第252話 最強賢者、悪魔を倒す
「修理はどうだ?」
「終わりました!」
魔物を倒した俺が戻ると、もう修理は終わっていた。
10分かかると言っていたが、3分くらいだったな。
「修理お疲れ様。こっちは終わったぞ」
そう言って俺は『迷宮エレベータ』の魔法回路を見る。
うん、ちゃんと直っているようだな。
他の部分も古いので、そのうち壊れるかもしれないが……あと10年はもつだろう。
その頃のエイス王国は、『迷宮エレベータ』くらい一から作れるようになっているはずだ。
なにしろ一番難しい、迷宮に縦穴を開ける工程は終わっているのだから。
そんなことを考えていると……冒険者の一人が、俺が持っている階層主を見て言った。
「なあ。この黒い狼って……まさか例の悪魔じゃないよな?」
「悪魔とは違うと思うぞ。悪魔は状態異常魔法を持った、ウサギの魔物だろう? こいつはただの階層主だ」
「……は?」
俺の言葉を聞いて、冒険者は驚き呆けた顔をする。
何かおかしいことを言ってしまっただろうか。
「いや、悪魔っていうのは階層主の黒い狼なんだが……」
「階層主の黒い狼が倒せず、100人以上が殺されたんだ……。まさか、それがあの悪魔なのか?」
まさか、こいつに100人以上殺されたとは……。
まあ、たかが9層と経験の浅い冒険者がなめてかかって、撃破されたのかもしれないが。
階層主は階層の割に強いため、他の魔物を倒せるからと挑んで敗れる冒険者は前世でも多かった。
「じゃあ、こいつが悪魔なのかもしれない。……少なくとも、階層主は他にいないぞ」
「マジかよ……。アーティファクトを直しちまう付与魔法士といい、何者なんだ?」
「第二学園生は化け物揃いだって話だが……実物を見たのは初めてだな……」
……倒した魔物は、収納魔法にしまっておけばよかったか。
普段は収納する量を節約するために、魔物を解体してから使う部分だけ持ち帰るようにしていた。
その癖で、倒した狼をそのまま持ってきてしまったのだ。
「深い階層に潜ってる冒険者が油断せずにちゃんと戦えば、普通に勝てる魔物だと思うぞ」
「……いや、無理だろ!」
「第二学園には最深攻略階層を更新したパーティーがいるらしいが、そいつらが挑めば勝てるかもしれないけどな」
うーん。
第二学園の名前が広まりすぎるのも考え物かもしれない。
別に第二学園生でなくても、倒せるものは倒せるのだが……。
そんなことを考えつつ、俺は『迷宮エレベータ』に乗り込む。
「これ、普通に操作すればいいんですか? ボタンが光っていませんが……」
同じく『迷宮エレベータ』に乗り込んだ操作係が、光の消えた操作ボタンを見ながら言う。
ちゃんと直ったのかどうかを、不安に思っている様子だ。
……ボタンが光っていないのは、単に魔力が通っていないだけの話なのだが。
「壊れた魔法回路以外はいじっていないので、操作方法はいままでと同じで大丈夫です!」
そう言ってルリイが、回路に魔力を通す。
すると、操作ボタンが光り始めた。
一度魔力を通せば『迷宮エレベータ』は龍脈からの魔力供給で動き続けるので、あとは心配ないだろう。
「ほ、本当に動いた!」
そう言って操作係が、『迷宮エレベータ』のボタンを押す。
すると『迷宮エレベータ』は、今までの不安定でノロノロとした動きが嘘のように動き始めた。
これが、俺が生きていた時代に作られた『迷宮エレベータ』本来の性能――というには少し足りないが、作られてから経った時間を考えれば十分だろう。
他の階層へと着くのにかかる時間は、以前の半分の時間になっただろう。
「あ、ありがとうございます! 何とお礼を言えばいいか……」
「別に御礼なんていいですよ! 私も古代文明の遺産を修理できて、楽しかったですし!」
そう言ってルリイが、嬉しそうに修理した部分をなでる。
『迷宮エレベータ』は大して複雑な魔道具ではないのだが……これだけ多くの人が使う設備を自分の手で修理した実績は、きっと自信につながるだろう。
……ともかく、これで安心して俺達は27層へと向かえるわけだ。
『よし、今日も鍛錬するぞ!』
『うん!』
『はい!』
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