ノートルダム大聖堂で大火災 尖塔と屋根が崩落
フランス・パリ中心部にあるノートルダム大聖堂で15日夕、大規模な火災が発生した。築850年になるゴシック様式の大聖堂は、フランスでも特に有名な名所のひとつ。
消防隊が消火に当たっているが、すでに尖塔と屋根が崩落した。一方で、パリ消防当局の関係者によると、大聖堂の主要部分は無事だという。
炎が屋根を突き破ると共に、大きな爆発音が続いた。有名なステンドグラスの窓も破壊された。
消防当局は、大聖堂内の美術品の救出と北塔の崩落を阻止しようと尽力している。
出火原因はまだ明らかになっていないが、消防当局は改修工事との関連が考えられるとみている。
今のところ負傷者の報告はなく、当局は周辺の建物から全員を避難させた。
パリ検察庁は、「火災による偶発的破壊」について捜査を開始したと明らかにした。
パリ市内では複数の教会が、大聖堂の火災を受けて、鐘を鳴らしている。
フランスのカトリック教会は昨年、老朽化が進み、壁に亀裂が入るようになった大聖堂改修のため寄付を募った。
大聖堂を囲む通りには数千人が集まり、パリの名所が炎に包まれる様子を見つめている。涙を流す人も、聖歌を歌ったり祈ったりする人もいた。
エマニュエル・マクロン仏大統領は現場に駆けつけ、「すべてのカトリック教徒とすべてのフランス国民と共に」悲しんでいると話した。
「フランスの全国民と同じように、自分たちの一部が燃えているこの光景は悲しい」と、大統領は述べた。
大統領官邸の報道官によると、マクロン大統領は国民へ向けた重要なテレビ演説を予定していたが、大聖堂火災のためにキャンセルした。
大聖堂の広報担当は、建物全体が「燃えている」と話した。「大聖堂を守っているアーチが影響を受けるかどうか、まだ分からない」という。
歴史家のカミーユ・パスカル氏は仏テレビBFMTVに、「貴重な遺産」が火災で破壊されていると話した。
「大聖堂は800年にわたりパリを見守ってきた。嬉しいことも悲しいことも、何世紀にもわたり、ノートルダムの鐘が刻んできた」、「目の前の光景はひたすら恐ろしい」とパスカル氏は嘆いた。
パリのアンヌ・イダルゴ市長は、「中にはたくさんの美術品がある。(中略)本当に悲劇だ」と記者団に話した。また、市民には安全確保のため、消防当局が設けた立ち入り禁止区域に入らないよう呼びかけた。
12世紀から13世紀にかけて建立されたノートルダム大聖堂は、現在は年間1300万人近くが訪れ、来訪者はエッフェル塔より多い。
ドナルド・トランプ米大統領は、「水のタンクを飛ばしたらどうか」と消火方法を提案した。
アンゲラ・メルケル独首相は、ノートルダム大聖堂が「フランスとヨーロッパの文化の象徴」だと述べ、フランス国民への支援を申し出た。
テリーザ・メイ英首相はツイッターで、「フランスの人たち、そしてノートルダム大聖堂のこのひどい火災と戦っている救急関係者に思いを寄せています」と書いた。
ローマ法王庁は、大聖堂の火災は「衝撃的で悲しい」とコメントし、フランスの消防当局のために祈っていると述べた。
<解説> 国の象徴――アンリ・アスティエ、BBCワールドオンライン
ノートルダムほどパリを表すものは、ほかにない。国のシンボルとしてはほかにエッフェル塔があるが、エッフェル塔は築100年余りに過ぎない。ノートルダムは1200年代から絶えず、パリの街を見下ろしてきた。
国民的文学作品の題にもなった。ヴィクトル・ユーゴーの小説の原題は、「パリのノートルダム」。それだけだ。
大聖堂はフランス革命で大きく破損したが、それ以降はおおむね無事だった。2度の世界大戦でも戦禍をほとんど逃れた。
これほどまでに国の連続、永続を体現してきた名所が燃え上がり、尖塔が崩れ落ちた。あらゆるフランス人にとって、あまりにもショッキングな光景だ。
(英語記事 Notre-Dame cathedral: Firefighters tackle blaze in Paris)