20歳の西城秀樹がよみがえる!「ブロウアップ ヒデキ」の情熱
- コラム
- 2019.04.15
「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」や「傷だらけのローラ」などの大ヒットであまりにも有名な西城秀樹。郷ひろみ、野口五郎とともに1970年代に"新御三家"として圧倒的な人気を誇った。そんな秀樹がまだ20歳だった頃のドキュメンタリー映画「ブロウアップ ヒデキ」が、歌謡ポップスチャンネルで放送された。
本作は、1975年7月20日から8月24日まで全国15ヵ所31回の公演を行った「西城秀樹・全国縦断サマー・フェスティバル」の模様を約3ヵ月にわたってカメラが追った貴重な内容。今から44年前の映像なのに今、見てもワクワクさせられる。
■ど派手な演出に負けないスーパースターっぷり
映像の一番の見どころはステージ裏の打ち合わせの様子やファンのコメントを含めて、秀樹を追っていくライブシーン。
ツアーは、富士山麓の特設野外ステージからスタートしたが、真夏にスタッフたちがセットを組んでいる場面まで収録されている。また、各地から専用の長距離バスなどで集まり、野外でかき氷を食べたりして開演を待つファンたちの様子は、時代こそ違うものの今のフェスに通じるものがある。
そこに、"火の鳥"のような赤い羽根のついた衣装と舞踏会風の仮面で登場し、巨大な工事用クレーンに吊られたゴンドラに乗って宙を移動しながら歌う秀樹のステージングは度肝を抜かれる。ザ・ローリング・ストーンズの切ないバラード「悲しみのアンジー」をセクシーな声とパフォーマンスでカバーする場面は、洋楽少年でデビュー前はバンドを組んでいた秀樹のルーツが垣間見られて印象的だ。
終演直後にダッシュで車に乗り込み、そこからヘリに乗り換えて、ファンに手をふりながら去っていくエンディングにも驚くが、ファイナルの大阪球場ではレーシーングカーに乗って登場、真っ赤なスポーツカーの上に乗ってグラウンドを走りながら歌うなど"本当にこれが'70年代のライブなのか?"と思う演出で西城秀樹がのちのロックミュージシャンに影響を与えたといわれるのも頷ける。
「愛の十字架」や「傷だらけのローラ」など切ないラブソングを全身でシャウト(当時、"熱唱系"と言われていた)するボーカルスタイル、歌詞が届く魂がこもった歌など、すべてが弱冠20歳にして規格外。
■沖縄でのオフショット、失恋ソングや少年時代を語るインタビュー
カメラは沖縄でのオフにも密着。秀樹がシャツ、ジーンズのラフなファッションでくつろぐ姿や、ステージでは見せない素の表情も映し出されていた。
インタビューでは結ばれない恋の曲が多いことについて聞かれ、「結ばれなくて"どうなるんだ?"って疑問で終わっている歌がすごく多いです。僕の今の若い気持ちとしては結ばれるより、そのほうが魅力的」と答えている。
ホームタウン、広島の母校を訪れるシーンでは少年時代はわんぱくでよく遅刻して朝礼で立たされていたことを振り返り、"16歳で上京。生きていくことの厳しさを知った"芸能界に飛び込んだ経験を"冒険"と定義づけている。
「向こうみずな野郎だったんですけどね、今、考えるとそんな向こうみずなことよくやった。そういう気持ちが起きているときじゃないとできないですよ」と大人になって現実を知った今ならできないとも語る。そこからは、20歳にしてショービジネスの世界で生きる覚悟を決めた彼の"人間味"が感じられる。
63歳で他界するまで病と闘いながらも現役としてステージに立ってきた西城秀樹。このドキュメンタリーには、そんな彼の輝きが永遠に閉じ込められている。
文=山本弘子
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放送情報
ブロウアップ ヒデキ
放送日時:2019年4月30(火) 18:00~
チャンネル:歌謡ポップスチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。