Q.自分のブログ等で、ある書籍のレビューや感想を書く際に、その書籍の表紙画像を掲載することは、引用に当たり違法にはならないと思うのですが。
A.そもそも、本の表紙と本の中身(文章・絵)は別々の著作物と考えられるので、本の中身のレビューをする際に、本の表紙を掲載することは引用にはならず、著作権法違反になる可能性があります。
久々のブログ更新になります。
前回まで、肖像権に関する内容を取り扱っておりましたが、ちょっと肖像権に関する資料集めに少々手こずっているため、肖像権は、資料が集まり次第またやろうと思います。
以前「本の表紙画像のブログ掲載は違法? 」にて、ブログ等で書籍レビューをする際の、その表紙画像をブログに掲載することについて取り上げてみましたが、これをさらに考察する上で参考となる判例が最近ありました。
今年(平成22年)7月28日判決の「医学書の表紙デザイン類似事件」です。
今回は、この事件を参考にしつつ、本の表紙画像のブログ掲載について、さらなる考察をしたいと思います。
【医学書の表紙デザイン類似事件概要】
原告:出版社
被告:出版社
判決日:平成22年7月28日(東京地裁)
平成21年(ワ)第23051号
被告出版社が発行した書籍の表紙は、それ以前に原告出版社が発行した書籍の表紙をコピー(複製)・改変等したものであると原告が主張し(要は「模倣しただろ」と主張)、著作権法違反(複製権等侵害)による損害賠償等が求められた裁判。
結果として、被告出版社の行為は原告出版社発行書籍の表紙を模倣(翻案)したものとして、著作権法違反(翻案権侵害)と認定された。
【本の表紙の著作物性】
この裁判の中で、本の表紙の著作物性について触れられております。
(東京地裁)
「原告書籍表紙は、単に、正方形と線(縦棒、横棒)を漫然と並べたにすぎないものではなく、①大小の正方形及び太さの異なる縦横の棒の配置ないし配色、②書名、編者名及び出版社名の配置、字体ないし文字の大きさ、③小さな正方形に描かれた木の葉や木の実等のイラスト、そこにちりばめられた丸い粒など、の具体的な表現方法において、制作者の思想又は感情が創作的に表現されたものであると認められる。
~(中略)~
原告書籍表紙は、いわゆる純粋美術に当たるものであり、著作権法上の著作物として保護されるべきものである。」
このように裁判の中で判示され、原告出版社が発行した書籍の表紙は、表紙それ自体で一つの著作物(純粋美術)にあたると判断されました。
ちなみに、この裁判の中で著作物性が問われた本の表紙は以下のものです。
(この本の表紙画像を掲載することは、著作権法32条にて許容される引用にあたると考えます。)
(引用元:南江堂
ブレーン出版の「入門歯科東洋医学」に出版差止の仮処分命令が発令
URL:http://www.nankodo.co.jp/wasyo/html/nyumon.html )
上記の表紙のような、創作性のある表紙は、表紙それ自体で1つの独立した著作物であると考えられるため、本の中身(文章・絵)とは切り離した別個独立した著作物になると考えられます。
よって、
本の表紙についてレビューや批評・評論等をするのなら、本の表紙画像をブログに掲載することは引用にあたると考えられますが、本の中身(文章・絵)についてレビュー等するのなら、本の表紙画像をブログに掲載することは引用にあたらず、著作権法違反(複製権・公衆送信権侵害)になってしまう可能性がある
と考えます。
【例えば・・・】
最近、集英社文庫から昔の文豪(故:夏目漱石等)の作品が発行されておりますが、その中で、故:夏目漱石著作の「こころ」の表紙は、漫画「デスノート」等でも有名な小畑健氏の書き下ろしになっております。
この表紙は、小畑健氏の著作物となり、集英社に著作権譲渡していない限り、著作権者は小畑健氏ということになります。
これは、本の表紙と本の中身とでは、別個の著作物になるということを分かりやすく示してくれている作品例の1つだと思います。
それと、表紙がただ単に本のタイトルと著作者名が記載されているだけで、なんの創作性もなさそうな場合、これは著作物にあたらないと考えられるので、そのような本の表紙画像をブログに掲載することは著作権法違反にはならないと考えます。
CDジャケットも今回の記事で記載している内容と同様の考えができますが、次回はCDジャケットに著作権が発生するのかということについて触れてみたいと思います
(続き:CDジャケットに著作権はあるのか )
(本の表紙画像をブログ等に掲載したために、出版社等から提訴されたという事例は今のところないようですので、今回の記事の考えは、あくまで私個人の考えになります。)
【その他著作権事例Q&A】
・ゲーム
・肖像権