埼玉に目を向けてみよう。「住みたい街ランキング2018関東」で、埼玉県勢トップの8位にランクインしているのが大宮だ。駅東口にはルミネや高島屋が、西口にはそごうなどがあり、東京都心に比べても買い物の利便性は引けを取らない。
そこから5分ほど歩くだけで住宅街にたどり着くことができるうえ、「ナンギン」の愛称でお馴染みの酒場町・南銀座には個性的な飲食店が多く立ち並ぶ。
そんな大宮は、「住みづらい街」ランキングにも埼玉県から唯一ランクインしてしまった。60代になってから大宮に移り住んだという住民の女性が話す。
「東口にある、埼玉県道214号線が渋滞しやすくて困っています。大宮は近くに自治医大さいたま医療センターという大きな病院があるので、何かあった時に便利だと思い引っ越したのに、車だと病院まで30分以上かかることもある。結局、20分かけて徒歩で通院しています」
一般的に、足立区は住みづらいというイメージがあるかもしれない。だが、実はそんなことはないという声もある。
今回のランキングで14位の北千住は駅前の開発の影響で人気が急上昇しており、タワーマンションの建設で物価が高騰。他方、昔ながらの街並みも残ったまま。
新しい地域と古い地域、それぞれの良さを残しつつ開発が進んでいるので、一般的なイメージとは異なり、同じ北千住でも下町のほうは非常に住みやすい街になっているという。『足立区のコト。』(彩流社)著者の舟橋左斗子氏が話す。
「治安の悪さを心配される方も多いと思いますが、犯罪件数を人口比で考えると、23区内で15位と、他の区と比べて多いわけではありません。
私自身も、娘が3歳の頃から一人で買い物に行かせたりしていましたが、危険な目に遭ったことは一度もありません」
最近人気のある街は繁華街なら繁華街、住宅街なら住宅街と、クッキリと線引きがされており、これが住みづらい原因となっている。
北千住は昔ながらの飲食店が繁盛しているような区画がありながらも、自然豊かな公園を抱えた、落ち着いた雰囲気の住宅街も残る。坂も少ないので、定年後の移住を考える価値はある。
前出・長嶋氏が住みやすい街として挙げるのは千歳烏山だ。
「世田谷区のなかではあまり目立つ街ではありませんが、商店街が栄えている、というのは重要なポイントです。二子玉川や自由が丘は大資本による急な開発によってこぎれいだが、画一的な『意識の高い』街になってしまいました。
商店街がしっかりと地元に根付いているような街は、開発が進んでも、急激に街にある店や、住民層が変化することはない。千歳烏山はまさにこの典型です。都心へのアクセスが良好な割に、下町のような温かさもあわせ持っているのです」
住みたい街ランキングは、どうしてもイメージ先行で選ばれた街が多くなってしまう。想像と違ってガッカリする老後を過ごさないためにも、住民の声を聴いて、自分に合った「住みやすい街」を選ぼう。
「週刊現代」2018年8月11日号より