挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~ 作者:進行諸島

第二章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
247/275

第245話 最強賢者、鍛錬する



訓練が始まってから時間が経ち、ルリイの魔力切れが近付いてきた頃。

ルリイが俺を見て、疑問の声を上げた。


「マティ君、何かやってますか? なんか、凄い魔力が動いてるような気がするんですけど……」


「気付いたか」


地面に座っていた俺は、そう答えながら立ち上がる。

俺はルリイ達のように魔法を使ってはいないが、魔法を使わずに鍛錬をしていたのだ。


「これは瞑想だ。体内で魔力をぶつかり合わせて、魔力回路にわざと負荷をかける」


「体内で魔力を……それって、魔法の制御失敗の時みたいな感じですか?」


「ああ。制御に失敗した時の暴走状態を意図的に作り出すようなものだ。……ただの暴走と違って全身で同時に均等に起こすから、魔力回路を鍛えるには最適だ」


魔法の制御に失敗すると、余った魔力が体内で暴れて体にダメージが入る時がある。魔力暴走と言われる現象だ。

ルリイは魔法制御の才能があるため、そこまで派手に失敗したことはなかったはずだが……何度か軽い暴走は経験していたはずだ。


というか、一度も魔力を暴走させずに無詠唱魔法をしっかり使える者などいない。

誰でも、少し慣れてきた頃に魔力を暴走させながら、魔力の扱いを学ぶものなのだ。


ちなみに全くの初心者の場合、暴走するほど激しい魔力の流れを体内で作ることができないので、暴走は起きない。

暴走が起きるのは、魔力操作ができるようになってきた証なのだ。


「全身で魔力暴走を……それって、凄く痛くないですか?」


「ああ。慣れてない人間がやると、本物の魔力暴走につながりかねないくらいだ。……だから、ルリイとアルマはやめておいた方がいい。最悪の場合、魔力回路を損傷することになるからな」


魔力暴走は、結構痛い。

過剰な魔力が、体の奥深くにある魔力回路の中で暴れ回るのだから当然だ。


魔法の制御に失敗すると、痛みでパニックになった挙句、最終的に気絶するような者もいる。

だが、魔力回路が損傷するところまでいく人間は、滅多にいない。第二学園全体でもゼロだったはずだ。


それは、魔力が暴走を始めた段階で、体が自動的に暴走を止めるように働くからだ。

パニックになって暴走を加速するような方向に魔力を加速しようとしても、そんな精神状態で体内の魔力をまともに加速できる訳ではないので、魔力回路が損傷するところまではいかないのだ。

しっかりとした意思と冷静な制御があって初めて魔力を扱えるのだから、当たり前と言えば当たり前だ。


だが、瞑想は違う。

魔力暴走とは違って、明確な意思を持って、体内で魔力をぶつけ合わせるのだ。


そのため、とても痛い。

痛いだけではなく、加減を失敗すると容易に体内の魔力回路を傷つける。

だから、この瞑想は魔力操作と痛みに慣れた人間だけが行うべき鍛錬だ。


鍛錬というより、修行や苦行の方が近いかもしれない。

俺だって前世で痛みに慣れていなければ、こんな修行はできなかっただろう。


「いや、やりたくてもできないから……」


そう言ってアルマが、迷宮の壁に魔力で強化した矢を放つ。

そこに込められた魔力は、最初の頃の7割程度まで減っていた。


「私も、魔力消費を削るので精一杯です! ……でも、段々魔力消費が減らなくなってきました……」


ルリイは途中から練習に使う魔石がもったいなくなったようで、1つの魔石にいくつも魔法を付与していた。

当然、魔道具としては使い物にならないが……付与魔法の練習にはなる。


……ルリイの方は、もう最初の6割くらいまで魔力消費を削れているみたいだな。

半分まで減らすには時間がかかるだろうが、二人とも順調だ。


一方イリスは……。


「あう!」


俺が目をやった直後、イリスが地面の穴に落ちた。


相変わらず、あまり上手くいってはいないようだ。

まあ、この短時間でそこまで劇的に変わるような訓練なら最初から取り入れているので、当たり前なのだが。


だが……始まる前より、だいぶ身のこなしがマシになってるな。

今のイリスなら、20回に1回くらいは『クラッシュグリズリー』に突きを当てることができるだろう。


訓練をする前のイリスなら、たとえ100回やっても無理だった。

この訓練はこの訓練で、割と成功だったのかもしれない。


「よし、今日はそろそろ帰るぞ」


もう、外は夜だろう。

休息は大事だ。


「えー! やっと魔力消費が減ってきたところなのに! まだ魔力は残ってるよ!」


「私、もっと練習したいです!」


「そうです! やっと、あんまり穴に落ちなくなってきたんです!」


3人はまだ訓練をしたいようだが、魔力は残り少なくなってくると、制御するときの感覚が変わってくる。

まだ質の高い魔力の扱いに慣れていない2人は、安定した状態で練習をした方がいいだろう。


別にこのまま訓練を進めたからといって、さほどの悪影響があるわけではないが……グレヴィルとの戦いを生き残るには、少しでも効率よく強くなってもらう必要がある。

俺がついているのに、効率の悪い訓練をさせるわけにもいかないしな。


「明日以降のことも考えたら、今くらいでやめておくのが一番効率よく強くなれる。休むのも鍛錬のうちだ」


そう言って俺は、『迷宮エレベータ』のボタンを押す。

もう少しで、迎えが来るだろう。


★『異世界賢者の転生無双』公式ページはここをクリック★

『異世界賢者の転生無双』書籍版出ます!!

拙作『異世界賢者の転生無双』の書籍版が、【4月14日】に発売します!!

書き下ろしもありますので、よろしくお願いします!

★『異世界賢者の転生無双』公式ページはここをクリック★

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。