「すしざんまい」セクハラやり放題 被害女性が涙の告発
新入社員研修・講師役の社員は講義しながら生徒の体を触るハレンチ男だった
「いきなり『胸のサイズは何カップ?』と聞いてきて、私が黙っていると、『触ればサイズがわかる』と言いながら私の胸を鷲摑みにしたんです。セクハラで夢を奪ったあの男と会社を、私は絶対に許せません」
有名寿司チェーン「すしざんまい」(株式会社喜代村)で、悪質すぎるセクハラの実態が明らかになった。涙ながらに告発するのは、昨年4月に喜代村に入社した小林加奈さん(仮名・21)だ。
加奈さんは栄養専門学校を卒業後、喜代村に就職。4月2日から、11人の同期とともに、同社が運営するすし職人養成所「喜代村塾」で3ヵ月間の研修を受けることとなった。悪質セクハラは、その研修初日から始まったという。
「セクハラをしてきたのは、塾で新入社員の研修を担当していたS課長です。初日から、肩に手を回したり、抱き寄せたりしてきて、私が『やめてください』と言っても、『喜代村塾はみんなで仲良くする風習があるから』と笑うだけでした。
その後、セクハラはどんどんエスカレートしていった。実技を学ぶ講義では、S課長は私の顎を摑んで強引に酢飯を唇に塗りつけてきました。包丁の扱い方を教わるときには、後ろから抱きついて、ウエストラインや胸を撫でてきた。言葉のセクハラもありました。『チビ』『デブ』と侮辱してきたんです。『蹴りたくなる尻をしている』と言われたこともある」
セクハラは休憩時間も続いた。
「喜代村塾では、講師も一緒に教室でお昼ごはんを食べる。そのときは最悪でした。椅子に座ったS課長が両手を広げて『おいで』と私を呼ぶんです。しつこく何度も呼ばれ、仕方なく彼の膝の上に座ると、抱きしめてくる。他にも、『あーん』と言いながら、使用したスプーンで食べさせようとしてくることもありました」
セクハラに耐えかねた加奈さんは、4月6日に塾の事務長に相談。しかし、セクハラ行為を謝るだけで、S課長の配置転換などは一切行われなかった。
「私は出社しようとすると頭痛や吐き気がするようになり、病院に行くと『適応障害』と診断されました。そして、4月17日に退職届を出しました。専門学校を出て、『すし職人になりたい』という夢を持って就職したのに、まさかこんな形で辞めることになるなんて……」
その後、加奈さんは弁護士に相談。正式に喜代村に対し抗議した。だが、同社からは、型通りの謝罪と、「慰謝料として50万円を支払う」という回答が届いただけだった。セクハラ事案に詳しい弁護士法人・響の坂口香澄弁護士が言う。
「今回のケースで50万円は、安いと言わざるを得ません。辞めてから再就職までに通常3ヵ月程度かかりますから、少なくともその間の月収と、治療にかかる費用、そして慰謝料を合わせて、150万円は支払われるべきです」
S課長の悪質セクハラについて、会社はどう考えているのか。本誌は4月9日、喜代村の名物社長・木村清氏(66)に築地の本社前で直撃。木村社長は「突然おかしいだろ! 広報を通せ!」と激昂したが、翌日、本誌記者を本社に呼び出し、「会社からの回答」としてこう答えた。
「弊社としては指導の一環と考えております。ただ、それをセクハラと捉えられてしまい、(加奈さんから)相談を受けました。気持ちを害してしまったことを謝罪しましたが、4月17日に退職届を提出してきたため、本人の意思を尊重し退職を認めることにしました。(加奈さんは)4月2日から5日の4日間しか出社していませんが、(加奈さんから)1ヵ月分の給与にあたる金額を支払うことで示談にするとの意向があり、その金額を支払いました。
Sは熱心な指導を行っただけのつもりが、結果的に(加奈さんを)不快な気持ちにさせてしまったことを認識し猛省。始末書を提出し、また、(加奈さんに)お詫び状を送りました。弊社はSを現場から外し、かつ1割の減俸を行いました」(カッコ内は編集部補足)
しかしその後、取材に同席した喜代村社員から記者の携帯に連絡が。「総務の担当者が入院中のため、まだSの減俸処分は行っていませんでした」とのことだった。 いかなる状況であろうと、胸をもむ、容姿を侮辱する行為が「熱心な指導」と認められることはない。「すしざんまい」は時代錯誤な会社と言わざるを得ない。
PHOTO:田中俊勝(1枚目)
『FRIDAY』2019年4月26日号より