挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~ 作者:進行諸島

第二章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
242/275

第240話 最強賢者、敵の気を引く


「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァ!」


俺の『強制探知』による挑発を浴びた『クラッシュグリズリー』が、真っ直ぐ俺の方へと向かってくる。

イリスが、そんな『クラッシュグリズリー』に向かって突撃した。


「いきますよー! そいっ!」


そう言ってイリスが、槍を突き出す。

だが……。


「避けた!?」


槍を回避されたイリスが、驚きの声を上げる。

『クラッシュグリズリー』は階層主だけあって、そこらの魔物とは比べものにならないほど素早い。


イリスの直線的な突きなど、あっさり避けられてしまう。

そうして突きを避けた『クラッシュグリズリー』は、攻撃対象を俺からイリスに変えて、イリスに殴りかかろうとする。


このクラスの魔物が相手となると、挑発魔法で気を引ける時間も短いようだ。

恐らく、敵に近付けば『強制探知』でも多少は気を引けそうだが――それでも20秒が限度といったところか。


「イリス、下がれ! イリス一人じゃ当てられないぞ!」


イリスには力があるが、戦闘技術はない。

『クラッシュグリズリー』の正面から攻撃したのでは、まともに攻撃を当てられないだろう。


「分かりました! ……でも、これなら外しませんよ!」


そう言いながらイリスが、突き出した状態の槍を水平に振り回す。

普通、槍を突き出した後からは力が入らないため、いったん槍を戻してからもう一度突き出したりするのだが……イリスは強引な力技で、槍を振り回した。


そうして『クラッシュグリズリー』の拳がイリスに届くと同時に、イリスの槍が『クラッシュグリズリー』に命中する。


「あう!」


『クラッシュグリズリー』の拳を受けて、イリスが俺の方に吹き飛んできた。

もし普通の人間に当たれば即座にバラバラ死体になるような一撃なのだが……イリスは無傷だ。


「おっと」


俺は飛んできたイリスを受け止めて地面に降ろしながら、『クラッシュグリズリー』の様子を窺う。

イリス同様、『クラッシュグリズリー』も無傷だ。


いくらイリスが怪力を持っていても、無理な体勢からの振り回しでは傷すらつけられないようだ。

やはり硬いな……。


「コイツ、硬いですね!」


「ああ。硬いうえに素早い。……奴の気を引くのは俺に任せて、イリスは後ろからの攻撃に専念してくれ」


いくら『クラッシュグリズリー』が素早くても、正面の敵に対応しつつ背後からの攻撃に対応するのは難しい。

俺が近距離からの挑発を繰り返して気を引けば、イリスでも攻撃を当てられるだろう。


今回は攻撃をイリスとアルマ達に任せて、俺はタンク役に徹することにした。

このクラスの魔物にダメージを与えようとすると、どうしても魔力を使うことになるからな。


今日は、階層主を倒して終わりではないのだ。

俺の魔力は経験値稼ぎに使うので、できるだけ残しておきたい。


「よし、こっちだ!」


俺はそう言いながら『強制探知』を発動して、『クラッシュグリズリー』の気を引く。

敵の種類によっては、『強制探知』による挑発を繰り返すと『強制探知』に慣れてしまい、他の方法で挑発する必要が出てくるのだが……『クラッシュグリズリー』は挑発に慣れないタイプの魔物なので、気を引きやすい。


「ガアアアァァ!」


俺に向かって走りながら拳を繰り出す『クラッシュグリズリー』を、俺は1歩だけ動いて回避した。


避けられた『クラッシュグリズリー』は、攻撃が当たらないことに苛立ちながら俺を追撃する。

その間、クラッシュグリズリーの体はほとんど動かない。


「グアアアアァァァァ!」


ほとんど止まった的と化した『クラッシュグリズリー』に、アルマの矢とイリスの槍が突き刺さる。

硬い魔物ではあるが、こうやって攻撃しやすい状況を維持すれば、それなりにダメージを通せるのだ。


「こっちだ!」


『クラッシュグリズリー』の狙いがイリスに向いてしまわないように、挑発をかけ直す。

味方が攻撃をすると、敵の狙いが攻撃役に向きやすくなる。

魔物にだって痛覚はあるのだから、当然だ。


だから攻撃役の様子を見ながら、挑発の頻度を調整する。

敵の攻撃を受けるだけのタンク役は一見暇そうだが、実はけっこう忙しいのだ。


「よっと」


クラッシュグリズリーの攻撃を、また俺は一歩跳んで回避する。


ただ最小限の動きで避ければいいというものではない。

敵の動きを読んで、敵の動きを最小限にとどめるのだ。

自分の動きが最小限になるように避けるだけだと、敵が変な動きをすることがあるからな。


タンク役は、ただ敵の気を引いていればいいだけだと勘違いされることもあるが……それは最低限の仕事でしかない。

回避をするたびに敵が動き回るようでは、攻撃役の攻撃が遅れて戦闘時間が延びてしまう。


敵の動きを最小限に抑え、攻撃役の力を最大限に発揮する。

それもまた、タンク役の仕事だ。


「アルマ、『有線誘導エンチャント』は使わなくていい! 威力を重視してくれ!」


「分かった!」


そう言ってアルマが、矢に乗せるエンチャントから誘導を外して、威力を上げるタイプのエンチャントへと切り替えた。

敵が動かないから、矢を当てるために誘導を使う必要がなくなったのだ。


こうして俺はほとんど魔力を使わないまま敵の動きを止め、アルマとイリスは敵の体力をどんどん削っていった。

……そうして、戦闘開始からおよそ10分後。


「大分弱ってきたな」


そう言いつつ俺は、『クラッシュグリズリー』が振り下ろした爪を、横に半歩ずれてかわす。

『クラッシュグリズリー』の爪は地面に刺さり、それを引き抜くまでの間、隙ができる。

……そのはずだった。


★『異世界賢者の転生無双』公式ページはここをクリック★

『異世界賢者の転生無双』書籍版出ます!!

拙作『異世界賢者の転生無双』の書籍版が、【4月14日】に発売します!!

書き下ろしもありますので、よろしくお願いします!

★『異世界賢者の転生無双』公式ページはここをクリック★

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。