英語しか使えない! さあどうする
2018年9月にお台場(江東区青海)にオープンしたTGGは、海外のホテルやレストランに見立てた空間で、外国人スタッフとの英会話を楽しめる。細部までこだわったセットや衣装は本物さながら。スタッフは英語しか話さないので、本当に海外に来たような気分になる。
取材したのは「英語で体験する5つの生活シーン」という小学生向けのプログラム。レストラン、エアプレイン(飛行機)、クリニック(病院)、ファーマシー(薬局)など9つのシチュエーションで「ハンバーガーとドリンクを買う」「ケガの応急処置を受ける」といったミッションをクリアしていく。所要時間は1時間50分だ。
まずは1階ホールで約20分のガイダンス。日本人スタッフが日本語で概要を説明し「正しい英語を話す必要はありません」とリラックスさせた後、外国人スタッフとのあいさつや自己紹介でウォームアップする。
2階に足を踏み入れると、「ストリート」と「テラス」に面して9つのお店・施設が立ち並び、まさに異国の街並み。保護者はお店の中に付き添えないので、子どもは自力で頑張るしかない。
緊張をほぐす「アイスブレイク」
ちゃんと話せるかな…と不安な子どものため、お店では店員役「クラーク」とは別のスタッフ「エージェント」による「アイスブレイク(緊張をほぐすこと)」がある。ミッションが書かれたカードを子どもに渡して「こう話せばいいよ」とアドバイスし、背中を押すのがその役割。ファストフードでの小学2年生ゆきひらくんとのやりとりは、こんな感じだ。
ゆきひら:ゆきひら。
エージェント:This is for you. What’s this?(カードを見せる)
ゆきひら:サンドイッチ。
エージェント:Yes! Very good. And this?
ゆきひら:ポテト。
エージェント:OK! So, can you say “Can I Have”?
ゆきひら:キャ…?
エージェント:”Can I Have”?
ゆきひら:キャナイハー?
エージェント:”Sandwich?”
ゆきひら:サンドウィッチ?
エージェント:”and Fried Potatoes?”
ゆきひら:フラィドポテーィト。
エージェント:OK! So,go,go,go!
言われたことを繰り返すだけでも、ちょっとずつ発音が良くなっていく。そして何度もほめられて、小さかった声がだんだん大きくなっていく。
ジェスチャーでわかった!通じた!
いよいよカウンターを挟んで、1対1で店員と向かい合う。薬局を訪れた小学4年生のほたるさん。カードに書かれたミッションは「小さな青いタオル」を1枚買うこと。うまくいくかな?
店員:How many towels? One? Five? Ten?
ほたる:…Small towel.
店員は何枚買うのか聞いたが、ほたるさんはわからなかったようだ。しかし店員はそれをとがめずに受け止めると、指で数を示しながら、ゆっくり尋ねた。
ほたる:One towel.
店員:Only one. OK! Very good!
自分の英語が通じた喜びで、ほたるさんの顔がぱっと明るくなった。
日本人のシャイな特性を踏まえて
いろんなお店での会話を見ていて、気づいた。子どもが言葉に詰まって沈黙が続いても、店員は決して急かさない。笑顔のままじっくり待っている。それでもダメならジェスチャーを使って、あの手この手で言葉を引き出そうとする。質問にちゃんと答えられなくても、文法が間違っていても、否定的な反応はしない。会話ができたら「Hi Five!」とハイタッチしたり、大げさなくらいにほめる。
「日本人はどうしても、自分からなかなかしゃべらない。そうした特性を踏まえてスタッフの研修を行っています」と明かすのは、TGG事業開発部の中川恵介さん。「発話をうながすことが大事なんです。話したら、それをほめて伸ばす。文法よりもまず、コミュニケーションを取るのは楽しいことなんだ、と感じてもらいたいんです」
英語を話すのは英会話教室と同じ。違いはどこにあるのだろうか。「よく聞かれます」というTGG事業開発部の加藤貴士さんは、こう例える。「ネイティブと話す英会話教室や、オンラインの英会話レッスンで繰り返し『練習』することはとても大切です。そして留学や旅行など、海外で英語で話すのが『本番試合』とするなら、TGGは『練習試合』の場です」
TGGには30カ国以上から来た、多様性のあるスタッフがそろう。見た目も発音のイントネーションも違う。「練習試合」には最適だ。英会話教室の教師たちからも高く評価されており、教師が生徒をまとめて連れてくる団体利用も増えているという。
取材した日も、英語教育のスペシャリストが来ていた。英語コーチであり、英会話講師のトレーナーも務める金井さやかさん。TGGのコンセプトに感心し、自分の子どもに体験させに来たという。「教室では、講師と子どもという決まった人間関係の中で英語を使います。ここでは新しいシチュエーションで、知らない方と話すことができる。普段習っていることを実践し、チャレンジする場を提供してもらえることが、とてもありがたいですね」
チャレンジの場だから、話せば話すほど自信がつく。楽しみながら自然にそうなるのがTGGの醍醐味だ。
「自分でも英語が伝わるんだなあ」
「すごく楽しかった。また来ようね」と母親におねだりしている小学4年生のほたるさんに、プログラムを終えての感想を聞いてみた。
―楽しかったかな?
「うん。学校の授業はわかりにくいところがそのままになっちゃうけど、ここだと一人ずつ相手をしてくれるから、わかりやすかった」
―日本語を使わずに、よく会話ができましたね。
「わからないときは、相手が伝わるように工夫してくれて。small sizeだったらちっちゃく、large sizeだったら大きく…みたいに手のしぐさで表してくれるから、日本語の説明がなくても、かなりわかる気がしました」
―学校の先生以外で、外国の人と話したことはありますか?
「ないです。だから緊張したけど、通じるとうれしい。自分でも英語がしっかり相手に伝わるんだなあって思いました。私の言ったことを理解してくれて、とてもスッキリしました!」
―海外に行くときも、役立ちそうですね。
「今年の夏休みに、初めて家族で海外旅行に行くんです。飛行機で飲み物を頼むとき、きょう話した言葉を使ってみようと思います。いろいろ話ができたらいいなあ」
将来の夢へ…一歩踏み出す勇気
近い未来だけでなく、子どもの「将来の夢」にとっても、ここでの経験が糧になる。鹿児島県の奄美大島からはるばる来たという小学6年生のらいとくんが、目をキラキラさせていた。
「バレーボールをやっていて、将来は(本場の)イタリアに行くのが夢です。イタリア語も頑張ってみたいけど、まずは英語を…と思って。お母さんにこんなところがあるよと聞いて、東京の親戚に連れて来てもらいました」
「いつもは英語塾で、日本人の先生に習ってます。外国の人と話すのは初めてでドキドキしたけど、ちゃんとした文章じゃなくても、単語だったり、ちょっとしたきっかけでわかってくれるんだなって。伝わってよかったー!と思いました」
コミュニケーションができれば世界が広がる。そのために一歩踏み出す勇気を、TGGは引き出してくれる。スタッフが繰り返していた言葉は「Don’t be shy!」。もじもじしていた子どもたちも、次第に自信に満ちた笑顔で、自然にこう言えるようになっていた。「See you!」
「英語でリアル宝探し!」ゴールデンウィーク特別イベント開催決定
宝探しをしながら英語でミッションに挑戦。英語が苦手な子でも話すのが楽しくなるよう、スタッフが丁寧に対応してくれるから安心です。
◆開催期間:5月3日(金)~6日(月)4日間限定特別企画
◆時間:① 10:00~12:00 ② 13:00~15:00③15:00~17:00
◆対象:主に小学生が対象
◆参加費:一人 5,700円(税別)
※内容の詳細・予約はこちらからご確認ください。
TOKYO GLOBAL GATEWAY
- 営業時間:午前10時~午後6時
- 利用対象:小学生、中学生 ※保護者の入場はできますが、プログラムを受けることはできません。入場の際には入館料が1名につき1,000円(税別)かかります。(親子体験プログラムを除く)
- 予約方法:TGGは完全予約制です。予約サイトの一般利用プログラムからお申込みください。利用日の3か月前より予約可能です。夏休みなどは混雑が予想されます。予約に関する詳細はこちら
- 今回ご紹介したのは一般向けプログラム「英語で体験する5つの生活シーン」です。利用料金3500円(税別)。10歳以下のお子様は保護者の付添が必要です。
- アクセス:東京都江東区青海2-4-32 TIME24 1~3階
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電車の場合 ゆりかもめ「テレコムセンター」駅から徒歩約2分。りんかい線「東京テレポート」駅で都営バスに乗り換えて約8分。