まるで学生になったかのように背筋が伸びた。社会学者で女性学のパイオニア、上野千鶴子さんが東大の入学式で贈った祝辞が興味深い

▼女性や浪人生を差別した東京医科大の不正入試や4年制大学進学率の男女差を列挙。東大で女性入学者の比率がなかなか「2割の壁」を超えない構造にも触れ「社会に出ればもっとあからさまな性差別が横行している。東大も例外ではない」と語る

▼その上で、頑張っても報われない人、頑張ろうにも頑張れない人がいる格差社会の現実を示し「恵まれた環境や能力を、自分が勝ち抜くだけに使わないで」と踏み込んだ

▼女性の生きづらさに声を上げ続けてきた第一人者の言葉は「現状に目をつむってはいないか」と自分にも向けられているようで重い。振り返ってみると、超氷河期だった就職活動では、女性というだけで面接官に興味を持ってもらえず歯がゆい思いもした。採用試験に全敗し「なんで男だけが」と嘆いた友人も

▼25年も前の話だが、不正入試問題が示すように根深い差別はいまだにある。だからこそ、本質を突いた祝辞が心を揺さぶるのではないか

▼「自分の弱さを認め、支え合って生きてください」。上野さんが体験から紡いだ言葉に励まされる。門出のエールを学生がどう受け止めたのか、4年後の答辞を聞いてみたい。(大門雅子)