ただし、今回の場合は、この点では、それほど困難ではなかったと思われます。レーダーロストした位置は、三沢基地の東約135キロメートルと発表されていますが、位置からして、当該機をモニターしていたレーダーサイトは、下北半島にある大湊基地(青森県むつ市)のレーダーサイトでしょう。大湊基地のレーダーサイトから、レーダーロストした位置までは約150キロメートル離れていますが、レーダーがある釜臥山頂上付近は約880mほどの標高がありますので、レーダーロストの際には、機体は200m以下の低高度まで降下していたものと思われます。

 なお、機体位置を発信しながら訓練していたとの報道もありますが、恐らくSIFと呼ばれるもののことだと思われますので、基本的にレーダーサイトが、レーダーと同じように観測していたと思われます。そのため、この機体位置情報では、やはり落下時の位置は不明です。

 乗員の捜索にあたっては、まず乗員が機体からベイルアウト(脱出)した位置を推定します。レーダーロストする前、「ノック・イット・オフ」等の最後のボイスが発信された位置から、レーダーロストした後もある程度飛び続けた可能性のある位置が、乗員がベイルアウトし、落下傘で降下した推定位置となります。

 このレーダーロストした後もある程度飛び続けた可能性のある位置は、レーダーロストした位置から、その時の高度と機首の角度などの情報を使って推定することになります。しかし、特に機首の角度などは正確に分かりませんし、そもそもレーダーロストした後に、機首の引き上げが行われた可能性があるため、この落下推定位置は、相当広い範囲となってしまいます。また、この機体落下推定位置は、機体の残骸等を捜索するためにも必要です。

命を奪う冷たい海水

 上記のような推定を行わなければならないとしても、まずは正確な情報が必要です。レーダーサイトやDCではレーダーの詳細な記録をとっています。事故の可能性が生じた瞬間からこれらの記録を見直し、この情報を元に、落下地点の推定作業が始まります。

 同時に、訓練していた残りの3機からも情報を収集します。ベイルアウトした可能性があるのか、「ノック・イット・オフ」等の宣言があった際、機体はどのような状態だった可能性があるのか、などです。

 この作業は、ほぼDCが行いますが、ROCでも検討され、機体とベイルアウトできていた場合の乗員の着水推定場所が決定されます。事故発生直後は、その場所を探せば良いため、救難隊はそこに急行します。また、近隣にいた海自艦艇、協力してくれる海保庁の巡視船等も急行します。

 今回、レーダーロストした高度はかなり低高度ですが、当初はベイルアウトしているかどうかが不明だったこともあり、この範囲は結構な広範囲だった可能性もあります。その範囲を、効果的な捜索と、特に捜索に当たる航空機の2次災害(空中衝突等)を勘案して、捜索にあたるユニットに分担を決めるのがROCの仕事です。

 しかも、この分担は、常に変更しなければなりません。艦艇は長時間にわたって捜索可能ですが、航空機、特にヘリは滞空時間が短いためです。

航空自衛隊の救難捜索機U-125Aと救難ヘリコプターUH-60J(資料写真、出所:航空自衛隊ホームページ