大阪の府知事選と市長選では大勝して引き続きポストを確保し、府議選でも新たに過半数の議席を獲得した。ただ、市議選では半数に及ばなかった。
大阪市を廃止して東京23区のような特別区に再編する都構想の是非を最大の争点として行われた異例の4重選挙は、構想の実現を訴えた大阪維新の会が幅広い支持を獲得した。
構想の実現には府議会と市議会の議決が前提となるため、選挙前と同様、維新が単独で手続きを進めることはできない。しかし、四つの選挙の結果からは、2015年の住民投票で否定された都構想への支持が広がっていることが見てとれる。
その利点や懸念についての検討をさらに深め、どんな都市制度改革が必要かを突き詰めていく。維新と、都構想に反対してきた自民、公明など反維新の各会派は、真摯(しんし)に議論を重ねなければならない。
都構想の狙いとして、維新は府と市の二重行政の解消を強調する。現行制度のもとでも取り組むべき課題であり、実際に維新も公営住宅事業や信用保証協会、産業・工業研究所を統合してきた。その上でなぜ都構想の実現が不可欠なのか、コストや懸念にどう向き合うのか、より詳細な議論が必要だ。
都構想を巡っては、実現に不可欠な2度目の住民投票の実施を巡り、維新と公明の間で様々な駆け引きが続いた。そうした不透明なやり方ではなく、法定協議会をベースとした透明な作業が求められる。
忘れてならないのは4重選挙となった経緯である。府知事と市長の任期途中での辞職と立場を入れ替えての立候補という、維新による脱法的な行為は看過できない。
維新代表で大阪府知事だった松井一郎氏と政調会長で大阪市長だった吉村洋文氏がそろって辞職したのは、任期満了に伴い予定されていた府議選と市議選に首長選を重ね、議会選に臨む同僚を後押しする狙いだった。辞職した2人がそのまま府知事と市長に再選しても、公職選挙法の規定で任期は辞職前の残り期間に限られる。それをすり抜けようと、立場を入れ替えての「クロス選」に打って出た。
再選を目指す現職が有利になるよう、辞職によって選挙の時期を選ぶ事態を防ぐのが法の趣旨だ。不意に選挙を仕掛け、自らが率いる政党の押し上げを狙った松井氏と吉村氏は反省すべきであり、今後の都構想論議で「奇策」を弄(ろう)してはならない。
大阪を含む政令指定市にとって、道府県との関係や住民の意思を反映する仕組みづくりは共通する課題である。他の市にも参考となる検討を期待する。
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