先発の山井にてこずったDeNAは、5回の攻撃前に円陣を組んだ。集めた坪井打撃コーチは、選手に向けてこうアドバイスしたそうだ。
「まだ5イニングある。真っすぐに負けないようにいこう!」。4回まで2安打、6三振。投球の8割は力強いストレートと低めに制御されたフォークだった。的を射た言葉。そしてプロ野球において雲行きの怪しい5回に円陣を組むことは常識だ。ほんの少し前までの僕も、固く信じていた。
「円陣は5回に組め説」に疑問を投げかけ「それじゃ遅い説」を提唱したのが本紙評論家の井端弘和さんだ。那覇市のとある洋食店で、彼はこう言った。
「5回って、ちょうど打順二回りするところじゃないですか。三回り目になると相手も配球を変えてくるんです。だから、組むなら早くしなきゃ。3回。いや2回でもいい。それを見た相手に『何だ?』って思わせられるじゃないですか」
素人なりに反論しようと考えたが、僕の口は動かず、目からウロコがハラハラと落ちるだけだった。2イニング見ただけで円陣が組めるか? そういう考えもあるだろうが、そこを見定めるのがプロのベンチとも言える。
6番から始まった5回を1安打、3三振で切り抜けた山井は、三回り目に入った6回にガラリと配球を変えた。それまでの80球で4球しか投げなかったカーブを、6回は16球で5球も投げた。坪井コーチが「負けないように」と言ったストレートは、わずか3球。序盤は「急」で攻め、最後は温存していた「緩」でしのぐ。その6回は失点した。でも遅いのだ。つかまえられたと思ったら、中日は継投に入るのだから…。
「山井はメッセンジャー、菅野のように苦手な投手になってしまった。3年間、勝っていないからね」。ラミレス監督は残念そうに振り返った。誰もが当然と受け止める「5回の円陣」。組めば打てるかどうかは別にして、本当にそうかと考えてみる。時として定説は覆るのだ。