探査機「はやぶさ2」、小惑星でのクレーター作製に成功 世界初

ポール・リンコン、BBCニュースウェブサイト科学編集長

Hayabusa2 Image copyright Akihiro Ikeshita
Image caption はやぶさ2は今後クレーターに着陸し、地表面で風化していない新たなサンプルを採取する予定だ

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5日、探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」に人工のクレーターを作る衝突実験に成功したと発表した。こうした試みは世界初。

はやぶさ2は5日、リュウグウ上空の高度500メートルでの衝突装置(SCI)の分離に成功した。

爆発による飛散物を避けるため、小惑星の反対側に退避しているはやぶさ2に代わり、小型カメラ「DCAM3」が衝突予定地点から約1キロ離れた場所でクレーター作製の様子を撮影した。

その画像データでは、リュウグウの表面から爆発による噴出物が飛び散る様子が確認できたという。

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リュウグウ(確定番号162173)として知られる幅1キロの岩石は、非常に原始的な種類の小惑星に分類されており、そのため太陽系初期の残存物が残っている。リュウグウの残存物を調べれば、地球の起源と進化が明らかになる可能性がある。

SCIは質量14キロの円錐形の爆発物で、HMX系PBXというプラスチック爆薬を搭載しており、直径10メートルのクレーターができるという。

計画通りにいけば、はやぶさ2は数週間後にクレーターに着陸し、地表面で風化していない新たなサンプルを採取する予定だ。

地上でのSCI実験の様子はこちら:

今回の成功に先立ち、はやぶさ2のプロジェクトマネージャーを務める津田雄一氏(JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授)は、半径200メートルほどの場所を狙ってクレーターを作ると説明していた。実際にクレーターに近づいて観察するのは2週間後になるという。

リュウグウは、NEAの中でも特に初期にできたとC型小惑星に属し、太陽系の創成期の名残りと考えられている。

小惑星の地表面は長い間、太陽や宇宙からのエネルギー粒子にさらされて変化しているため、こうした影響を受けていない地中サンプルが必要だという。

プロジェクトサイエンティストを務める名古屋大学の渡邊誠一郎教授は3月に開かれた月・惑星科学会議(LPSC)で、この実験によってリュウグウの表層に関する情報が得られるだろうと述べた。

Image copyright JAXA, Uni Tokyo & collaborators
Image caption はやぶさ2は6月、小惑星リュウグウに着陸した

同じくLPSCに出席した津田准教授は、どのようにプロジェクトチームがリュウグウで人工クレーターを作製することを決定したのかを話してくれた。

理由は2つあるという。1つは、クレーターを容易に識別できる場所にクレーターを作製でき、観察がしやすいということ。

2つ目は、着陸が実現可能な場所であるということ。この2条件が揃わなければ1つ目の条件に合致するものを選ぶという。

今後、はやぶさ2が岩などへ衝突する危険性がない場合、地表面で風化していないサンプルを採取するため、はやぶさ2をクレーターに着陸させる予定。

(英語記事 Japanese spacecraft 'bombs' asteroid

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