豊臣秀吉による朝鮮侵略は、一方的な侵略行為であり、日本側としては言い訳の余地のない蛮行でした。明を征服するという誇大妄想に取りつかれた秀吉が朝鮮国に道案内をせよと命じて、朝鮮国が断ったら征服の兵をいれたもので、7年に渡る戦争で朝鮮の国土を荒れ果てたものにした上に、大勢の朝鮮の人たちを拉致してきました。
この話が出ると今のネトウヨは、あれは元寇の仕返しだから正しい出兵であったと言います。神武開闢から現代の領土問題まで、日本かやったことや主張は常に正義であり、長い歴史の間で日本はなにひとつ間違ったことはしていない、とネトウヨは狂信しています。
元寇は元の皇帝のフビライの意思によって起こされた遠征であり、モンゴル族の世界制覇のなかのひとつの戦争でした。当時の高麗国は日本征伐に動員されることによって過大な軍事負担に苦しみます。大量の船の建造を命ぜられ、高麗王は我が国には船に貼る牛の皮さえなくなってしまったと嘆いたと記録されています。
しかしネトウヨは、元寇は高麗が元に日本侵略を頼んだことによって起きたと主張することにより、豊臣秀吉の朝鮮侵略は元寇の仕返しだったから正当なものだという説を展開してみせ、朝鮮人は昔から反日思想を持っているので、元に日本征服の応援を頼んだのだと言います。
高麗や中国の記録を持ってきて反論すると、朝鮮や中国は日本を貶めるためであれば、南京大虐殺も従軍慰安婦も捏造する国であるから、朝鮮や中国の日本に関する記録は信用できないと否定し、なんの記録も示せないまま、朝鮮人は反日思想を持っているという自分たちの思い込みを根拠として、高麗が日本侵略を元に頼んだことは絶対に間違いのない史実だとするのです。
中国人や朝鮮人は嘘しか言わないとすることにより、外国の記録を問答無用で否定して、朝鮮人は反日というごく最近に自分たちが作った虚構を、742年前の出来事に適用して、大嘘を史実と言いくるめてしまうわけです。
高麗が元に頼んで日本への攻撃が行われたなどといった話は、戦前の皇国史観でも一切語られることのなかった新説であり、ネトウヨのオリジナルといって良い偽史ですが、これを語ることにより、豊臣秀吉の朝鮮侵略が元寇の仕返しであり正義の戦争になってしまうという、大変に悪辣な要素を持った偽史なのです。