第255話 最強賢者、挑戦者に選ばれる
「……いったいこいつ、何がしたいんだ?」
そう言って俺が橋を進もうとすると……目の前に結界が現れた。
どうやら、グレヴィルはまだ俺を先へと進ませたくないらしい。
「ちょっと待ってくれ。まだやらなきゃいけないことがあるんだ」
その言葉の直後。
キーンという耳障りな音とともに、今度は空へとグレヴィルの姿が映し出された。
「王都諸君! 聞こえるか! 我こそは世紀の大魔族、グレヴィルだ! これから我は、貴様ら人間を滅ぼす!」
「……は?」
突然始まった演説に、俺は困惑する。
コイツは何を言っているんだ。
「我には、貴様らを滅ぼす力がある! その証拠を見せてやろう!」
その言葉と共に――王都へと白い光線が放たれる。
あれは『破壊の光』と呼ばれる、戦略級魔道具から放たれたものだろう。
少しだけ遅れて、グレヴィルが映っている画面に、光線が『王都大結界』を一撃で破壊する様子が映し出された。
光線は『王都大結界』の天頂付近を突き破るように放たれたため、今のところ王都自体に被害は出ていない。
だが、もし光線が地上に向かって放たれていれば、数千人単位の死人が出ていただろう。
王都に被害がなかったのは、ただグレヴィルが地上を狙わなかったというだけの理由だ。
「だが我は寛大だ! 人間にチャンスをやろう。……もし人間に我を倒す力がある者がいれば、人間を滅ぼすのは中止させてもらう。……挑戦者については、こちらが勝手に人類最強だと思う4人を選ばせてもらった」
グレヴィルの言葉とともに、今度は俺達へと光魔法『スポットライト』が当てられる。
同時に『広域型通信魔法』が、俺達を映し出した。
「……挑戦者を見世物にする訳か。どこまでも悪趣味だな……」
『広域型通信魔法』に声が入らないように気をつけながら、俺はグレヴィルに聞く。
この演出の目的など、そのくらいしか思い浮かばない。
「悪趣味だとも。なにしろ我は、世界を滅ぼす大魔族だからな」
グレヴィルは、そう俺に答えた。
この声も『広域型通信魔法』からは聞こえないので、王都には伝わっていないはずだ。
「では諸君、健闘を祈る。……なお挑戦者が逃げた場合、挑戦放棄と見なし人類を滅ぼす。まず最初は王都だ」
一方的にそう言って『広域型通信魔法』からグレヴィルの姿が見えなくなった。
そして、代わりに『広域型通信魔法』へと映し出されたのは――城の中と思しき、レンガ造りの大部屋の様子だった。
「戦闘の様子を生中継って訳だな」
そこには、3人の魔族が俺達を待ち構えている様子が見える。
恐らく、魔族としての格はそこまで高くない。
魔力反応の位置から見て、この橋を渡った先の部屋で間違いないな。
「どうする?」
「結界を壊した魔道具――『破壊の光』は、30分程度の間隔を空けて連射が可能な魔道具だ。引き返せば、本当に王都に撃たれてもおかしくない」
「……ってことは、進むしかないか……」
そう言って俺達は、橋を進む。
橋の奥には、重厚な金属製の扉があった。
扉は閉まっているが……これをのんきに開けていたら、格好の隙を作ってしまうことになる。
待ち伏せ中の敵を襲撃するなら、扉は正直に開けずに破壊するのが鉄則だ。
向こうはかかってこいと言っているのだから、扉を壊したくらいで文句は言われないだろう。
「イリス、頼んだ」
「はい!」
そう言ってイリスが、扉に思い切り蹴りを入れた。
すると厚さ数センチもある金属製の扉が、大部屋の向こう側まで吹き飛んでいく。
それと同時に、俺は部屋の中へと飛び込んだ。
橋の上では、ルリイがアルマに矢を手渡す。
「死ね!」
部屋へと飛び込んだ俺に向かって、3人の魔族が飛びかかってきた。
――鍛錬の前ならともかく、この程度のレベルの魔族など、今の俺の敵ではない。
俺は瞬時に剣へと魔法をエンチャントして、2人まとめて切り伏せながら、3人目の魔族の攻撃を回避する。
首を切断された魔族は、断末魔の悲鳴を上げることさえ許されずに息絶える。
その直後、3人目の魔族の心臓へと、矢が突き立った。
――アルマの矢だ。
「命中! ……2本目の矢、いるかな?」
「もう死んでるから、2発目はいらないぞ。……まあ迷った時には、一応矢を放ってしまってもいいと思うけどな」
そう言って俺は、矢の刺さった魔族を見る。
アルマが放った矢は、正確に魔族の心臓を貫いていた。
即死状態だ。
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