救命浮舟に乗り込まず「海流だけ」で流される範囲と、救命浮舟に乗り込んだことにより「海流+風」に流される可能性のある範囲は、大幅に異なります。そのため、救命浮舟に乗り込めていない場合の生存可能時間内は、ROCは捜索の重点をどのエリアにするのか、非常に迷うことになります。

 同時に、捜索にあたる部隊の割り当てや指示にも困難が伴います。救命浮舟は非常に目立ちますが、海上に浮いただけの乗員の捜索は、特殊な装備をもった機体や艦艇でなければ、近くを通過しても発見は困難です。U-125Aなどの高度な捜索能力を持ったユニットを、いつまで救命浮舟に乗り込めておらず、海流だけで流されていると予想されるエリアに割り当てるのか判断しなければならないのです。

 救命浮舟に乗り込めていない場合の生存可能時間を大きく越えた場合は、乗員の捜索は、救命浮舟に乗り込めたことを前提に、風によって流されたと予想されるエリアを捜索します。

 4月12日時点で、機体の破片などの漂流物は、海流の影響を考慮して沿岸から200キロ程度のエリアを捜索していると思われます。一方、乗員の捜索は、救命浮舟に乗り込んでいることを前提に沿岸から数百キロから数千キロも離れた位置を捜索しているでしょう。

 4月11日、自衛隊は、緊急脱出した形跡はなかったと発表しています。また、乗員の氏名も公表しました。あくまでも憶測に過ぎませんが、自衛隊は、家族には通知した上で、生存している乗員の捜索は、足の長い固定翼航空機(空自U-125A、海自P-3C、米軍P-8)などに絞り、艦艇やヘリは、機体の慰留物などの捜索に移っているのかもしれません。

 また、今回の墜落の後、米軍のB-52が現場付近をたびたび飛行しています。一部のミリタリーマニアは、爆撃機であるB-52も捜索に加わっているのではないかと噂しましたが、米軍はこれを否定しています。

 救命浮舟が流された可能性のある範囲は、広大です。B-52の飛行は別任務だったとしても、手の空いている乗員は海面を見つめていたかもしれません。