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♪~
はい 昭和30年の初夏。
なつが 十勝の柴田家に来て9年の月日が流れました。
♪~
なつは 農業高校の3年生です。
なつ そろそろ。
うん。 菊介さん あと そろそろ頼むね。
おう あとは任せろ。 行ってらっしゃい。
じいちゃんの方 どうかな?おやじが 今 様子を見に行ってるよ。
う~ん… 私も ちょっと見てこよう。
母さん これ お願い。
ちょっと! ごはん食べられなくなるよ!
大丈夫 ごはんなら自転車乗ってでも食べられる!
もう… 牛のお産なんて珍しいことじゃないのに。
なっちゃん 何だか 心配してたもな。えっ?
柴田牧場も大きくなって新しい牛舎も建ちました。
じいちゃん 悠吉さん どう?
(悠吉)うん 陣痛は もう来てるみたいだ。
そろそろ 1回目の破水があってもいい頃なんだが…。
(照男)なつ 学校に遅れるぞ。
大丈夫だってば。ごはんなんか すぐ食べられるから。
飯の話なんか してないべや。それよりおなかの落ち方がいつもと違うような気がしたから何だか 気になって…。
なつは この家で本当の娘のように育てられていました。
おかげさんで なつは元気に ここで生きています。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
(あくび)
お母さん おかしいね。日の出る前から働いてるなつ姉ちゃんが元気で さっきまで寝てた夕見姉ちゃんが あくびしてる。
本当だね。私は遅くまで勉強してるからっしょ。
本読んでるだけっしょ。あのねえ 世の中は広いの。
乳搾りと草刈りだけで出来てるんじゃないの この世界は。
明美ちゃん 朝から夕見子に構うと学校に遅れるよ。は~い。
明美ちゃん なつの言うこと聞いてると時代に遅れるよ~。
酪農は これからの十勝に絶対 欠かせないものなんだよ。
どこが時代遅れなのさ。なつ 構ってると 学校遅れるよ。
は~い。(剛男)なつ おじいちゃん どうしてる?
どうしてるって?元気か?
一緒に暮らしてるでしょ?いや…何か 話をしたかなと思っておじいちゃんと。
何の話?牛のこととか 農協のこととか…。
ちょっと 何話してるの 今。朝の忙しい時に。
ああ… いや 何でもないわ。
何よ 父さん。農協で 何かあったの?
いや… いいんだ。 また 後でな。
ほら 学校遅れるぞ。
なつを ここに連れてきたこの柴田剛男さんは今 農協に勤めています。
なつに 父さんと呼ばれています。
ごちそうさまでした。行ってらっしゃい。行ってきます!
行ってきま~す!行ってらっしゃい!
気ぃ付けてな~!頑張れよ~!
なつ!ん?
破水した!じいちゃんが お前呼んでこいって!
じいちゃん!
なつ 逆子だ。
えっ… 逆子?後ろ足から出とる。
照男 獣医呼んでこい。分かった。
(鳴き声)
逆子だって?母さん…。
このまんま 獣医さんを待ってたら間に合わんくなる。
だが 母牛だけは助けたい。
そんなこと言わないで!じいちゃん 子牛も助けよう。なつ…。
逆子は 時間がかかると途中で へその緒が切れて子牛が おなかの中で息ができなくなるかもしれんって学校で習った。
早く引っ張り出さんと子牛が生きられんよ!
♪~
じゃあ 陣痛に合わせて引くぞ。
急いで。来るぞ。
よし 引っ張れ!
もっと!戻すな!
ちょっと待て… やんだ。
おはようございま~す。ご苦労さん。
あれっ? 今日は1人かい?ああ。
難産の母牛がいるもんで。難産?
どうも逆子みたいでさ。あらららら 逆子かい。
それは あずましくないね。
もっと引け! 戻すな!引っ張れ!
お願い 助かって!
よし 引け!よ~し 出るぞ。
なして動かんの?
息をしとらん。
えっ?
(悠吉)間に合わんかったか…。
ダメだ…。じいちゃん 私にやらして!
なつ これで息をしとらんかったらダメだ 諦めろ。
まだ! 学校で 人工呼吸習った。
人工呼吸? 牛に?
お願い やらして。なつ…。
羊水飲んだのかもしれん!
なっちゃん そったらことまで…。
♪~
なつ!
あっ…。
やった…。
やった~。
やった~。
(悠吉)生き返った… 生き返ったぞ!
すごいな なっちゃん!
よくやったな!ハハッ…。なつ!
よかった~。よくやったな!よくやった。よかった~。
(泰樹)ハハハハハハ…。
♪~
よし! 立った!
子牛が立った!
♪~
飲んでる。
♪~
今日 新しい命が生まれました。
無事でした。
ありがとうございました。
戦争で亡くなった父と母のこともなつは 大切に思ってくれていました。
本当の兄と妹は今も 行方が知れません。
なつ 本当に 今から学校行くの?
うん。 まだ 午後の授業には大丈夫だから。
今日ぐらい 無理して行くことないのに。
だって さっきのこと早く みんなに話したいんだわ。
なつ 行くなら馬で行け。えっ?
馬なら 寝ててもお前を連れてってくれるべ。
分かった そうする。
寝たら落ちるしょや。
夕方の搾乳はいいからな。
ゆっくり帰ってこい。ありがとう じいちゃん。
♪~
(倉田)第二の世界とは どんな世界か。貧乏だが晏如安らかで落ち着いた学問の世界だ。
おはようございます!遅くなって すいませんでした!
奥原。はい。
大幅に遅刻したくせに反省はしてないようだな。
はい してません。(倉田)うん 何していた?
それ 聞きますか?
ほう 聞いてほしそうだなあ。 何だ?
倉田先生 授業の邪魔では?いいから しゃべれ!
はい! 牛のお産を手伝っておりました!
それが 逆子でした。逆子?
(良子)なっちゃん それで どうなったの!?
うん そんでねへその緒が切れたら大変だと思って急いで引っ張り出したんだけど生まれた子牛は仮死状態だった。
それで 助かったのか?
はい! 私が 人工呼吸をして助けました!
(拍手)
先生 学校で教わったことにうそはありませんでした。
当たり前だ。(雪次郎)よくやった なっちゃん!
(拍手)ありがとう ハハハ…。
おい ちょちょちょちょ…それで どうやって人工呼吸やったんだ?
はい。 じゃあ… よっちゃん手伝って。
えっ? ちょっと…どうするのよ なっちゃん。
よっちゃん ここに寝て。
寝るの? やだわ… ふしだらよ。
大丈夫 牛だから。私が牛なのか?
早く。
まずは 鼻にたまった羊水を吸ってペッ 吐き出しました。
それから こんなふうに子牛の前足をつかんで胸を開いて戻すようにしました。
開く時には 子牛の体が…浮くぐらい 大きくして…。
なっちゃん 痛いわ!
戻して 開いて 戻す…。
なつは とにかくここで生きることに夢中でした。
そして その日なつは 寄り道をしたのです。
天陽君!
(天陽)おう なっちゃん!
なつよ その笑顔十勝晴れの空に よく似合う。