現段階ではあくまで図案のイメージ段階だ。凹版彫刻に進むの際に、図柄の細部について検討し決定されていくとみられている。植村氏は「基本的には、いずれも素晴らしい紙幣肖像になると期待している」と話す。
■肖像画が1.3倍大きくなる「令和のお札」
「令和のお札の特徴は、肖像画の大きさを拡大したこと」と植村氏は指摘する。1万円札の福沢諭吉は、渋沢栄一へ約1.37倍、5千円の樋口一葉から津田梅子へは約1.3倍、千円札の野口英世から北里柴三郎へも約1.37倍と肖像画の面積が広がっているという。
「紙幣の肖像画スペースを大きく取るのは、国際的な潮流になっている」と植村氏。細かい画線を駆使して、メリハリの効いた緻密な肖像画にすれば、使用者の認識度は向上し偽造防止に役立つ。そのためには、面積をある程度大きくする必要があるからだ。
最近では、パソコンに連動するスキャナー、プリンター、コピー機などの機能向上に加え、写真製版技術が急速に進歩したため、紙幣はカラーで細かい部分まで精密に再現できるようになっている。植村氏は「各国の紙幣の肖像は、ヘアーラインと呼ぶ微細な1ミリ間隔の間に10本以上の画線を彫刻するようになっている」と話す。
植村氏は「米ドル紙幣やカナダドル券のように、券面四周の輪郭枠を省略してでも、肖像スペースを確保してデザインするケースも出ている」と指摘する。米国の100ドル紙幣に描かれているベンジャミン・フランクリンは、かつてと比べ約3.5倍に拡大しているという。「その分微細な画線を多く使用しているため、緻密な画線構成でコピーしにくい紙幣となっている」と植村氏。
日本の場合も大きくしていく傾向は変わらない。1957年発行の5千円券の聖徳太子に比べ、現行の千円券である野口英世の肖像は、面積比で約2.4倍に拡大しているという。植村氏は「同じ岩倉具視の肖像でも51年の500円札よりも、69年発行の方が1.5倍大きい」としている。お札の肖像を、さらに判別しやすくしたのが今回の改革だ。
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