた。

 

 平家はペルシャ系。

 

 源氏の兵士は渤海国の残党。

 

 被差別民は唐や百済の奴隷であった。

 

 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は被差別民の出身。

 

 といったもので、オリジナルもありますが、小谷部全一郎や木村鷹太郎や村岡素一郎の珍説からの翻案が多いのも特徴で、そういう点では一貫性のないその場限りの継ぎ接ぎのものであり、評価に値しない上に、被差別民に関する説は差別を助長する危険な要素を含んでいます。

 

 こういう人は説の内容がスカスカの一方で、相手を言い負かす議論だけは上手いのです、この八切止夫と真面目な郷土史家が上杉謙信女性説に関しての言い合いを聴いたことがあります。

 

 郷土史家が、「上杉謙信が深く信仰していた神社を婦人病の神だとして女性説のひとつの根拠にしていたが、宮司さんに直接聞いたところそうではないとの証言を得た」、「謙信は少年のころ禅寺に入れられていたが、少女を入山させることがあるのかとその寺に尋ねたが、そのようなことはあり得ないとの返答を得た」、と実際の調査に基づいて批判すると、八切は瞬時に、「昔は婦人病の神だった、宮司は恥ずかしいから嘘を言っているだけ」、「そんなものは寺のPRだ」、と答えて神社や寺の証言を否定してしまいました。

 

 聴いていた人は、八切が郷土史家を言い負かしたと受け取ったことでしょう。

 

 まともな歴史研究者は怒っていましたが、この種の歴史捏造はやって書籍を売った者勝ちであり、まともな歴史研究者が怒っても定説のでの反論は当たり前すぎて売れないので、書籍を出版することすらできない状態でした。

 

 歴史を捏造しているまとめサイトが多額の広告収入を得て、南京大虐殺や韓国人慰安婦を否定中傷している書籍ばかりが売れている現状と、同じことが過去にも起きていました。それが日本社会だとしか言いようがない情けないものです。

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