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【首都スポ】

[大学ラグビー]東京五輪のエースを狙え! 7人制ラグビー明大1年石田吉平に注目

2019年4月20日 紙面から

小刻みなステップからの急加速で相手防御を幻惑する石田(東日本大学セブンズの流通経大戦で)

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 明大が3年連続3度目の優勝を飾ったラグビーの第20回東日本大学セブンズ(14日・秩父宮)。田中澄憲監督(43)からチームの大会MVPに選ばれたのが、ルーキーの石田吉平(1年・常翔学園)だ。昨年10月にはユース五輪(アルゼンチン・ブエノスアイレス)の銅メダル獲得に貢献し、今年3月のワールドシリーズ米国&カナダ大会には高校生ながら代表入り。スーパールーキーよ、来年の東京五輪のエースを狙え! (取材・写真=大友信彦)

 「MVPは、石田!」

 田中監督の声に、円陣を組んだ明大の上級生部員たちは歓声を上げた。東日本大学セブンズ3連覇のチーム最功労者に、入学式から1週間しかたっていない1年生の名を挙げたのだ。

 「予想していたけど、彼のプレーを見てるとワクワクしますね(笑)」(田中監督)

 そこまで期待されたのには訳がある。

 7人制は実績十分だ。昨秋のユース五輪で銅メダル獲得に貢献。今年3月には、高校卒業を待たずにワールドシリーズを戦うシニアの日本代表に選ばれ、米国大会とカナダ大会に出場して2トライ。米国大会のウェールズ戦では、小刻みなステップでDFを幻惑してからの急加速でインゴールへ飛び込む、一級品のトライだった。

 15人制でも活躍を見せてきた。年末年始に大阪・花園ラグビー場で行われた全国高校ラグビーでは、常翔学園のFW第3列でトライを量産し、8強に進出。この3月には、高校日本代表に選ばれウェールズに遠征。こちらではWTBで出場し、初戦のU-19ウェールズ選抜戦でトライ。身長167センチと小柄ながら、体重75キロの筋肉質な体と強靱(きょうじん)な足腰が生み出すステップと急加速は、大柄な外国人選手を相手にすると威力を増す。その源流はラグビー王国にある。

 「細かいステップはニュージーランド(NZ)のネヘ・ミルナースカッダー選手のプレーが好きで、それを参考にして練習して身に付きました。子どものころからスーパーラグビーに憧れていて、中2のときに3カ月、NZのロトルアに留学したんです」

 それが首都圏デビューとなった東日本大学セブンズで、田中監督の言葉通り、見る者をワクワクさせるプレーにつながった。

 この大会では主にSOでプレーし、最初の中大戦では、6分にハーフウエー付近のFKから速攻で約50メートルを独走するビッグラン。後半開始早々にも、PKで自ら仕掛けて突き放しのトライ。48-0で圧勝すると、2回戦の流通経大戦でも前半にトライを決めて36-12の勝利に貢献。準決勝の帝京大戦は途中交代、決勝の東海大戦はフル出場しながらトライは奪えなかったが、鋭く前に出るパワー、視野の広さとパス能力で、味方のトライをアシスト。入学式からわずか1週間で、明大の新年度初タイトル獲得の主役となった。

 「憧れだった紫紺のジャージーを着て試合するのは初めてでしたが、自分らしいプレーは出せたと思います」

 大学デビューの感想は初々しかったが、質問がセブンズのことに及ぶと言葉が大人びてくる。

 「セブンズのやり方など自分に分かることは先輩たちにも伝えました。自分自身、ワールドシリーズで世界のトップと対戦して、自分の今の立ち位置が分かったし、課題も見つかったから」

 ラグビーを始めたのは5歳のとき。「小学生のころは太っていた」こともありFW。常翔学園の野上監督にパスの上手さと足の速さを買われ、高1でBKに転向したが、高3の花園ではFWで、高校日本代表ではBKで大暴れ。というわけで、気になるのは大学でのポジションだが…。

 「どこがいいでしょう?」と田中監督は笑いながら「本人がどこをやりたいかだけど、ボールをたくさん持てるポジションがいいでしょうね」とニヤリ。石田本人は「まだ探っている段階です」と焦って決める様子はない。むしろ新しいポジション像が生まれるかも。

 そんな石田だが、次の活躍は少し先になる。脱臼癖のある左肩を根本的に治療するためだ。今月16日に手術、実戦でのプレーは秋まで見られそうにないが、これも来年の東京五輪を見据えた決断だ。

 「世界を狙える素材ですからね」と田中監督も頼もしげに見つめる。首都圏デビューを飾った逸材の、スケールアップしての帰還を待とう!

<石田吉平(いしだ・きっぺい)> 2000(平成12)年4月28日生まれの18歳、兵庫県尼崎市出身。167センチ、75キロ。明大文学部1年。5歳のとき尼崎ラグビースクールでラグビーを始める。常翔学園3年時にユース五輪銅メダル、全国大会(花園)ベスト8。15人制のポジションは常翔学園ではFW、高校日本代表ではWTB。

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