提督の憂鬱   作:sognathus
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まだまだ続く昔の話。
今度は若かりし頃の中将が本格的に暴走(?)します。


第19話 「始まり」(後編)

大佐「風呂に入ると整備、いや破損か? それが直るっていうのか?」

 

少将「そうだ。正確には艦娘専用の溶液を沸かした湯だな」

 

大佐「油や弾薬はいいとして、鉄やボーキの補給は?」

 

少将「それは原形の状態で艦の中に置いてくれれば、人型に戻った時に吸収するみたいだ」

 

准将「人間の状態だと傷のように見えるんだな」

 

少将「その通りだ。人間と同じように自然治癒もするが、それでは時間が掛かるので入浴という名の入渠をしてもらう形だ」

 

大佐「准将、順応が早いな」

 

准将「いや、なんかいろいろとな......」

 

少将「まあ、そこはある程度フっ切れてもらった方が楽だろう」

 

大佐「普通に風呂とか入れるんだな?」

 

准将「大佐......お前何を考えている? 飢えているのか?」

 

大佐「ああ? ははははっ、ちげーよ! ほら、その溶液とやらがどんなのかは分からねーけど、やっぱ本場の風呂は気持ちいだろ? 心の癒しってのも必要だと思うぜ」

 

少将「まぁ、可能だが。何ぶん彼女たちには今現在意思がないからな。気持ちよく感じるかどうかは......」

 

大佐「だからそこは心の問題だってーの! あ、それと飯だ飯は食えるのか?」

 

少将「ああ、その事なんだが。基本兵器として運用しなければ、体調管理の維持は人間と同じものが必要だ」

 

大佐「つまり飯と寝る事だな」

 

少将「そういう事だ。見た目だけが人間と言うわけではないという事を忘れないで欲しい。これは結構重要だ」

 

准将「単純に兵器としては扱えないということだな」

 

少将「その通り」

 

大佐「いいよ! それなら訓練しようぜ訓練! 軍人としての心構えも叩き込んでやる。心ができるようにな!」

 

准将(早速目的がズレ始めてるな......)

 

少将「ははは、君は本当に相変わらずだな。だが、君ならそれもできそうな気がする」

 

准将「おい物騒な事......分かった。分かったからそう睨むな」

 

大佐「おうっ! やっぱり一緒に仕事するなら楽しくなくちゃな!」

 

准将「......やれやれ」

 

少将「さて、私からの説明は以上だが君らから他に何か質問はるか?」

 

大佐「あるぞ!」

 

准将「またお前か。まあいいが......俺は思いつかない」

 

大佐「こいつ、扶桑とか言ったな。扶桑と言ったら“あの”扶桑か?」

 

少将「航空戦艦にする予定だった方のか? だったら違う。この子は我が国最初の甲鉄艦の方の扶桑だ」

 

大佐「初代か! 渋いなぁ!」

 

准将「また趣味な......」

 

少将「国産ではないとは言え最初の本格的な戦艦だからな。げんを担いだんだろう」

 

大佐「東艦じゃないのか?」

 

少将「創造しようにも流石に古くてな......現在、関連品を捜索中らしい。つまりその内できる。そうなれば、立場上は東が彼女の先輩になるな」

 

准将「戦争でゴタゴタしてたからな。無理もないか」

 

大佐「なるほどな。ま、取り敢えずはこいつが艦娘としては1号になるわけだな」

 

少将「そうだな。ん? おい大佐?」

 

大佐「おう、クソガキ」

 

少将「な......」

 

准将「......っくく」

 

扶桑「......」

 

大佐「おう、ダンマリか。お前だ扶桑」

 

扶桑「はい、なんでしょう大佐」

 

大佐「ふーん、自分の名前以外には反応しないのか」

 

少将「あ、あまり変な事は覚えさせるなよ」

 

大佐「分かってるって。おい、ガキ」

 

少将「 」

 

准将「はぁーはっはっは」

 

大佐「ガキ、お前だ。扶桑、お前の事だ」

 

扶桑「大佐、扶桑はガキではありません。扶桑は扶桑です」

 

大佐「ああ? そんなつまらない返ししかできないのは全部ガキだぞ?」

 

少将「胃が......」

 

准将「まぁ、見ててやれ。ふっ......」

 

扶桑「大佐、扶桑はガキなのですか?」

 

大佐「嫌か?」

 

扶桑「分かりません。選択肢に選ぶことができる回答がありません」

 

大佐「そうか......少将」

 

少将「ん、ん?」

 

大佐「こいつちょっと外に連れて行っていいか?」

 

少将「だ、ダメに決まってるだろう! 一応まだ重要軍事機密扱いだぞ!」

 

大佐「大展望広場ならいいだろ? 基地の一部だし、前は海なんだからさ」

 

准将「誰かに見られたらどうする?」

 

大佐「見た目はこんなんだからな。俺の娘って事にしとく」

 

少将「君は結婚してないだろう......」

 

大佐「じゃ、隠し子だ」

 

准将「相変わらず周りの目を気にしない奴だ」

 

大佐「な、いいだろう?」

 

少将「......私も一緒に行くからな」

 

大佐「おう! ありがとな! 准将はどうする?」

 

准将「馬鹿がこれ以上馬鹿やらかさない様に見張らないとな」

 

大佐「よっしゃ! それじゃ扶桑、行くか!」

 

扶桑「何処へですか?」

 

大佐「外だ外! 肩車してやる。よっと!」

 

スクッ

 

扶桑「......っ?」

 

大佐「お? 今驚いた顔したか?」

 

扶桑「そうですか? すいませんわかり――」

 

大佐「まぁいいや。行くぞー!」

 

ゴンっ

 

少将「た、大佐! ドアを抜ける時くらい降ろせ! ふ、扶桑大丈夫か!? どこか壊れてないか!?」

 

准将「くくく......ははははは! 扶桑の奴の顔を見ろ。自分に何が起こったのか理解できていないぞ」

 

大佐「うわっ、扶桑悪かった。大丈夫か?」

 

扶桑「......え?」ピヨピヨ

 

大佐「よし、大丈夫だな。行くぞ!」

 

少将「何故!? 今のどこが大丈夫だったんだ!?」

 

大佐「俺の勘だ。というか今のでさっきより随分良くなった気がする」

 

准将「気のせい......とは言い切れんのがなんとも」

 

少将「うぐっ......い、胃が......」

 

大佐「ほら扶桑、また肩車だ! 今度は気を付けるからな!」

 

扶桑「あ......や......」

 

大佐「お?」

 

准将「む?」

 

少将「え?」

 

3軍人「......」ジッ

 

扶桑「......っ?」ビクッ

 

大佐「ふっ、行くぞー!」

 

少将「程ほどにな。程ほどだぞ!」

 

准将「今日は面白い一日になりそうだ」




フォルム的には東艦大好きなんですよね。
初めて見たのはる○剣でしたか。
あの、一見マストとかなかったら潜水艦にも見えそうな船とは思えぬ外見、とてもそそられます。


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