街並みというのは、基本的に建物が主役となって創り出される。人が見て「美しい」と思える街並みには一定の秩序があり、かつ人間的な魅力がちりばめられている。
フランスのパリや日本の京都は、観光都市として世界でトップクラスの人気を誇る。その魅力の源泉にはやはり、街並みの持つ独特の味わいがあると思う。
日本の都市においては、マンションがそれを形成する上で強い存在感を示している場合が多い。
既存の戸建て住宅地の中に突然100戸規模の分譲マンションが建設されるような場合、街の景観を一気に変えてしまったりする。その場合、マンション側が既存の街並みに配慮したとは思えない外観デザインを採用しているケースを多々見かける。残念なことだ。
あるいは東京の東日本橋エリアのような問屋街は、日本の流通産業の構造変化によって中小の業務ビルが次々にマンションへと変わっている。
数十戸規模の分譲マンションが、それぞれ自分よがりな外観デザインで乱立するので、雑多な街並みがさらに雑多に上塗りされている。これも残念な例だ。
街の景観というものは、その街全体の資産である。魅力的であれば人が集い、街は発展する。つまらなければ、衰退の原因になる。日本人は、もっと街並み形成に関心を持つべきだと思う。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収300万円でも家が買える!」(WAVE出版)など多数。